発注と仕入

緊急手配を記録する理由 - 追加費用の出どころを見る

公開 2026-08-30 執筆 在庫板 編集部

間に合わないので、いつもの仕入先ではなく近くの商社から定価で買った。特急便で送ってもらった。その場では正しい判断ですが、記録が残らないと、なぜ費用が増えたのかが誰にも分かりません。

緊急手配は無くせません。無くそうとすると、現場が止まります。ただ、記録が無いと「材料費が上がった」としか見えず、原因に手が打てません。この記事では、緊急手配の記録を、費用の出どころを見るための仕組みとして整理します。納期が遅れたときの動きは納期遅延への対応にまとめました。

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この記事の内容(10項目)

緊急手配を記録する目的

緊急手配の記録は、承認のためだけのものではありません。3つの目的があります。

目的何が分かるか
費用の出どころを見る材料費の増加のうち、どれだけが緊急手配によるものか
原因の傾向を見る発注の遅れなのか、納期の遅れなのか、急な変更なのか
在庫の判断に返す緊急手配が多い品目は、在庫を厚くしたほうが安い

費用は積み上がってから気づく

1件で数千円から数万円の追加費用は、その場では小さく見えます。年間で集計すると、在庫を厚くする費用を上回っていることがあります。記録が無いと、この比較ができません。

緊急手配をゼロにしない

記録を取ると、緊急手配を減らす圧力がかかります。ただ、作業が止まる損失のほうが大きい場面では、緊急手配が正しい判断です。記録の目的は止めることではありません。

判断を速くするためでもある

承認の基準が決まっていれば、緊急手配の判断はその場でできます。記録と承認の形が決まっていること自体が、現場を速くします。

緊急手配の記録に書くこと

急いでいる場面で書くものなので、項目は絞ります。あとから足せるものは、あとで構いません。

項目いつ書くか使いどころ
日付・案件その場どの案件のためだったか
品目・数量その場頻度の高い品目が分かる
手配先その場急ぎに使える先が分かる
理由その場。選択式でよい原因の傾向が見える
通常との差額あとで費用の集計に使う
承認者その場か事後手続きとして成立させる

理由は選択式にする

自由記入にすると書かれません。発注遅れ・納期遅延・急な数量変更・見込み違い・不良発生のように選択肢を作っておくと、その場で丸を付けるだけになります。

差額はあとで計算する

急いでいる場面で金額の比較はできません。手配先と単価だけ書いておいて、通常との差は事務側で計算する形にします。

1件2分で書ける形にする

緊急手配の記録は、忙しいときにしか発生しません。書くのに5分かかる様式は、まず埋まりません。2分で終わる量に抑えます。

承認の形を決めておく

緊急手配は、承認を待っていると意味がなくなります。事前と事後の線を決めておきます。

承認のしかたを分ける
少額担当の判断で手配。記録のみ
中額電話やチャットで口頭承認。事後に記録
高額事前に承認を取る
金額の線は自社の決裁規程に合わせる。緊急用に新しい規程を作らない

事後承認の範囲を決める

金額がこの範囲なら先に手配してよい、という線があると、現場が動けます。この線が無いと、承認を待つあいだに作業が止まります。

承認者が捕まらない場合を決めておく

夜間や休日に緊急手配が必要になることがあります。誰に連絡するか、連絡が付かない場合はどうするかを先に決めておきます。

既存の決裁規程に乗せる

緊急手配のために新しい規程を作る必要はありません。購買の決裁規程に「緊急時は事後承認可」の一文を足すだけで足ります。

緊急手配が起きる4つの原因

記録がたまると、原因の内訳が見えてきます。原因によって手当ての場所が変わります。

原因見分け方手を打つ場所
発注が遅れた在庫が発注点を割ってから発注までに日数がある在庫の確認頻度。発注点の設定
納期が遅れた発注は適時。入荷が回答より遅いリードタイムを実績に直す。仕入先の見直し
急な数量変更案件の途中で必要量が増えた営業や設計との情報共有
見込み違い使用量が想定より多かった使用実績を取って原単位を直す

いちばん多い原因から手を打つ

4つのうち、件数のいちばん多いものに1つだけ手を打ちます。発注遅れが多いなら、在庫を見る頻度を上げるのがいちばん効きます。

社内が原因のものと社外が原因のものを分ける

発注遅れと見込み違いは社内、納期遅延は社外です。この内訳が分かると、どちらに時間を使うかが決まります。社内の原因のほうが手を打ちやすくなります。

急な変更は情報の流れの問題

案件の途中で必要量が増えるのは、情報が調達に届くのが遅いからです。変更が決まった時点で調達へ伝わる経路を作ると、緊急手配にならずに済みます。

納期回答管理表(Excel・無料)希望した納期に対する回答と、その差が何日かを記録します。登録不要でダウンロードできます。
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費用を集計して比べる

緊急手配の記録がたまったら、年に1回集計します。ここで初めて判断ができます。

集計する切り口分かること
品目ごとの緊急手配の回数と差額在庫を厚くしたほうが安い品目
原因ごとの件数と金額どこに手を打つと効くか
月ごとの推移繁忙期に集中していないか
案件ごとの金額特定の案件に偏っていないか

在庫を厚くする費用と比べる

ある品目で年5回、1回1万円の追加費用が出ているなら、年5万円です。その品目の在庫を10個増やす費用と比べると、どちらが安いかが分かります。

繁忙期に集中しているなら、事前の手配を厚くする

特定の時期に緊急手配が集中するなら、その前に発注を厚くしておくだけで減ります。記録があると、この時期が特定できます。

1つの案件に偏っているなら、見積りを見直す

特定の案件で緊急手配が繰り返されているなら、その案件の見積りや工程に無理があります。次の同種の案件で条件を変える材料になります。

代替品の使用と一緒に見る

緊急手配と代替品の使用は、同じ場面から生まれます。並べて見ると全体が分かります。

緊急手配

本来の品目を、急いで手に入れる。
費用が増える。
仕様は変わらない

代替品の使用

別の品目で代える。
承認が要ることがある。
仕様が変わる可能性がある

どちらを選ぶかは費用と仕様で決まる

仕様を変えられないなら緊急手配、費用を抑えたいなら代替品。その場で選ぶ判断ですが、どちらも記録は残します。代替品の扱いは欠品したときの代替品対応で扱っています。

合計で見ると欠品の費用が分かる

緊急手配の費用と、代替品による差額を足すと、欠品が年間いくらの費用になっているかが見えます。この数字があると、発注点や安全在庫を見直す相談ができます。

止まった時間も記録に残せるとよい

作業が止まった時間まで書けると、判断がさらに正確になります。難しければ「止まった・止まらなかった」の2択だけでも残しておくと役に立ちます。

代替品対応表(Excel・無料)欠品したときに何で代えたか、承認は取ったかを案件ごとに残します。登録不要でダウンロードできます。
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記録を続けるための工夫

緊急手配の記録は、責められる材料に見えるため、放っておくと上がらなくなります。

止まる理由続く形
書くと責められる原因は仕組みの言葉で書く。個人名を書かない
書くのに時間がかかる理由を選択式にする。差額は事務側で計算する
承認を待つと間に合わない事後承認の範囲を決めておく
書いても何も起きない年1回、集計の結果を共有する

件数を目標にしない

緊急手配の件数を減らす目標を立てると、記録されない緊急手配が増えます。数字が良くなったように見えて、実態は見えなくなります。

集計の結果を返す

年に1回、集計した結果を関係者に共有します。「この品目の在庫を厚くしたら緊急手配が減りました」という話が返ると、記録に意味が生まれます。

緊急手配は必要な行動として扱う

止まる損失を避けるための正しい判断です。記録は責めるためではなく、次に減らすためだと伝えると、正直な記録が残ります。

急ぎで頼める先を平常時に作っておく

緊急手配の記録を取ると、急ぎのときにどこへ頼んでいるかが見えてきます。ここを平常時に整えておくと、費用が下がります。

準備すること効き方
急ぎに強い仕入先を把握する探す時間が消える
近隣の商社や小売の連絡先を持つその日のうちに手に入る先が分かる
特急便の手配方法を決めておく運送の手配で迷わない
取引の口座を先に開いておく初めての先だと支払いの手続きで止まる

口座が無いと現金購入になる

急ぎで初めての先から買おうとすると、支払いの手続きで時間を取られます。候補になる先とは、平常時に口座を開いておくと、緊急時にすぐ動けます。

仕入先の台帳に「急ぎに強い」を書いておく

どこが急ぎに対応してくれるかは、経験から分かってきます。仕入先の台帳の備考に書いておくと、担当が替わっても引き継がれます。

費用の目安も知っておく

特急便がいくらかかるかを知らないと、判断ができません。過去の緊急手配の記録から、おおよその金額を把握しておくと、その場で比較できます。

緊急手配の記録でつまずきやすい3つ

その1:理由が自由記入になっている

急いでいる場面で文章は書けません。発注遅れ・納期遅延・急な数量変更・見込み違い・不良発生の選択式にすると、その場で丸を付けるだけになります。

その2:承認を待たないと手配できない

承認を待つあいだに作業が止まると、記録より前に問題が起きます。金額で線を引いて、事後承認の範囲を決めておきます。既存の決裁規程に一文を足すだけで足ります。

その3:集計していない

記録を取るだけで見返さないと、紙が溜まるだけになります。年に1回、品目ごとと原因ごとに集計すると、在庫を厚くしたほうが安い品目が見つかります。

緊急手配の記録は、緊急手配をなくすためのものではありません。増えた費用がどこから来ているかを見えるようにして、翌年の在庫と発注の判断に返すための記録です。

よくある質問

Q. 緊急手配の記録には、何を書けばいいですか?
日付と案件、品目と数量、手配先、理由、承認者の5つをその場で書きます。理由は選択式にしてください。通常との差額は急いでいる場面では計算できないので、事務側であとから計算する形にすると、1件2分で書けます。
Q. 緊急手配のたびに承認を取るのは現実的ではありません。
金額で線を引いて、事後承認の範囲を決めておいてください。少額は担当の判断で手配して記録だけ、中額は口頭承認で事後に記録、高額は事前承認、という形です。緊急用の新しい規程は作らず、購買の決裁規程に一文を足せば足ります。
Q. 緊急手配の件数を減らす目標を立てるのはどうですか?
件数を目標にすると、記録されない緊急手配が増えます。数字は良くなったように見えて、実態は見えなくなります。件数ではなく、原因ごとの内訳を見て、いちばん多い原因に1つだけ手を打つほうが結果的に減ります。
Q. 記録した費用は、どう使えばいいですか?
年に1回、品目ごとに緊急手配の回数と差額を集計してください。ある品目で年5回、1回1万円の追加費用が出ているなら年5万円です。その品目の在庫を増やす費用と比べると、どちらが安いかが判断できます。
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本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。