有効在庫とは?実在庫と分けて持つと欠品が減る
棚には20個ある。でも、そのうち15個はもう次の出荷で使うことが決まっている。実際に新しい注文へ回せるのは5個だけです。この5個が有効在庫です。
棚を見ただけでは、いくつ売れるか分かりません。数えられるのは実在庫のほうで、有効在庫は記録の上にしか存在しないためです。ここを分けずに1つの数字で管理すると、受けられない注文を受けてしまいます。
この記事では、有効在庫を、実在庫との違い・引当のかけ方・Excelでの持ち方・二重に引き当ててしまう事故の防ぎ方までまとめます。
この記事の内容(9項目)
有効在庫は「これから使える数」
在庫の数え方には、見ている対象が違う3つがあります。
| 呼び方 | 何の数か | 数えられるか |
|---|---|---|
| 実在庫 | いま棚にある数 | 数えられる |
| 引当済 | 出荷先が決まっている数 | 記録にしかない |
| 有効在庫 | 実在庫 − 引当済 | 記録にしかない |
ポイントはここです。注文を受けてよいかを判断するのは、実在庫ではなく有効在庫です。棚に20個あっても、有効在庫が0なら受けられません。
逆に、有効在庫が10あれば、棚に今20個しか無くても、入荷予定を含めて受けられる場合があります。会社によっては入荷予定を足した数を有効在庫と呼ぶこともあり、ここは社内で定義をそろえておきます。
在庫の数え方そのものは在庫管理の方法にまとめてあります。
言葉の使い方も社内でそろえます。引当在庫、確保在庫、予約在庫。同じものを指す言い方が複数あると、表の列名と会話がずれます。
そろえるのは3つだけで足ります。棚にある数、行き先が決まった数、残り。この3つの呼び方を決めて、表の列名もその言葉にします。
有効在庫が要るのは、棚と注文がずれるから
この考え方が要るのは、注文を受けてから出荷するまでに時間があるためです。
受注したその日に出せるなら、実在庫だけで足ります。翌週の出荷が決まっているなら、その分は棚にあっても他へ回せません。
とくに次の場合に効きます。
- まとめて受注して、日を分けて出す。全部が棚にあるが、すべて行き先が決まっている
- 取り置きがある。営業が客先に約束した分
- 生産に投入する分が決まっている。材料が確保されている
- 修理や交換用に確保している。動かしてはいけない分
どれも「棚にはあるが使えない」形です。この分を引いておかないと、同じものを二度あてにしてしまいます。
逆に、引当が要らない商売もあります。店頭でその場で渡す形なら、棚にある数がそのまま売れる数です。受注から出荷まで日数が空くかどうかが、要るか要らないかの分かれ目になります。
日数が空くほど、この数字の効き目が大きくなります。1週間先まで受注を持つなら、棚の数を見て判断するのは無理があります。
有効在庫の引当はいつかけるか
引き当てる時点を決めておかないと、人によってタイミングが変わります。
| 引き当てる時点 | 向く場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 受注したとき | 納期が確定している | キャンセルの戻しを忘れる |
| 出荷指示を出したとき | 受注から出荷まで長い | その間は他に回せてしまう |
| ピッキングしたとき | 当日出荷が多い | ほぼ実在庫と同じになる |
一般には、受注の時点でかける形が多く使われています。早くかけるほど欠品は減りますが、キャンセルや変更のときに戻す手間が増えます。
そのため、戻す手順も一緒に決めます。キャンセルが来たときに誰が引当を外すか。ここが決まっていないと、使えるはずの在庫が使えないまま残ります。
注文の残りを追う様式は納期遅延の対応と同じ表を使えます。
引き当てる単位も決めます。品番だけでよいのか、ロットや期限まで指定するのか。食品や医薬品のように期限があるものは、ロットまで引き当てないと、古いものが残ります。
期限があるものの扱いはロットと期限の管理にまとめてあります。
有効在庫をExcelでどう持つか
システムが無くても、列を分けるだけで足ります。
| 列 | 入れるもの | 更新するとき |
|---|---|---|
| 実在庫 | 棚にある数 | 入荷・出荷したとき |
| 引当済 | 行き先が決まった数 | 受注・キャンセルのとき |
| 有効在庫 | 実在庫 − 引当済(計算式) | 自動 |
| 入荷予定 | 発注済みで未入荷の数 | 発注・入荷のとき |
3列目は手で入れません。計算式にしておくと、引当を直したときに自動でそろいます。
手で入れられる形にしておくと、必ずどこかで実在庫と合わなくなります。合わなくなった表は、誰も見なくなります。
そのうえで、引当済の内訳をどこかに持ちます。合計だけだと、キャンセルが来たときにいくつ戻すか分かりません。別のシートに、受注番号と数量を1行ずつ残します。
表そのものの作り方は入出庫管理のエクセルにまとめてあります。
品番が多いときは、動きのあるものだけを表に出します。何年も動いていない品番まで並べると、見るべき行が埋もれます。
動かない在庫は別に持ちます。扱いは不動在庫を減らすにまとめてあります。
有効在庫で起きるのは二重引当
いちばん多い事故がこれです。同じ在庫を、2つの注文に割り当ててしまう形です。
起きる場面は決まっています。
- 2人が同時に見て、同時に受注した。片方の引当が入る前にもう片方が判断した
- 表がメールで回っている。手元の写しが古い
- 口頭で取り置きした。表に書かれていない
- 営業の手元にだけメモがある。倉庫からは見えない
どれも、記録が1か所にないことが原因です。表を共有の場所に1つだけ置いて、そこを見てから判断する形にします。
とはいえ、同時に開く人が多いと、それでも取り合いになります。人数が多いなら、引当を入れる担当を1人に決めるほうが確実です。
口頭の取り置きは、いちばん見つけにくい形です。取り置きも引当として表に入れる、と決めておきます。欠品と過剰在庫を防ぐでも同じところが問題になります。
取り置きには期限を付けます。期限の無い取り置きは、そのまま不動在庫になります。「2週間で自動的に外す」と決めておけば、放置されません。
有効在庫がマイナスになったとき
引当が実在庫を超えると、有効在庫はマイナスになります。
これ自体は異常ではありません。入荷予定があって、それを見越して受注している状態なら、予定どおりです。
問題なのは、入荷予定が無いのにマイナスになっている場合です。受けた注文のどれかが出せません。
| 見るところ | 分かること |
|---|---|
| 入荷予定日と、いちばん早い出荷日 | 間に合うかどうか |
| 引当の内訳 | どの注文を待たせるか |
| 戻し忘れた引当が無いか | そもそもマイナスでないかもしれない |
3つ目を先に見ます。キャンセルの戻しを忘れているだけのことが、実際にはよくあります。
本当に足りないなら、手配を急ぐか、注文を待ってもらうかの判断になります。緊急の手配は緊急手配の記録に残しておくと、次の発注点の見直しに使えます。
有効在庫と実在庫のずれを見つける
引当は記録の上の数字なので、放っておくとずれます。
ずれる原因は2つです。戻し忘れと、出荷したのに引当を落としていないこと。どちらも引当済が実際より多くなり、有効在庫が実際より少なく出ます。
少なく出るほうは、欠品にはなりません。ただ、受けられる注文を断ることになります。
そのため、月に1回は引当の内訳を見ます。出荷済みの受注番号が残っていないか。キャンセルしたものが残っていないか。
棚卸のときに合わせて見ると、手間が1回で済みます。棚卸の進め方は棚卸当日の進め方にまとめてあります。
有効在庫を誰が見られるようにするか
この数字がいちばん要るのは、注文を受ける人です。
倉庫だけが見られる状態だと、営業は電話で聞くことになります。聞いている間に別の注文が入れば、また変わります。
そのため、営業と倉庫が同じ表を見られる形にします。共有フォルダに置くだけでも、電話の回数は減ります。
見せる範囲も決めます。金額や仕入先まで入った表をそのまま共有すると、外に出したくない情報まで広がります。有効在庫の表は、品番・実在庫・引当済・有効在庫・入荷予定の5列に絞ると、共有しやすくなります。
そのうえで、更新した時刻を表の上に入れておきます。古い写しを見て判断する事故が、それだけで減ります。
更新が止まっている表は、無いほうがましなことがあります。誰も更新していない期間が1週間を超えたら、運用そのものを見直します。表を作ることより、毎日触られる形にすることのほうが難しいところです。触る理由があるかどうかで決まります。
よくある質問
- Q. 取り置きはどう扱いますか。
- 引当として表に入れます。表に無い約束は倉庫から見えません。あわせて期限を付けます。期限の無い取り置きは、そのまま動かない在庫になります。2週間で自動的に外す、といった決め方が扱いやすくなります。
- Q. ロットまで引き当てる必要がありますか。
- 期限のあるものは必要です。品番だけで引き当てると、新しいロットから出て古いものが残ります。期限が無いものなら、品番だけで足りることが多くなります。
- Q. 有効在庫と実在庫の違いは何ですか。
- 実在庫は棚にある数で、数えられます。有効在庫は、そこから行き先が決まっている分を引いた「これから使える数」で、記録の上にしかありません。注文を受けてよいかを判断するのは有効在庫のほうです。
- Q. 入荷予定は有効在庫に含めますか。
- 会社によって違います。含める定義もあり、含めない定義もあります。大事なのは社内でそろえることです。人によって違う数字を見ていると、受けられる注文を断ったり、受けられない注文を受けたりします。
- Q. 引当はいつかけますか。
- 受注の時点でかける形が多く使われています。早くかけるほど欠品は減りますが、キャンセルのときに戻す手間が増えます。戻す手順と担当を一緒に決めておきます。
- Q. 同じ在庫を2つの注文に割り当ててしまいます。
- 記録が1か所にないのが原因です。共有の場所に表を1つだけ置き、そこを見てから判断する形にします。人数が多いなら、引当を入れる担当を1人に決めるほうが確実です。
- Q. 口頭の取り置きはどう扱いますか。
- 取り置きも引当として表に入れます。表に無い約束は、倉庫からは見えません。営業の手元のメモだけにあると、同じ在庫が二重に約束されます。
- Q. 有効在庫がマイナスになりました。
- まず、戻し忘れた引当が無いかを見ます。出荷済みやキャンセル済みのものが残っているだけのことがよくあります。本当に足りないなら、入荷予定日といちばん早い出荷日を突き合わせて、間に合うかを判断します。
- Q. Excelだけで管理できますか。
- できます。実在庫・引当済・有効在庫・入荷予定の4列があれば足ります。有効在庫の列は計算式にして、手で入れられないようにします。引当済の内訳は別のシートに、受注番号と数量で1行ずつ残します。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-09-27時点のものです。