材料の使用実績を予定と比べる方法 - 差が出たときの見方
案件が終わったあとで、材料が予定より多く出ていたことに気づく。ただ、どこで多く使ったのかは分からない。材料の使用実績を案件ごとに取っていないと、差が出たことしか分かりません。
一般には、材料費の管理は原価計算の一部として扱われます。ただ現場で必要なのは会計上の数字ではなく、次の見積りと発注を変えるための材料です。この記事では、材料の使用実績を予定と比べる方法と、差が出たときに何を見るかを整理します。在庫の記録そのものは入出庫管理をエクセルで始める方法にまとめました。
この記事の内容(9項目)
- 材料の使用実績は、在庫の記録とは別に取る
- 倉庫を出た=使った、ではない
- 案件番号を軸にする
- 材料の使用実績表に持たせる項目
- 予定数量は着工前に入れておく
- 理由は差が出たときだけ書く
- 材料の使用実績に差が出る4つの原因
- いちばん多いのは戻し忘れ
- 毎回同じ方向にずれるなら、見積りを直す
- 端材と歩留まりの扱いを決める
- 再利用できる大きさの線を決める
- 戻した端材は別の品目コードにする
- 歩留まりは案件ごとではなく品目ごとに見る
- 材料の使用実績を在庫の数字と合わせる
- 案件が終わったときに1回だけ突き合わせる
- 合わない分を「使った」で処理しない
- 材料の使用実績を次の見積りに返す
- 3件たまったら見直す
- 差が小さくなったら記録を軽くしてよい
- 材料の使用実績を現場に書いてもらう
- 用紙に品目を印刷しておく
- 差の計算を現場にさせない
- 書いた結果を現場に返す
- 材料の使用実績の記録でつまずきやすい3つ
- その1:終わってから予定を書く
- その2:出庫をそのまま使用実績にする
- その3:全品目で実績を取ろうとする
- おまけ:発注の単位が実績とずれていないか
- よくある質問
材料の使用実績は、在庫の記録とは別に取る
倉庫から出た数(出庫)と、案件で実際に使った数(使用実績)は同じではありません。ここを混ぜると、どちらの数字も信用できなくなります。
| 記録するもの | 数えている場所 | 何に使うか |
|---|---|---|
| 出庫 | 倉庫を出た時点 | 在庫残高の計算 |
| 使用実績 | 案件・工程で消費した時点 | 予実の比較、次の見積り |
| 戻り | 使わずに倉庫へ返した分 | 両方の帳尻を合わせる |
倉庫を出た=使った、ではない
材料の使用実績を出庫で代用すると、現場に残っている分まで使ったことになります。その案件の原価が実際より高く見え、次の見積りが上振れします。戻りを記録するだけで、この歪みは消えます。
案件番号を軸にする
材料の使用実績は、品目ではなく案件で束ねます。案件ごとに、予定した材料の量と実際に使った量を並べる。この1枚があれば、終わった直後に差が見えます。月末の集計を待つ必要はありません。
材料の使用実績表に持たせる項目
材料の使用実績を記録するとき、必要な項目は多くありません。増やすと現場が書かなくなります。
| 項目 | 書き方 | これが無いと |
|---|---|---|
| 案件番号・案件名 | 見積りや工事番号と同じもの | 予定と突き合わせられない |
| 品目・単位 | 在庫の品目コードと揃える | 在庫側と照合できない |
| 予定数量 | 見積りや図面から拾う | 差が出せない |
| 実績数量 | 実際に使った数 | そもそも記録にならない |
| 戻り数量 | 倉庫へ返した数 | 使ったことにされる |
| 差異と理由 | 差が出たときだけ1行 | 次に活かせない |
予定数量は着工前に入れておく
終わってから予定を書くと、実績に合わせた数字になります。着工前に予定を入れて、そこから触らないのが原則です。設計変更があった場合は、変更後の予定を別の行として持ちます。
理由は差が出たときだけ書く
全行に理由を求めると、記録そのものが止まります。予定と実績が一定以上ずれた行だけに理由を書く形にすると、書く量が現実的になります。5%か10%を線にしている現場が多くあります。
材料の使用実績に差が出る4つの原因
予定より多く使ったとき、原因は次の4つのどれかに落ち着きます。分けて見ると、次に打つ手が変わります。
| 原因 | 見分け方 | 次にやること |
|---|---|---|
| 見積りが甘い | 同じ種類の案件で毎回同じ方向にずれる | 見積りの原単位を直す |
| 歩留まりが悪い | 端材が多く出ている。切り方が案件ごとに違う | 割付を決める。端材の再利用先を作る |
| やり直しが出た | 特定の案件だけ大きくずれる | 不具合として別に扱う |
| 記録漏れ・戻し忘れ | 案件終了後に現場へ材料が残っている | 戻りを記録する。案件終了時に現場を見る |
いちばん多いのは戻し忘れ
材料の使用実績の差で件数が多いのは、実は使い過ぎではなく余った材料が現場に残ったままという形です。倉庫からは出ているので使ったことになり、次の案件でまた発注されます。案件が終わったときに現場を1回見るだけで、かなり減ります。
毎回同じ方向にずれるなら、見積りを直す
特定の種類の案件で、いつも1割多く出ている。これは現場の使い方ではなく、見積りの原単位が実態と合っていない状態です。実績が3件たまったら、原単位を実績寄りに直すと、以後の差が小さくなります。
端材と歩留まりの扱いを決める
材料の使用実績で判断が分かれるのが、端材の扱いです。ここを決めておかないと、案件ごとに数字の意味が変わります。
端材も使用実績に含める
案件が使った材料の総量が分かる。歩留まりの悪さが数字に出る。
再利用しても実績は減らない。
再利用できる端材は在庫へ戻す
戻す手間と置き場所が要る。実績は実際に消費した量になる。
端材が次の案件で使える形になる。
再利用できる大きさの線を決める
すべての端材を在庫に戻すと、使えない切れ端まで棚を埋めます。この長さ以上は戻す、未満は処分という線を先に決めておくと、現場が迷いません。線は材料ごとに違って構いません。
戻した端材は別の品目コードにする
端材を新品と同じ品目コードで在庫に戻すと、次に発注するときに「在庫がある」と判断されて、必要な長さの材料が足りなくなります。端材は別コードで持つほうが安全です。
歩留まりは案件ごとではなく品目ごとに見る
案件ごとの歩留まりは条件が違いすぎて比べられません。同じ材料を使った案件を並べて、品目ごとの歩留まりを見ると、切り方や割付の差が見えてきます。
材料の使用実績を在庫の数字と合わせる
材料の使用実績と在庫の記録は、別々に取ったあとで突き合わせます。ここが合わないときは、どちらかに漏れがあります。
案件が終わったときに1回だけ突き合わせる
毎日照合する必要はありません。案件が終わった時点で、その案件ぶんだけ突き合わせると、現場に残っている材料が見つかります。ここで戻す分を倉庫に返せば、在庫も実績も同時に合います。
合わない分を「使った」で処理しない
差が合わないときに、まとめて使用実績に寄せると、その案件の原価が実態より高くなります。行方が分からない分は分からないまま残すほうが、次の判断を誤りません。3回続けて同じ品目で出るなら、そこに原因があります。
材料の使用実績を次の見積りに返す
材料の使用実績を取る目的は、記録を残すことではありません。次に同じ種類の案件を見積もるときに使えて、初めて意味があります。
| 返し方 | やり方 | 効き方 |
|---|---|---|
| 原単位を直す | 同種案件の実績3件の平均を使う | 見積りの精度が上がる |
| 発注量を直す | 実績に合わせて次回の発注数を決める | 過剰在庫が減る |
| 歩留まりの目標を置く | 品目ごとに現状値から少し上を狙う | 切り方や割付が変わる |
| 端材の在庫を先に見る | 発注前に端材の在庫を確認する | 買わずに済む案件が出る |
3件たまったら見直す
1件の実績で原単位を変えると、その案件固有の事情に振り回されます。同じ種類の案件が3件たまってから見直すと、落ち着いた数字になります。
差が小さくなったら記録を軽くしてよい
材料の使用実績を取り続けて、予定と実績の差が安定して小さくなったなら、その品目は記録を簡略にして構いません。差が出ている品目に手間を寄せるほうが、全体としては速く良くなります。
材料の使用実績を現場に書いてもらう
材料の使用実績は、現場が書かなければ集まりません。書く量と書く場所を先に整えます。
| 書きにくくなる形 | 書きやすくする形 |
|---|---|
| 案件が終わってからまとめて書く | その日の作業が終わったときに1行書く |
| 用紙が事務所にある | 案件ごとの用紙を現場に置く |
| 予定と実績を毎回計算させる | 実績だけ書いてもらい、差は事務所で出す |
| 全品目について書かせる | 主要材料5〜10品目だけ印刷しておく |
| 差が出た理由を必ず求める | 一定以上ずれた行だけに書く |
用紙に品目を印刷しておく
白紙を渡すと、品名から書くことになります。その案件で使う主要材料を印刷した用紙を渡せば、数量を書き込むだけで済みます。予定数量も一緒に印刷しておくと、大きくずれたときにその場で気づけます。
差の計算を現場にさせない
現場に求めるのは実績の数字だけにします。予定との差を出すのは事務所の作業です。計算を現場に持たせると、書く時間が増えて記録が雑になります。
書いた結果を現場に返す
実績を書いても何も返ってこないと、記録は続きません。案件が終わったときに、予定と実績の差を1枚にして現場に見せると、次から書き方が変わります。数字が良かった案件を共有すると、なお効きます。
材料の使用実績の記録でつまずきやすい3つ
その1:終わってから予定を書く
案件が終わったあとで予定数量を埋めると、実績に近い数字になります。差が出なくなるので、記録の意味が消えます。予定は着工前に入れて、あとから触らないと決めておきます。
その2:出庫をそのまま使用実績にする
倉庫を出た数を使用実績として扱うと、現場に残った分まで使ったことになります。案件の原価が実態より高くなり、次の見積りが上振れします。戻りを1行書くだけでこの歪みは消えます。
その3:全品目で実績を取ろうとする
材料の使用実績を全品目で取ると、記録の手間が現場を圧迫します。金額の大きい主要材料の5〜10品目だけから始めるほうが続きます。差が見えて役に立つと分かってから広げます。
おまけ:発注の単位が実績とずれていないか
実績では1.2箱ぶん使うのに、発注は箱単位でしかできない。この形だと、案件のたびに端数が残ります。実績が出たら、発注の単位そのものを仕入先と相談する価値があります。最低発注数を下げてもらえれば、残材はそのぶん減ります。
材料の使用実績は、予定と並べて初めて意味を持ちます。記録を増やすより、案件が終わったときに1回突き合わせる習慣のほうが効きます。
よくある質問
- Q. 材料の使用実績と、在庫の出庫記録は別に取る必要がありますか?
- 別に取るほうが正確になります。倉庫を出た数と、案件で実際に使った数は違うためです。現場に残った分や戻した分があると、出庫を使用実績として扱った時点でその案件の原価が実態より高くなります。
- Q. 端材は使用実績に含めますか?
- 運用として先に決めておけば、どちらでも構いません。再利用できる大きさの端材は別の品目コードで在庫に戻し、それ未満は使用実績に含める、という分け方が実務では扱いやすくなります。端材を新品と同じコードで戻すと、発注の判断を誤ります。
- Q. 予定と実績の差は、どのくらいから理由を書くべきですか?
- 5%か10%を線にしている現場が多くあります。全行に理由を求めると記録そのものが止まるので、線を超えた行だけに書く形にしてください。線の値より、線を決めて全員が同じ基準で書くことのほうが大事です。
- Q. 材料の使用実績は、どの品目から取り始めればいいですか?
- 金額の大きい主要材料の5〜10品目からです。全品目で始めると記録の手間が現場を圧迫し、途中で止まります。差が見えて次の見積りに返せると分かってから、対象を広げてください。
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