入替と処分

不動在庫を減らす方法 - 動かない在庫を見つけて処分するまで

公開 2026-08-30 執筆 在庫板 編集部

倉庫の奥に、何年も動いていない在庫がある。処分したほうがいいのは分かっているが、誰も「捨てる」と言い出せない。不動在庫が減らないのは、判断が悪いからではなく、判断する手続きが決まっていないからです。

一般には、不動在庫の対策として、通常在庫と分けて1か所に集約する、返品交渉や用途転用や値引き販売を検討する、といった方法が挙げられています。この記事では、不動在庫を減らす方法を、抽出から処分までの5段階に分けて、それぞれ誰が何を決めるかまで整理します。在庫管理そのものの立て方は在庫管理の方法にまとめました。

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この記事の内容(9項目)

不動在庫を減らす方法は5段階に分かれる

不動在庫を減らす方法でつまずくのは、たいてい3段目です。抽出まではできても、期限を切らないので永久に「検討中」のまま残ります。

段階やること決める人
1. 抽出一定期間動いていない品目を出す在庫の担当
2. 仕分け使える・売れる・使えない に分ける使う部署と在庫の担当
3. 期限を切るいつまでに動かなければ処分するかを決める使う部署
4. 承認処分してよいという判断を取る金額に応じた決裁者
5. 処分実際に出す。記録を残す在庫の担当

「検討中」を作らない

不動在庫を減らす方法で最大の敵は、結論を出さないことです。3段目で必ず日付を入れると決めておくと、判断が先送りされません。日付が来たら自動的に処分の対象になる、という形にしておきます。

抽出は自動、判断は人

どれが不動在庫かを人が思い出すのは無理です。最終出庫日から機械的に抽出して、判断だけを人がする形にすると、毎月続けられます。抽出に議論を入れると、そこで止まります。

段階1:不動在庫を抽出する線を決める

不動在庫を減らす方法の入り口は、何をもって「動いていない」とするかを決めることです。ここが決まっていないと、毎回議論から始まります。

期間は品目の性格で変える

品目の性格動いていないとみなす期間理由
消耗品・汎用材料3か月使うなら必ず動く。動かないのは要らない
製品・仕掛品6か月季節変動を1周見る
補修部品・スペア1〜2年持っていること自体が目的。別の基準で見る
受注生産の残材案件終了から3か月案件が終われば使い道が無くなる

金額の下限を決めておく

すべての不動在庫を対象にすると、単価の低い小物が大量に並んで手が回りません。1品目あたりの在庫金額に下限を設けて、それ未満はまとめて処分の対象にするほうが実務的です。判断の手間が金額を上回るものは、判断しないほうが得です。

抽出は月に1回でよい

不動在庫を減らす方法として、毎日見る必要はありません。月末に最終出庫日から抽出して、前月から増えた品目だけを見る形にすると、10分で終わります。増えた品目に注目するのがコツです。新しく不動化したものには、まだ手を打てる余地があります。

段階2:使える・売れる・使えない に仕分ける

抽出した品目を、次の3つに分けます。この仕分けをせずに一律で処分すると、使えたはずの物まで捨てることになります。

仕分けあてはまるもの次にやること
使える別の案件や別の現場で使える。規格が汎用使う先を指名して移す。期限を切る
売れる仕入先が引き取る。同業に回せる。値引きで出せる返品交渉か販売。応じてもらえる期限を確認
使えない規格が特殊。劣化している。期限が切れた廃棄の申請へ回す

仕分けは、使う部署に見せてから決める

在庫の担当だけで「使えない」と決めると、あとから「あれを捨てたのか」と言われます。抽出した一覧を使う部署に回して、要るものに印を付けてもらう形にすると、判断が共有されます。印が付かなければ、そこで合意ができたことになります。

返品交渉は早いほど通る

仕入先への返品は、入荷から時間が経つほど断られます。不動在庫を減らす方法として返品を使うなら、3か月の抽出の段階で当たるのが現実的です。1年経ってからでは、たいてい引き取ってもらえません。

補修部品は別の物差しで見る

生産が終わった製品の補修部品は、動かないことが正常です。不動在庫としてまとめて処分すると、あとで供給できなくなります。供給期限まで持つと決めた品目は、抽出の対象から外すか、別区分にしておきます。持ち方は補修部品の在庫の持ち方で扱っています。

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段階3:期限を切る

不動在庫を減らす方法で、いちばん効くのがこの段階です。「使える」に分類した品目にこそ、期限を入れます。使えると言われたまま2年動かない、というのがいちばんよくある形です。

期限を切らないと起きること
抽出動いていない品目が並ぶ
使えると言われるそのうち使う
翌月も抽出される同じ品目が並ぶ
見なくなる一覧が形骸化する
毎月同じ顔ぶれが並ぶ一覧は、3回目から誰も見なくなる

期限は3か月か6か月で置く

長く取ると忘れます。「使える」に印を付けた人が、いつまでに使うかを書く形にします。日付が来ても動いていなければ、自動的に処分の候補に戻ります。ここに議論を挟まないことが大事です。

置き場所も一緒に移す

不動在庫を通常の在庫と同じ棚に置いたままだと、棚卸のたびに数えることになります。不動在庫の区画を作って物理的に移すと、日常の棚卸から外れて手間が減り、量も目で見えます。

棚を空けることが目的だと共有する

不動在庫を減らす方法を「金額を落とす活動」として説明すると、話が経理の都合に聞こえます。探す時間が減る、棚が空く、棚卸が早く終わるという現場の得を先に置くほうが、協力が得られます。

段階4・5:承認を取って処分する

処分の判断には金額が絡むので、誰が承認するかを先に決めておきます。ここが曖昧だと、担当者が動けません。

残す項目書き方
品目・数量・在庫金額抽出の一覧からそのまま持ってくる
最終出庫日何か月動いていないかが分かる
処分の方法廃棄・返品・値引き販売・転用 のどれか
処分する理由規格が変わった、期限切れ、案件終了 など
申請日・承認日・承認者あとから経緯を説明できる形にする
実施日・実施者処分が本当に済んだかを確認する欄

承認の基準を金額で決めておく

1件いくらまでは担当者、いくらまでは課長、それ以上は役員。この線を先に引いておくと、申請から承認までが1日で回ります。都度相談する形にすると、そこで数週間止まります。

実施の欄まで埋めて閉じる

承認が下りた時点で完了にすると、実際には倉庫に残ったままということが起きます。実施日を書いて初めて閉じる形にしておくと、処分したつもりが残らずに済みます。処分したら、在庫の記録からも落とします。

決算前にまとめて出さない

期末に不動在庫の処分をまとめて行うと、金額が大きくなって説明が要ります。月次で少しずつ処分しておくほうが、決算のときに慌てません。期末の在庫の締め方は期末在庫の締め方で扱っています。

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処分の方法を4つから選ぶ

不動在庫を減らす方法として、処分の出口は4つあります。廃棄は最後の手で、その前に3つの選択肢を見ます。

方法向いている場面時間の制約
仕入先へ返品未開封。規格が汎用。取引が続いている入荷から3か月以内。遅いほど通らない
社内で転用別の案件や別の現場で使える規格転用先を指名して期限を切る
値引きで販売製品や商品。同業に回せるもの期限を決めて、下げ幅も先に決める
廃棄劣化・期限切れ・規格が特殊承認を取ってから実施

返品は早いほど通る

仕入先への返品は、入荷から時間が経つほど断られます。3か月の抽出で出たものは、その時点で一度当たってみるのが現実的です。応じてもらえない場合でも、次から最低発注数を下げてもらう交渉の入り口になります。

転用は「誰が使うか」を名前で決める

「そのうちどこかで使える」は転用ではありません。使う部署と、いつまでに使うかを書いて初めて転用になります。名前が入らないものは、使えないほうに分けます。

値引き販売は下げ幅を先に決める

いくらまで下げるかを毎回相談していると、話が進みません。1か月で1割、3か月で3割、6か月で処分のように段階を先に決めておくと、判断が要らなくなります。換金の見込みがないものは、期間を区切って段階的に減らしていく形が実務でよく採られています。

不動在庫を増やさない側の手当て

不動在庫を減らす方法を回しても、入ってくる側が変わらなければ、翌年また同じ量が積み上がります。増やさない手当ても一緒にします。

不動在庫が生まれる場面入り口での手当て
まとめ買いで単価を下げた単価の差と、動かなかったときの損を並べて判断する
欠品が怖くて多めに発注した発注点を決めて、勘での上乗せをやめる
案件用に買った材料が余った案件終了時に残材を棚卸して、転用先を決める
規格変更で旧品が残った変更が決まった時点で、旧品の在庫数を確認する
試作・サンプルが残った試作の残りに期限を付けて、区画を分けておく

まとめ買いの得を、在庫の損と並べて見る

10箱買えば単価が下がる、という提案は魅力的に見えます。ただ、そのうち3箱が2年動かなければ、値引きぶんは消えます。下がる金額と、動かなかったときに捨てる金額を同じ紙に並べるだけで、判断が変わります。

発注点を決めると、勘の上乗せが減る

不動在庫の入り口として大きいのは、欠品を恐れた多めの発注です。ここまで減ったら発注する、という数を決めておくと、勘での上乗せが減ります。決め方は欠品と過剰在庫を防ぐ方法にまとめています。

不動在庫を減らす取り組みでつまずきやすい3つ

その1:抽出して終わりになる

一覧を作るところまでは進むのに、そこから動かない。原因は、次にやることと期限が書かれていないことです。抽出した品目には必ず、誰が・いつまでに・どうするかを1行書くと決めます。書けないものは、その場で処分の候補にします。

その2:処分の承認者が決まっていない

誰に聞けばよいか分からないと、担当者は動きません。金額で承認者を決めておくだけで、申請から処分まで数日で回ります。決めるのは金額の線1本です。

その3:捨てたことを責める

処分の場で「なぜこんなに買ったのか」を問うと、次から誰も処分を申請しなくなります。処分は正しい行動として扱い、買い方の見直しは別の場で行うと分けておくほうが、両方うまくいきます。

不動在庫を減らす方法は、抽出と期限の2つがあれば動き始めます。難しいのは判断ではなく、判断を先送りしない形を作るところです。

よくある質問

Q. 何か月動かなければ不動在庫と判断すればいいですか?
法令上の基準はありません。実務では、消耗品や汎用材料は3か月、製品や仕掛品は6か月、補修部品は1〜2年、というように品目の性格で変えている現場が多くあります。大事なのは期間の長さより、線を決めて機械的に抽出することです。
Q. 不動在庫と滞留在庫は違うものですか?
一般には、滞留在庫は一定期間動いていない在庫、不動在庫は使う見込みがほぼ無くなった在庫を指し、不動在庫のほうが深刻な状態として使い分けられます。実務では、抽出の段階では区別せず、仕分けの段階で「使える・売れる・使えない」に分けるほうが動きやすくなります。
Q. 不動在庫は捨てるしかないのですか?
選択肢は4つあります。仕入先への返品、別の用途への転用、値引き販売、廃棄です。返品は時間が経つほど通らなくなるので、動きを止めてから3か月ほどの早い段階で当たるほうが可能性が残ります。
Q. 処分すると決めたのに、なかなか実行されません。
承認と実施を1つの欄で管理していないことが多い原因です。承認日だけでなく実施日を書く欄を作り、実施日が埋まって初めて閉じる形にしてください。承認者を金額で先に決めておくと、申請から処分まで数日で回ります。
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