在庫管理の方法 - 何が・どこに・いくつあるかを合わせる4つの手順
在庫を数えても数えても合わない、探し物に時間が取られる、気づいたら同じ材料を二重に買っている。こうした状態は、担当者が雑だから起きているわけではありません。在庫管理の方法が、記録ではなく記憶に乗っているだけです。
一般には、在庫管理は「何が・どこに・どのくらいあるか」を分かる状態にすることだと説明されています。この記事では、在庫管理の方法をその3つに沿って4つの手順に分け、Excelと紙のままどこまで回せるか、どこから先はシステムの仕事になるかまでを整理します。数が合わなくなる場面ごとの対処は在庫が合わない原因にまとめました。
この記事の内容(9項目)
- 在庫管理の方法は「何が・どこに・いくつ」を合わせること
- いちばん多いのは「どこに」のずれ
- 3つを同時に完璧にしようとしない
- 在庫管理の方法を4つの手順に分ける
- 1と3は「作る」、2と4は「回す」
- 在庫管理の方法を決めるときの所要時間の目安
- 手順1:品目の名前と単位を1つに決める
- 同じ物に別の名前が付いていないか
- まとめすぎない、分けすぎない
- 手順2:在庫管理の方法の中心は「動きの記録」
- 残高だけの表は合わなくなりやすい
- 記録する場所を、物が動く場所に置く
- 相手先と担当者を必ず入れる
- 手順3:置き場所を決めて、棚番を振る
- 棚番は「通路・棚・段」の3階層で足りる
- 仮置き場を正式に作る
- 置き場所を変えたら、その日のうちに直す
- 手順4:数えて合わせる(棚卸)
- 棚卸の周期は、金額ではなく動きの速さで決める
- 差異が出たら、消さずに残す
- 一斉に止めるか、回しながら数えるか
- 在庫管理の方法をExcelで回す線と、システムに移る目安
- 移るかどうかは、件数ではなく「二重入力」で判断する
- Excelのまま精度を上げる3つ
- 在庫管理の方法でつまずきやすい3つ
- その1:全品目を一度に始めようとする
- その2:記録する人と使う人が違う
- その3:動かない在庫を数え続ける
- よくある質問
在庫管理の方法は「何が・どこに・いくつ」を合わせること
在庫管理の方法を難しくしているのは、この3つがそれぞれ別の理由でずれることです。1つずつ原因も対処も違うので、まとめて「在庫が合わない」と呼んでいるうちは手が打てません。
| 合わせるもの | ずれる原因 | 効く手 |
|---|---|---|
| 何が(品目) | 同じ物に2つの呼び名がある。型番違いを1つにまとめている | 品目コードと名前を1つに決める |
| どこに(場所) | 置き場所が人の記憶にある。仮置きが常設になっている | 棚番を振って、移したら記録する |
| いくつ(数量) | 入出庫の記録が後回しになる。伝票が回ってこない | 動いたその場で記録する形にする |
いちばん多いのは「どこに」のずれ
在庫管理の相談は数量の話から始まることが多いのですが、実際に現場で時間を食っているのは探している時間です。数が合わないのではなく、あるはずの物が見つからないので無いことにしている、という状態が先にあります。棚番を振るだけで差異が目に見えて減る現場は珍しくありません。
3つを同時に完璧にしようとしない
一般には、在庫管理を始めるときに全品目を対象にして、すべての項目を埋める台帳を作ろうとします。ただ、最初から全部を対象にすると、更新が追いつかなくなって3か月で止まります。金額か使用頻度の上位2割から始めるほうが、続きます。
在庫管理の方法を4つの手順に分ける
在庫管理の方法は、次の4つの順番で組み立てます。順番が大事で、3を飛ばして4だけやると、毎回同じ差異が出続けます。
1と3は「作る」、2と4は「回す」
この4つは性質が違います。品目と置き場所を決めるのは立ち上げの作業で、一度やれば当分は変わりません。動きの記録と棚卸は、毎日と毎月ずっと続く作業です。止まるのはいつも「回す」側です。だから最初に、記録と棚卸にかかる時間をどれだけ短くできるかを考えておきます。
在庫管理の方法を決めるときの所要時間の目安
品目300、置き場所30か所くらいの規模だと、次のような見当になります。立ち上げに丸1日かかりますが、そこを飛ばすと毎月の棚卸が丸1日になります。
| 手順 | 初回 | その後 |
|---|---|---|
| 品目を決める | 4〜6時間 | 品目が増えたときだけ |
| 動きを記録する | 様式を用意する30分 | 1件30秒 |
| 置き場所を決める | 3〜4時間 | 移したときだけ |
| 数えて合わせる | 半日 | 月1回2〜3時間、または循環棚卸で毎日15分 |
手順1:品目の名前と単位を1つに決める
在庫管理の方法で最初にやるのは、数を数えることではなく数える対象の名前を決めることです。ここが揺れていると、あとの記録がすべて合いません。
同じ物に別の名前が付いていないか
現場で「六角ボルト M8×20」「M8ボルト20」「ボルト(中)」と呼ばれている物が、実は同じ棚の同じ箱にあることがあります。発注書、納品書、現場の呼び名が違うと、記録もその数だけ分かれます。正式名称は1つ、現場の通称は別欄という形にしておくと、どちらから探しても当たります。
まとめすぎない、分けすぎない
色違いやサイズ違いを1行にまとめると、数は合っても発注のときに使えません。逆に、ロットごとに行を分けると管理が破綻します。発注の単位で1行にするのが実務的な線です。発注書に書く単位が、そのまま在庫管理表の1行になります。
| 持たせる項目 | 理由 |
|---|---|
| 品目コード | 他の様式から参照する鍵になる。名前が変わっても追える |
| 正式名称 | 発注書と合わせる。仕入先と話すときの共通語になる |
| 現場での通称 | 探すときに使う。ここが無いと現場が別台帳を作り始める |
| 単位 | 本・箱・kgのどれで数えるか。箱と本が混ざると必ずずれる |
| 発注点 | ここまで減ったら発注する数。空欄でも先に列だけ作る |
ポイントはここです。単位を決めずに数え始めると、数え直しになります。「1箱=50本」を品目ごとに書いておくだけで、棚卸のときの言い争いが消えます。
手順2:在庫管理の方法の中心は「動きの記録」
在庫管理の方法でいちばん効くのは、残高表を作ることではなく入った・出たをその場で記録することです。残高は動きから計算できますが、動きは後から思い出せません。
残高だけの表は合わなくなりやすい
現在庫の数だけを書く表は、書き換えるたびに前の数字が消えます。数が合わなかったときに、いつからずれたのかを追う手がかりが残りません。動きを1行ずつ足していく形にしておくと、差異が出たときにどの日から怪しいかが分かります。
残高だけを書き換える
更新は速い。ただし、ずれた時点をあとから特定できない。
差異が出たら全数を数え直すことになる。
動きを1行ずつ足す
1件30秒かかる。日付・数量・相手先が残る。
差異が出たらその期間の行だけを見ればよい。
記録する場所を、物が動く場所に置く
一般には、入出庫の記録は事務所のパソコンでまとめて入力する形が多く使われています。ただ、この形だと記録が半日から1日遅れます。倉庫の出口に用紙を置いて手で書き、あとでまとめて入力するほうが、結果として合います。入力の速さより、書き漏らさないことが先です。
相手先と担当者を必ず入れる
数量だけの記録は、差異が出たときに使えません。誰がどこへ出したかが残っていれば、現場に確認できます。入出庫管理簿の具体的な作り方と、Excelでの組み方は入出庫管理をエクセルで始める方法にまとめています。
手順3:置き場所を決めて、棚番を振る
在庫管理の方法の3つ目は、置き場所を決めることです。ここは省略されがちですが、探す時間と差異の両方に直接効きます。
棚番は「通路・棚・段」の3階層で足りる
A通路の3番目の棚の2段目なら「A-03-2」です。これ以上細かくすると振り直しが大変になり、これより粗いと結局探すことになります。1つの棚番に品目が5つ以内になる粒度が目安です。
仮置き場を正式に作る
どの現場にも「とりあえず置く場所」があります。これを無かったことにすると、そこにある物が全部行方不明の扱いになります。仮置き場にも棚番を振って、週に一度は空にすると決めておくほうが現実的です。
置き場所を変えたら、その日のうちに直す
棚番の効果を消すのは、模様替えです。棚を動かした、季節物を奥に移した、というときに記録を直さないと、翌月の棚卸で「帳簿にはあるが現物が無い」が大量に出ます。移動そのものは、移動元と移動先と理由だけの短い記録で足ります。
手順4:数えて合わせる(棚卸)
在庫管理の方法の最後は、実際に数えて帳簿と合わせることです。ここで初めて、それまでの3つが機能しているかが分かります。
棚卸の周期は、金額ではなく動きの速さで決める
一般には、年1回または半期に1回の一斉棚卸が基本とされています。ただ、動きの速い品目を年1回だけ数えても、差異が出たときに原因まで戻れません。よく動く品目は月1回、動かない品目は年1回と分けると、手間の割に精度が上がります。
| 品目の性格 | 数える周期 | 合わなかったときの追いやすさ |
|---|---|---|
| 毎日動く(消耗品・主要材料) | 月1回、または循環棚卸で毎週 | 1か月ぶんの記録を見ればよい |
| 月に数回動く | 四半期に1回 | 3か月ぶんを見る。原因は絞りにくい |
| ほとんど動かない | 年1回 | 数が合っていること自体が確認の目的 |
差異が出たら、消さずに残す
棚卸で差が出たとき、帳簿を実数に書き換えて終わりにすると、来月も同じ差が出ます。差異は原因を書いてから直すという順番にしておくと、3回目くらいから同じ原因が減り始めます。差異の型ごとの対処は棚卸差異の原因で扱っています。
一斉に止めるか、回しながら数えるか
全部を一度に数える一斉棚卸と、区画を分けて日々少しずつ数える循環棚卸があります。出荷を止められるかどうかで選び方が変わるので、一斉棚卸と循環棚卸の違いを先に見ておくと決めやすくなります。
在庫管理の方法をExcelで回す線と、システムに移る目安
在庫管理の方法を説明する記事の多くは、最後に在庫管理システムの導入を勧めています。実際、規模が大きくなればそのほうが速いのですが、今日から始めるならExcelと紙で十分に回ります。どこまでがExcelの範囲かを先に知っておくと、判断に迷いません。
| 状況 | Excelで回るか | 理由 |
|---|---|---|
| 品目500以下・拠点1か所・入力する人が2〜3人 | 回る | 同時に触らないので、ファイルの取り合いが起きない |
| 品目1,000前後・拠点1か所・入力する人が5人以上 | 条件つき | 共有フォルダの排他で待ちが出る。入力を1人に寄せれば回る |
| 拠点が2か所以上。ロットや期限で追う必要がある | 厳しい | 同じファイルを別々に更新して、どちらが正か分からなくなる |
| 出荷が1日100件を超える | 厳しい | 手入力の時間より、入力待ちのあいだの在庫のずれが問題になる |
移るかどうかは、件数ではなく「二重入力」で判断する
ポイントはここです。同じ数字を2か所以上に手で入れているなら、そこが移りどきです。販売管理と在庫表、現場のホワイトボードと事務所のExcel、というように写す作業が発生していると、件数が少なくてもずれます。逆に、入力が1か所で済んでいるなら、品目が増えてもExcelで持ちこたえます。
Excelのまま精度を上げる3つ
- 入力用と集計用のシートを分ける。同じシートで計算と入力をすると、数式が壊れます
- 入力規則で単位と品目コードを選択式にする。手打ちの表記ゆれが最大の差異要因です
- 締めた月のシートは別ファイルに移す。行が増えるほど開くのが遅くなり、更新が後回しになります
在庫管理の方法でつまずきやすい3つ
その1:全品目を一度に始めようとする
在庫管理の方法を導入するとき、全品目の棚卸から入ると、たいてい途中で力尽きます。金額の上位2割、または毎日触る品目だけで始めて、回り始めてから広げるほうが定着します。残りの8割は年1回の一斉棚卸で足りることが多くあります。
その2:記録する人と使う人が違う
現場が書いた紙を事務所が入力し、その結果を現場が見ない、という形は続きません。書いた人にとって返ってくるものが無いからです。発注点を割った品目が一覧に出るなど、記録した人が使える出口を1つ作ると、記録の質が変わります。
その3:動かない在庫を数え続ける
何年も動いていない在庫を毎回数えるのは、時間の使いどころとして重くなります。動かない在庫はまず抽出して、処分するか場所を移すかを決めてしまうほうが、翌月からの棚卸が軽くなります。判断の手順は不動在庫を減らす方法にまとめました。
この3つは、どれも「やり方が悪い」のではなく対象を絞っていないことから起きます。在庫管理の方法を決めるときは、何を管理しないかも一緒に決めておくと軽くなります。
よくある質問
- Q. 在庫管理の方法は、まず何から始めればいいですか?
- 品目の名前と単位を決めるところからです。数を数えるのは3番目で構いません。名前と単位が揃っていないと、数えても記録と突き合わせられないためです。金額か使用頻度の上位2割だけを対象にすると、1日で立ち上がります。
- Q. 在庫管理表と入出庫管理簿は、両方必要ですか?
- 役割が違います。在庫管理表はいま何個あるか(現在残高)を見るもの、入出庫管理簿はいつ何個動いたか(履歴)を残すものです。差異が出たときに原因まで戻れるのは履歴のほうなので、どちらか1つなら入出庫管理簿から始めると後で困りません。
- Q. 棚卸はどのくらいの頻度でやるべきですか?
- 法令で頻度が決まっているわけではありません(決算に必要な実地棚卸は別です)。実務では、よく動く品目を月1回、動かない品目を年1回に分けている現場が多くあります。全品目を同じ頻度にすると、手間の割に精度が上がりません。
- Q. Excelでの在庫管理には限界がありますか?
- 拠点が複数ある、同時に何人も入力する、ロットや使用期限で追う必要がある、という条件が重なると難しくなります。判断の目安は件数よりも同じ数字を2か所に手入力しているかどうかです。写す作業が発生していないうちは、Excelで十分に回ります。
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。