ロットと使用期限の管理 - 先入先出を記録で担保する
期限のある材料を棚の手前から取っていったら、奥に期限切れが残っていた。先入先出は口で言うだけでは守られません。守られるのは、古いものが手前に来る置き方になっているか、期限の近い順に一覧が出るときだけです。
一般には、使用期限のある在庫はロット単位で管理し、先入先出で払い出すのが基本とされています。この記事では、ロットと期限の管理を受け入れから期限切れの処置まで4段階に分け、記録でどこまで担保できるかを整理します。動かなくなった在庫の扱いは不動在庫を減らす方法にまとめました。
この記事の内容(9項目)
- ロットと期限の管理は、受け入れの時点で決まる
- 1つの品目に複数のロットが並ぶ
- 期限の表示が「年月」だけのときは末日で扱う
- 入荷検品と同じ場面で記録する
- 先入先出が崩れる4つの場面
- いちばん効くのは「奥から補充する」
- 開封済みを先に使わせる
- 置き方で無理なところだけ記録で補う
- 期限の近い順に見える形にする
- 線は「使い切るのにかかる期間」で引く
- 週に1回、5分だけ見る
- 使う予定が無いものは、早めに手を打つ
- 払い出しのときにロットを記録する
- 追跡が要る品目だけロットまで記録する
- 出荷先とロットを同じ行に書く
- 棚卸でもロットごとに数える
- 期限切れが出たときの処置
- 期限切れは即廃棄とは限らない
- 隔離の場所を先に作っておく
- 件数と金額を月次で見る
- 期限切れを減らす発注の直し方
- 受入基準に「残り期限」を入れる
- 期限切れが出た品目の発注量を見直す
- 期限のある品目は在庫を厚くしない
- ロットの追跡が必要になったとき
- まず在庫を止める
- どこまで遡れるかを先に知っておく
- 記録の粒度は、追跡の要求から逆算する
- ロットと期限の管理でつまずきやすい3つ
- その1:受け入れのときに期限を記録しない
- その2:品目ごとの合計だけを持つ
- その3:先入先出を意識に頼る
- よくある質問
ロットと期限の管理は、受け入れの時点で決まる
ロットと期限の管理でいちばん取り返しがつかないのは、受け入れのときにロット番号と期限を記録しなかったことです。あとから現物を見ても分からないことがあります。
| 受け入れ時に記録すること | 書き方 | 無いと |
|---|---|---|
| ロット番号 | 現物の表示をそのまま写す | 問題が出たときに範囲を特定できない |
| 使用期限・製造日 | 年月日まで。年月だけなら末日で扱う | 期限の近い順に並べられない |
| 入荷日 | 届いた日 | 期限が同じときの先後が分からない |
| 数量 | ロットごとに分けて書く | 残りのロット構成が分からない |
| 置き場所 | ロットごとの棚番 | 古いロットを探せない |
1つの品目に複数のロットが並ぶ
ロットと期限の管理が普通の在庫管理と違うのは、同じ品目でも行が分かれることです。品目ごとに1行ではなく、品目とロットの組で1行になります。ここを分けずに合計だけ持つと、先入先出が追えません。
期限の表示が「年月」だけのときは末日で扱う
2027年3月、という表示のものは、社内では2027-03-31として扱うと決めておきます。人によって解釈が変わらないようにするためで、実際の運用ではもっと手前で使い切ります。
入荷検品と同じ場面で記録する
ロット番号と期限は、届いた荷を確認するときにしか見られません。入荷検品の作業に組み込むのが確実です。あとで倉庫に見に行くと、すでに棚の奥に入っています。
先入先出が崩れる4つの場面
ロットと期限の管理が崩れるのは、たいてい次の4つの場面です。人の意識ではなく、置き方の問題として見ます。
| 崩れる場面 | 起きること | 手当て |
|---|---|---|
| 補充を手前から入れる | 新しいものが手前に来る | 奥から補充する。棚を通路の両側から使う |
| 急いでいて取りやすい方を取る | 手の届く位置のものが減る | 使う分だけ手前に出しておく |
| 置き場所が2か所に分かれる | 片方が忘れられる | ロットの置き場所を1か所にまとめる |
| 開封済みの箱が残る | 新しい箱を開けてしまう | 開封済みに印を付けて手前に置く |
いちばん効くのは「奥から補充する」
棚の奥から入れて手前から取る形にすると、意識しなくても先入先出になります。置き方で解決できるなら、記録に頼らないほうが確実です。通路の両側から使える棚なら、補充側と取り出し側を分けます。
開封済みを先に使わせる
開封済みの箱があるのに新しい箱を開ける、というのは期限切れの大きな原因です。開封済みには色付きのテープを貼って、必ず手前に置くと決めておきます。
置き方で無理なところだけ記録で補う
形状や重さの都合で先入先出の置き方ができない品目もあります。そこだけ、期限の近い順の一覧を貼っておく形にすると、全品目に記録を求めずに済みます。
期限の近い順に見える形にする
ロットと期限の管理で使う一覧は、品目順ではなく期限順に並べます。品目順だと、どれが危ないかが分かりません。
線は「使い切るのにかかる期間」で引く
30日と90日は目安です。1箱を使い切るのに2か月かかる品目なら、90日では手遅れになります。品目ごとに、使い切るのにかかる期間の2倍あたりで線を引くと現実的です。
週に1回、5分だけ見る
期限の一覧は毎日見る必要はありません。週1回、期限が近い順の上から10行だけ見る形にすると続きます。何もなければ1分で終わります。
使う予定が無いものは、早めに手を打つ
期限が近いのに使う予定が無い、と分かった時点で選択肢があります。返品、転用、値引き、廃棄。期限が切れてからでは、廃棄しか残りません。30日前に気づけば、まだ相談できます。
払い出しのときにロットを記録する
ロットと期限の管理を追跡に使うには、出したときにどのロットを出したかを残す必要があります。ここが手間の分かれ目です。
数量だけ記録する
払い出しが速い。期限管理はできる。
問題が出たとき出荷先を特定できない。
ロット番号まで記録する
1件あたり10秒増える。どのロットをどこへ出したかが残る。
回収が要るとき範囲を絞れる。
追跡が要る品目だけロットまで記録する
すべての品目でロット番号を記録すると、払い出しの手間が増えます。問題が出たときに追跡が必要な品目だけに絞ると、現実的な運用になります。判断は業界の要求や契約によります。
出荷先とロットを同じ行に書く
追跡が必要になったとき、知りたいのは「このロットをどこへ出したか」です。出荷の記録にロット番号の欄を1つ足すだけで、この問いに答えられるようになります。
棚卸でもロットごとに数える
合計数だけを数えると、どのロットが何個残っているかが分かりません。期限のある品目は、棚卸の用紙もロットごとの行にします。行数は増えますが、期限管理と一緒に確認できます。
期限切れが出たときの処置
ロットと期限の管理を丁寧にしても、期限切れはゼロにはなりません。出たときの手順を決めておきます。
| 段階 | やること | 気をつけること |
|---|---|---|
| 1. 隔離 | 良品と別の場所へ移す。表示を貼る | 棚に戻さない。次の人が使う |
| 2. 数量の確定 | ロットごとの数を数える | 合計ではなくロット単位で |
| 3. 判断 | 使えるか、用途を変えられるか、廃棄か | 自社で判断できない場合は仕入先に確認 |
| 4. 承認 | 廃棄なら承認を取る | 金額の線を先に決めておく |
| 5. 実施と記録 | 処分して、在庫からも落とす | 承認だけで完了にしない |
期限切れは即廃棄とは限らない
使用期限の意味は品目によって違います。性能の保証が切れるだけで、用途を選べば使えるものもあります。自社で判断できないときは、仕入先やメーカーに確認します。
隔離の場所を先に作っておく
期限切れが出てから置き場所を探すと、そのあたりに置かれて、そのうち良品に紛れます。期限切れ・不良の区画を1つ作っておくと、判断が付くまで安全に置けます。
件数と金額を月次で見る
期限切れの件数が減っているかを見ると、ロットと期限の管理が効いているかが分かります。金額より件数のほうが、原因のある品目を見つけやすい数字です。
期限切れを減らす発注の直し方
期限切れが繰り返し出る品目は、管理の問題ではなく発注の量の問題です。ロットと期限の管理から、発注へ返します。
| 期限切れが出る原因 | 発注側での手当て |
|---|---|
| 1回の発注量が多すぎる | 最低発注数を仕入先と相談する。分納にしてもらう |
| まとめ買いで単価を下げた | 値引き額と、捨てる分の金額を並べて見直す |
| 使う予定が変わった | 案件が消えた時点で、材料の在庫を確認する |
| 入荷時点で期限が近い | 受入基準に「残り期限」を入れて、短いものは返す |
受入基準に「残り期限」を入れる
届いた時点で期限まで1か月しか無い、という荷が来ることがあります。残り期限が○か月以上、という基準を先に伝えておくと、この形の期限切れは入口で止まります。
期限切れが出た品目の発注量を見直す
同じ品目で2回続けて期限切れが出たら、発注の量が実際の使用量に合っていません。1回の発注量を半分にして、回数を増やせないかを仕入先と相談します。単価は上がりますが、捨てる分が減れば足が出ないことがあります。
期限のある品目は在庫を厚くしない
欠品が怖くて多めに持つと、期限切れという別の損失が出ます。期限のある品目は、安全在庫を薄めにして発注の回数を増やすほうが総額では有利になることが多くあります。
ロットの追跡が必要になったとき
不具合が出て、対象のロットがどこへ行ったかを特定する必要が生じることがあります。そのときに何が要るかを知っておくと、日々の記録の粒度が決まります。
まず在庫を止める
追跡の作業より先に、手元に残っている同じロットを止めます。調べているあいだにも出荷は続きます。止めてから調べる、という順番にしておきます。
どこまで遡れるかを先に知っておく
払い出しにロット番号を書いていなければ、出荷先までは追えません。追えないなら追えないと分かっているほうが、判断が速くなります。その場合は、期間で区切って対象を広めに取ります。
記録の粒度は、追跡の要求から逆算する
どこまで追えるようにするかは、業界の要求や契約で決まります。要求が無い品目にロット記録を課しても、手間が増えるだけです。要求のある品目だけ細かく、それ以外は数量だけ、と分けます。
ロットと期限の管理でつまずきやすい3つ
その1:受け入れのときに期限を記録しない
棚に入れてしまうと、あとからロット番号と期限を確認するのは大変です。入荷検品の作業に組み込むのが確実で、そこを外すと以降のすべてが成立しません。
その2:品目ごとの合計だけを持つ
同じ品目でも、ロットが違えば期限が違います。合計だけを持つと、どれが危ないかが分かりません。品目とロットの組で1行にするのが基本です。
その3:先入先出を意識に頼る
気をつけましょう、では守られません。奥から補充する、開封済みに印を付ける、期限順の一覧を貼る。置き方と表示で解決できる部分は、記録に頼らないほうが確実です。
ロットと期限の管理は、記録を増やすことではありません。受け入れで正しく取り、置き方で先入先出を担保し、期限順の一覧を週1回見る。この3つで大半は回ります。
よくある質問
- Q. ロットごとに行を分けると、在庫管理表の行数が増えて大変です。
- 期限のある品目だけロットで分け、それ以外は品目ごとの合計で持つ形にしてください。全品目をロット単位にすると管理が破綻します。期限のある品目は数が限られていることが多いので、そこだけ細かくするのが現実的です。
- Q. 使用期限の表示が年月だけの場合、どう扱えばいいですか?
- 社内でその月の末日として扱う、と決めておくと人によって解釈が変わりません。ただし実際の運用ではもっと手前で使い切る前提にします。表示の解釈より、期限の近い順に一覧が出る形になっているかのほうが効きます。
- Q. 先入先出を守らせるには、どうすればいいですか?
- 意識に頼らず、置き方で解決するのが確実です。棚の奥から補充して手前から取る形にすると、意識しなくても先入先出になります。形状の都合でそれができない品目だけ、期限順の一覧を貼って補います。
- Q. 期限切れが出た在庫は、すぐ廃棄すべきですか?
- まず良品と別の場所へ隔離してください。使用期限の意味は品目によって違い、用途を選べば使えるものもあります。自社で判断できない場合は仕入先やメーカーに確認し、廃棄と決まったら承認を取ってから実施し、在庫からも落とします。
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。