欠品と過剰在庫を防ぐ方法 - 発注点と注文残の両方で見る
欠品して現場を止めた翌月は、みんな多めに発注します。そして半年後、倉庫が埋まって置き場所が無くなる。欠品と過剰在庫は別々の問題に見えて、同じ1つの原因から出ています。いま手元にいくつあり、あといくつ届く予定なのかが見えていない、ということです。
一般には、欠品と過剰在庫を防ぐには適正在庫を定め、発注点管理を行うのがよいとされています。発注点は「平均使用量×リードタイム+安全在庫」で求めるのが基本形です。この記事では、その計算に加えて、実務で二重発注を生む注文残の扱いまで含めて整理します。在庫管理そのものの立て方は在庫管理の方法にまとめました。
この記事の内容(9項目)
- 欠品と過剰在庫を防ぐには、2つの数字を同時に見る
- 二重発注は「注文残が見えない」から起きる
- 分納があると、さらに見えなくなる
- 発注点の決め方
- 基本の形
- リードタイムは回答ではなく実績を使う
- 安全在庫は「切れたときの痛み」で決める
- 発注点を決める品目を絞る
- 止まると困る品目から始める
- 単価の安い汎用品は目視でよい
- 季節で動く品目は、期間を区切って見直す
- 注文残を見える形にする
- 完納した行を残さない
- 発注する前に、必ず注文残を見る
- 欠品が起きたときに、次につなげる
- 欠品の原因を3つに分ける
- 発注点を上げる前に、原因を見る
- 欠品したときの手当ても決めておく
- 在庫の持ちすぎを数字で確かめる
- 在庫日数はリードタイムと並べて見る
- 欠品ゼロを目標にしない
- 月に1回、10分だけ見る
- 過剰在庫を増やさない発注の作法
- まとめ買いの得と、動かなかったときの損を並べる
- 仕入先ごとの条件を1か所にまとめる
- 勘の上乗せをやめる
- 欠品と過剰在庫の対策でつまずきやすい3つ
- その1:全品目に発注点を設定しようとする
- その2:手持在庫だけを見て発注する
- その3:欠品のたびに発注点を上げる
- よくある質問
欠品と過剰在庫を防ぐには、2つの数字を同時に見る
発注の判断に必要な数字は2つです。片方だけを見ていると、どちらかの失敗が必ず起きます。
| 見る数字 | 中身 | これが無いと |
|---|---|---|
| 手持在庫 | いま倉庫に現物としてある数 | そもそも発注の判断ができない |
| 注文残 | 発注済みで、まだ届いていない数 | 届く予定を忘れて二重に発注する |
この2つを足したものが、いま会社が確保している数です。発注の判断は手持在庫ではなく、この合計で行います。
二重発注は「注文残が見えない」から起きる
欠品と過剰在庫を防ぐ方法として発注点を決めても、注文残が見えていなければ効きません。在庫が減ってきたので発注し、翌週まだ届いていないのでもう一度発注する。過剰在庫のかなりの部分は、この形で生まれます。
分納があると、さらに見えなくなる
100個の注文が30個ずつ分けて納品される場合、いま何個残っているのかは注文書を見ても分かりません。発注数・累計納品数・残数を1行で持つ形にしておくと、この見えなさが消えます。
発注点の決め方
欠品と過剰在庫を防ぐ方法の中心は、発注点です。ここまで減ったら発注する、という数を品目ごとに決めておきます。
基本の形
発注点は、一般に次の形で置かれます。難しい式ではありません。
| 要素 | 意味 | 調べ方 |
|---|---|---|
| 1日あたりの使用量 | ふだんどれだけ減るか | 直近3か月の出庫合計 ÷ 稼働日数 |
| リードタイム | 発注してから届くまでの日数 | 過去の発注日と入荷日の差。仕入先の回答ではなく実績 |
| 安全在庫 | 使用量や納期がぶれたときの余裕分 | 使用量の変動が大きい品目ほど厚くする |
発注点 = 1日あたりの使用量 × リードタイム + 安全在庫。リードタイム中に切れない数、という考え方です。
リードタイムは回答ではなく実績を使う
ポイントはここです。仕入先が言う納期ではなく、実際に届くまでの日数を使います。回答は5日でも実績が9日なら、5日で計算した発注点では欠品します。回答と実績の差を記録しておくと、この数字が出せます。差の扱い方は納期遅れへの対応にまとめています。
安全在庫は「切れたときの痛み」で決める
計算式で厳密に出すこともできますが、実務では切れたときに何が止まるかで厚みを決めるほうが納得が得られます。ラインが止まる部品は厚く、代替の効く汎用品は薄く。全品目を同じ考え方にする必要はありません。
発注点を決める品目を絞る
全品目に発注点を設定しようとすると、そこで力尽きます。欠品と過剰在庫を防ぐ方法として効率がいいのは、絞ることです。
止まると困る品目から始める
欠品の影響が大きい品目は数が限られています。まずそこだけに発注点を置くと、いちばん痛い失敗が減ります。20品目もあれば、日々の発注の判断は目に見えて楽になります。
単価の安い汎用品は目視でよい
ボルトやテープのような品目に発注点を計算しても、管理の手間が上回ります。2箱切ったら発注、という現物のルールで十分です。決めるべきは数式ではなく、判断を迷わないことです。
季節で動く品目は、期間を区切って見直す
年間の平均で発注点を出すと、繁忙期に欠品し、閑散期に余ります。季節性のある品目は、3か月ごとに使用量を見直すか、繁忙期用の発注点を別に持たせます。
注文残を見える形にする
発注点を決めても、注文残が見えなければ二重発注は止まりません。欠品と過剰在庫を防ぐ方法として、ここは発注点と同じくらい効きます。
| 持たせる項目 | なぜ要るか |
|---|---|
| 注文番号・発注日 | 問い合わせるときの鍵になる |
| 品目・発注数 | 何をいくつ頼んだか |
| 希望納期 | いつ要るかの基準 |
| 累計納品数 | 分納の合計。入荷のたびに足す |
| 残数 | 発注数から累計を引いた数。ここが注文残 |
| 状態 | 未納・一部納品・完納。完納は一覧から落とす |
完納した行を残さない
注文残の一覧に完納した行が残っていると、見る気が失せます。残数がゼロになった行は別のシートへ移すか、非表示にします。一覧に並ぶのは未納のものだけ、という状態を保ちます。
発注書のファイルだけで管理する
発注した記録は残る。いくつ届いたかは納品書側にある。
分納があると残数が誰にも分からない。
注文残の一覧を持つ
入荷のたびに累計を足す手間がある。残数が常に見える。
発注前に「もう頼んである」が確認できる。
発注する前に、必ず注文残を見る
運用としては、これだけです。発注しようとしたとき、その品目の注文残がゼロかどうかを見る。ゼロでなければ、まず納期を確認する。この1手順で、二重発注はほとんど消えます。
欠品が起きたときに、次につなげる
欠品と過剰在庫を防ぐ方法を回していても、欠品はゼロにはなりません。起きたときにどう扱うかで、次の欠品の数が変わります。
欠品の原因を3つに分ける
| 原因 | 見分け方 | 次に打つ手 |
|---|---|---|
| 発注が遅れた | 発注点を割ってから発注までに日数がある | 在庫の確認頻度を上げる。発注点を上げる |
| 納期が遅れた | 発注は適時。入荷が回答より遅い | リードタイムを実績に直す。仕入先を見直す |
| 使用量が急に増えた | 出庫が平常時の倍以上 | 安全在庫を厚くする。事前連絡の仕組みを作る |
発注点を上げる前に、原因を見る
欠品が起きるたびに発注点を上げると、在庫はどんどん増えます。原因が納期の遅れなら、発注点ではなくリードタイムの数字を直すのが筋です。ここを混ぜると、過剰在庫のほうへ振れます。
欠品したときの手当ても決めておく
欠品してから代わりの品を探すと、承認を取らずに使ってしまうことがあります。代替品を使うときの承認のしかたを先に決めておくと、慌てずに済みます。手順は欠品したときの代替品対応で扱っています。
在庫の持ちすぎを数字で確かめる
欠品と過剰在庫を防ぐ方法を回し始めたら、効いているかどうかを見ます。感覚で「減った気がする」では、次の判断ができません。
| 見る数字 | 出し方 | 読み方 |
|---|---|---|
| 在庫日数 | 手持在庫 ÷ 1日あたりの使用量 | 何日ぶん持っているか。リードタイムの2〜3倍が目安 |
| 欠品の件数 | 月に何品目が発注点を割って切れたか | ゼロを目指さない。減っているかを見る |
| 3か月動いていない品目数 | 最終出庫日から抽出 | 増えていれば、発注が多すぎる |
| 注文残の件数 | 未納の行の数 | 増え続けるなら、納期側に問題がある |
在庫日数はリードタイムと並べて見る
在庫が30日ぶんあるのが多いか少ないかは、単独では決まりません。リードタイムが3日の品目で30日ぶんは持ちすぎ、リードタイムが20日の品目なら妥当です。品目ごとに、リードタイムの2〜3倍を1つの目安にすると判断しやすくなります。
欠品ゼロを目標にしない
欠品をゼロにしようとすると、在庫は際限なく増えます。欠品と過剰在庫を防ぐ方法の目的は、どちらかをゼロにすることではなく、両方の痛みを合わせて小さくすることです。止まると困る品目だけ欠品ゼロを狙い、それ以外は多少切れても構わない、と線を引きます。
月に1回、10分だけ見る
この4つの数字を毎日見る必要はありません。月末に10分で確認して、増えている数字があればその品目だけを見ます。数字を見る時間より、発注のときに注文残を見る1手順のほうが効きます。
過剰在庫を増やさない発注の作法
欠品と過剰在庫を防ぐ方法のうち、過剰側は発注のときの小さな判断の積み重ねで決まります。
まとめ買いの得と、動かなかったときの損を並べる
10箱買えば単価が下がる、という話は魅力的です。ただ、そのうち3箱が2年動かなければ、値引きぶんは消えます。下がる金額と、捨てることになったときの金額を同じ紙に並べるだけで、判断が変わります。
仕入先ごとの条件を1か所にまとめる
最低発注数、ロット単位、支払条件、リードタイム。これらが担当者の記憶にあると、その人が休んだ日に発注が止まるか、条件を外した発注が出ます。仕入先ごとに1行の台帳にしておくと、誰でも同じ判断ができます。
勘の上乗せをやめる
「念のため多めに」は、いちばん多い過剰在庫の入り口です。多めにする理由が本当にあるなら、それは安全在庫として発注点に組み込むべき数字です。その場の上乗せではなく、発注点そのものを直します。積み上がってしまった在庫の減らし方は不動在庫を減らす方法にまとめました。
欠品と過剰在庫の対策でつまずきやすい3つ
その1:全品目に発注点を設定しようとする
数百品目ぶんの使用量とリードタイムを調べているうちに、日常業務に押し流されます。止まると困る品目を20だけ選ぶところから始めると、その日のうちに効果が出ます。残りは目視のルールで足ります。
その2:手持在庫だけを見て発注する
注文残を見ずに発注すると、届く予定のものをもう一度頼むことになります。発注の直前に注文残を見るという1手順だけで、過剰在庫のかなりの部分が減ります。
その3:欠品のたびに発注点を上げる
欠品の原因が納期の遅れなのに発注点を上げると、在庫だけが増えて欠品は減りません。原因を3つに分けてから手を打つと、上げるべきものと直すべきものが分かれます。
欠品と過剰在庫を防ぐ方法は、難しい計算より、発注のときに見る数字を1つ増やすことのほうが効きます。手持在庫に注文残を足して見る。まずここからです。
よくある質問
- Q. 発注点はどうやって計算しますか?
- 一般には「1日あたりの使用量 × リードタイム + 安全在庫」で求めます。リードタイム中に在庫が切れない数、という考え方です。1日あたりの使用量は直近3か月の出庫合計を稼働日数で割ると出ます。
- Q. リードタイムは仕入先の回答をそのまま使ってよいですか?
- 実績を使うほうが安全です。回答が5日でも実際に届くのが9日なら、5日で計算した発注点では欠品します。過去の発注日と入荷日の差を数回ぶん見て、長いほうに寄せて設定してください。
- Q. 注文残の管理は、発注書のファイルでは足りませんか?
- 分納が無ければ足ります。分けて納品される注文があると、発注書だけでは残数が分かりません。発注数・累計納品数・残数を1行で持つ形にしておくと、発注する前に「もう頼んである」が確認できます。
- Q. 安全在庫はどのくらい持てばいいですか?
- 計算式で出す方法もありますが、実務では「切れたときに何が止まるか」で厚みを変えるほうが納得が得られます。ラインが止まる部品や代替の効かない品目は厚く、汎用品は薄く。全品目を同じ考え方にする必要はありません。
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