期末在庫の締め方 - 決算に出す数字を確定させる手順
期末の在庫の数字は、月次の棚卸とは求められるものが違います。ある一時点の在庫を、区分ごとに、金額まで含めて確定させる必要があります。しかも、あとから第三者に説明できる形で残さなければなりません。
一般には、決算にあたっては実地棚卸を行い、棚卸資産の数量と評価額を確定させるとされています。この記事では、期末在庫の締め方を現場側の手順として5段階に分け、判断が分かれやすい未着品や預り品の扱いまで整理します。なお、税務や会計上の取り扱いは自社の顧問税理士にご確認ください。棚卸そのものの進め方は棚卸当日の進め方にまとめました。
この記事の内容(9項目)
- 期末在庫の締め方は5段階で進む
- 現場が担うのは1から3まで
- 締め時点を口頭で決めない
- 締め時点を決めて、動きを止める
- 未入力の伝票をゼロにする
- 締め後の入荷は「翌期」として分ける
- 棚卸中の移動を止める
- 判断が分かれる在庫の扱いを決める
- 倉庫の外にある在庫を忘れない
- 預り品は数えるが、自社の在庫には入れない
- 判断に迷うものは経理と税理士に確認する
- 区分ごとに並べて明細を作る
- 数量は実地の数を使う
- 保管場所を持たせておく
- 評価減は現場の情報が要る
- 評価減の候補を現場から出す
- 期末に慌てて出さない
- 処分と評価減は別の話
- 判断の根拠を残す
- 説明できる形で残す
- 手書きの用紙を捨てない
- 差異と調整の内訳を残す
- 翌期のために手順を1枚残す
- 期末までの逆算スケジュール
- 1か月前に決めるのは「時点」と「場所」
- 2週間前に会計の判断をもらう
- 1週間前の棚の整理がいちばん効く
- 期末在庫の締めでつまずきやすい3つ
- その1:締め時点が人によって違う
- その2:倉庫の外にある在庫を数えていない
- その3:評価減の候補を期末に出す
- よくある質問
期末在庫の締め方は5段階で進む
期末在庫の締め方は、月次の棚卸に「区分」と「評価」と「説明できる形」が足されたものです。
| 段階 | やること | 誰が |
|---|---|---|
| 1. 締め時点を決める | 何月何日の何時時点かを決めて掲示する | 在庫の担当と経理 |
| 2. 数える | 実地棚卸。数えない区画も先に決める | 現場 |
| 3. 区分に分ける | 原材料・仕掛品・製品・貯蔵品などに分ける | 在庫の担当 |
| 4. 評価する | 単価を決めて金額を出す。評価減を検討する | 経理 |
| 5. 説明できる形で残す | 数えた記録と明細を保存する | 両方 |
現場が担うのは1から3まで
期末在庫の締め方で現場が持つのは、時点を決めて、数えて、区分に分けるところまでです。評価の方法は会計の話なので、経理と分担を先に決めておきます。ここが曖昧だと、両方が相手の作業だと思って進みません。
締め時点を口頭で決めない
「期末の在庫」と言うだけでは、どの瞬間かが人によって違います。日付と時刻を書いて掲示するところから始めます。これが無いと、あとで数字の根拠を説明できません。
締め時点を決めて、動きを止める
期末在庫の締め方でいちばん大事なのが、時点を1つに固定することです。ここが揺れると、以降のすべてがずれます。
| 止めること | 具体的にやること |
|---|---|
| 入力を止める | 締め時刻までの伝票をすべて入力し終える |
| 入荷を分ける | 締め後に届いた荷は別区画へ。数えない |
| 出荷を分ける | 締め前に出た荷は倉庫から出す。残っているなら別区画 |
| 移動を止める | 棚卸中の棚移動を禁止する |
未入力の伝票をゼロにする
机の上に伝票が残ったまま数えると、正しく数えても差が出ます。締め時刻の前に、未入力をゼロにする時間を確保します。ここに半日かかることもありますが、あとの手戻りより短く済みます。
締め後の入荷は「翌期」として分ける
締め時刻を過ぎてから届いた荷を混ぜて数えると、数字が合いません。物理的に区画を分けて、数えない場所として貼り紙をするのが確実です。
棚卸中の移動を止める
数え終わった棚から品物を移すと、二重に数えるか数え漏れるかのどちらかになります。当日は移動を止め、どうしても必要なときは別紙に記録します。
判断が分かれる在庫の扱いを決める
期末在庫の締め方で毎年もめるのが、自社の在庫かどうかの線引きです。先に決めておくと当日が速くなります。
| 在庫の種類 | 倉庫にあるか | 一般的な扱い |
|---|---|---|
| 未着品(発注済みで未入荷) | 無い | 所有権の移転時期による。契約条件を確認する |
| 預け在庫(他社の倉庫にある自社の物) | 無い | 自社の在庫として数える。先方に残高を確認する |
| 預り品(他社の物を預かっている) | ある | 自社の在庫には含めない。別に数える |
| 支給材(客先から支給された材料) | ある | 有償か無償かで扱いが変わる。契約を確認する |
| 現場へ持ち出した資材 | 無い | 使い切っていなければ自社の在庫。現場で数える |
| 返品待ち・不良品 | ある | 良品と分けて数える。評価も分ける |
倉庫の外にある在庫を忘れない
期末在庫の締め方で漏れやすいのが、現場に置いてある資材と、他社に預けている在庫です。倉庫だけを数えると、この2つが抜けます。現場の分は現場に数えてもらい、預け先には残高照会をかけます。
預り品は数えるが、自社の在庫には入れない
お客様から預かった品物や、客先から支給された材料は、倉庫にあっても自社の在庫ではありません。数えて記録は残しつつ、区分を分けます。扱い方は支給品と預り在庫の棚卸にまとめています。
判断に迷うものは経理と税理士に確認する
所有権がいつ移るかは契約条件で変わります。現場で判断せず、契約書の条件を経理に渡して決めてもらうのが安全です。毎年同じ品目で迷うなら、一度決めた結果を残しておきます。
区分ごとに並べて明細を作る
数え終わったら、区分ごとに並べ替えて明細にします。ここまで作ると、経理側の作業がそのまま始められます。
| 持たせる項目 | 理由 |
|---|---|
| 区分 | 原材料・仕掛品・製品・貯蔵品など。会計上の分類に合わせる |
| 品目・単位・数量 | 実地棚卸で数えた数。帳簿の数ではない |
| 保管場所 | 倉庫・現場・預け先。外部にあるものが分かる |
| 単価 | 評価方法に沿った単価。経理が入れる |
| 金額 | 数量×単価 |
| 評価減の有無と理由 | 滞留・破損・期限切れなど |
数量は実地の数を使う
期末在庫の締め方で、帳簿の数字をそのまま明細に載せてしまうと、実地棚卸をした意味がなくなります。明細に載せるのは数えた数です。帳簿との差は、差異として別に処理します。
保管場所を持たせておく
外部にある在庫が明細のどこに入っているかが分かる形にしておくと、確認を求められたときにすぐ示せます。倉庫・現場・預け先の3つに分かるだけで十分です。
評価減は現場の情報が要る
何年動いていないか、破損しているか、期限が切れているか。この判断には現場の情報が必要です。不動在庫の一覧を先に作っておくと、評価減の検討がそのまま進みます。抽出のしかたは不動在庫を減らす方法で扱っています。
評価減の候補を現場から出す
期末在庫の締め方で、現場が用意しておくと役に立つのが評価減の候補です。判断は経理が行いますが、材料は現場にしかありません。
| 候補になる状態 | 現場が出す情報 |
|---|---|
| 長期間動いていない | 最終出庫日。何か月動いていないか |
| 使用期限が切れた・近い | ロットと期限。数量 |
| 破損・汚損している | 状態と数量。写真があれば添える |
| 規格変更で使えなくなった | いつ規格が変わったか。代替の可否 |
| 受注が消えて残った | 案件名と、転用できるかどうか |
期末に慌てて出さない
評価減の候補を期末にまとめて出すと、金額が大きくなり説明も難しくなります。月次で不動在庫を抽出しておけば、期末には一覧を渡すだけで済みます。
処分と評価減は別の話
評価を下げることと、実際に捨てることは別です。評価減をしたから捨ててよい、という順番ではありません。処分は処分で承認を取る必要があります。
判断の根拠を残す
なぜその品目を評価減の候補にしたかは、あとから聞かれます。最終出庫日や状態など、判断のもとになった事実を明細に書いておくと、説明のときに探し直さずに済みます。
説明できる形で残す
期末在庫の締め方の最後は、あとから第三者に見せられる形にしておくことです。数字だけでは根拠になりません。
手書きの用紙を捨てない
入力が終わると手書きの用紙を捨てたくなりますが、これが数えた事実の記録になります。期末の用紙は保存期間を決めて残します。スキャンでも構いません。
差異と調整の内訳を残す
実地の数と帳簿の数に差があった場合、その差をどう処理したかが説明の対象になります。品目・差異・処理の3列でよいので一覧にしておきます。
翌期のために手順を1枚残す
期末の締めは年に1回なので、翌年には手順を忘れています。締め時刻の決め方、数えない区画、判断が分かれた品目とその結論。この3つをメモしておくと、翌年の準備が半分になります。
期末までの逆算スケジュール
期末在庫の締め方は、当日だけでは終わりません。1か月前から順に進めると、当日が数えるだけになります。
| 時期 | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 1か月前 | 締め時点を決めて掲示。数える場所の一覧を作る | 在庫の担当と経理 |
| 3週間前 | 不動在庫を抽出し、評価減の候補を出す | 在庫の担当 |
| 2週間前 | 判断が分かれる在庫の扱いを確認する | 経理・顧問税理士 |
| 1週間前 | 棚を整理し、受入前と出荷待ちの区画を作る | 現場 |
| 前日 | 未入力の伝票をゼロにする | 事務 |
| 当日 | 数える。差が出た品目は二度数える | 現場 |
| 翌営業日 | 区分ごとの明細を作り、経理へ渡す | 在庫の担当 |
1か月前に決めるのは「時点」と「場所」
この2つが決まっていれば、あとの準備は現場で進みます。数える場所の一覧には、倉庫の外にある在庫も入れます。現場、外注先、預け先。ここで書き出しておくと当日に慌てません。
2週間前に会計の判断をもらう
未着品や支給材の扱いを当日に相談すると、そこで作業が止まります。契約条件を先に渡して、扱いを決めてもらいます。去年の結論が残っていれば、それを確認するだけで済みます。
1週間前の棚の整理がいちばん効く
棚が整理されていないと、当日の数える時間が倍になります。受入前と出荷待ちの区画を作り、通路を空ける。この半日が、当日の数時間を節約します。
期末在庫の締めでつまずきやすい3つ
その1:締め時点が人によって違う
「期末の在庫」とだけ決めると、現場は最終営業日の終業時、経理は末日の24時、というようにずれます。日付と時刻を書いて掲示するだけで、この食い違いは消えます。
その2:倉庫の外にある在庫を数えていない
現場に置いてある資材、他社に預けている在庫、支給して外注先にある材料。期末在庫の締め方で漏れるのは、たいてい倉庫の外です。数える場所の一覧を先に作ると抜けません。
その3:評価減の候補を期末に出す
期末にまとめて出すと金額が大きくなり、説明も難しくなります。月次で不動在庫を抽出しておけば、期末には一覧を渡すだけになります。期末の作業を軽くするのは、期中の運用です。
期末在庫の締め方は、当日の作業よりも前提を決めておく部分で決まります。時点、数える場所、判断が分かれる在庫の扱い。この3つを先に固めておくと、当日は数えるだけになります。
よくある質問
- Q. 期末在庫の締め時点は、いつに設定すればいいですか?
- 決算日の営業終了時点にすることが多いですが、大事なのは日付と時刻を1つに決めて掲示することです。「期末の在庫」とだけ決めると、現場と経理で認識がずれます。締め時刻以降に動いた分は別紙で加減します。
- Q. 現場に持ち出した資材は、期末在庫に含めますか?
- 使い切っていない分は自社の在庫として残っています。倉庫だけを数えると抜けるので、現場側でも数えてもらう必要があります。数える場所の一覧を先に作っておくと漏れません。具体的な扱いは自社の経理・顧問税理士にご確認ください。
- Q. 客先から預かっている支給材は、自社の在庫に入れますか?
- 有償支給か無償支給かで扱いが変わり、契約条件によっても異なります。倉庫にあっても自社の在庫ではないことが多いため、数えて記録は残しつつ区分を分けるのが実務的です。判断は契約書の条件をもとに経理と顧問税理士にご確認ください。
- Q. 実地棚卸の手書き用紙は、入力後に捨ててよいですか?
- 残しておくほうが安全です。手書きの用紙は「実際に数えた」という事実の記録になります。期末の明細だけでは、その数字をどう作ったかを説明できません。保存期間を決めて、スキャンでもよいので残してください。
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