一斉棚卸と循環棚卸の違い - どちらを選ぶかの決め方
棚卸の日は出荷を止め、休日に人を集めて丸1日かけて数える。この形が重くなってきたときに出てくるのが、区画を分けて日常業務のなかで少しずつ数える循環棚卸です。ただ、どちらが優れているという話ではなく、止められるかどうかで決まります。
一般には、一斉棚卸は全在庫を同時に数えるので精度が高く業務を止める、循環棚卸は区分した範囲を順に数えるので業務を止めずに少人数でできる、と説明されています。この記事では、一斉棚卸と循環棚卸の違いを4つの観点で比べ、区画の割り方と1年の日程の組み方まで見ていきます。差異そのものを減らす手順は棚卸差異を減らす方法にまとめました。
この記事の内容(9項目)
- 一斉棚卸と循環棚卸の違いは4つ
- いちばん大きい違いは「原因まで戻れるか」
- 精度の高さの意味が違う
- 一斉棚卸が向いている場合
- 決算のための実地棚卸は残る
- 止める日を先に決めてしまう
- 循環棚卸が向いている場合と、区画の割り方
- 区画は「場所」で割るのが基本
- 動きの速い品目は周回を増やす
- 数える時間帯を固定する
- 循環棚卸の1年の日程の組み方
- 実施したかどうかを記録する
- 差異率は区画ごとに出す
- 一斉棚卸と循環棚卸を併用する
- 切り替えるときは、いきなり全部を循環にしない
- 当日の割り振りは一斉棚卸のときだけ要る
- 循環棚卸に移すときの準備
- 棚番が無いまま循環棚卸は始められない
- 最初の1周は時間を測る
- 3か月続いたかどうかで判断する
- 一斉棚卸と循環棚卸の違いを踏まえた選び方
- 循環棚卸に移っても、決算の在庫は必要
- どちらでも、前日の締めは同じように要る
- 棚卸方式の切り替えでつまずきやすい3つ
- その1:区画を大きく割りすぎる
- その2:やる時間を決めない
- その3:差異が出たらその場で帳簿を直す
- よくある質問
一斉棚卸と循環棚卸の違いは4つ
一斉棚卸と循環棚卸の違いは、数える範囲だけではありません。運用に効いてくるのは次の4つです。
| 観点 | 一斉棚卸 | 循環棚卸 |
|---|---|---|
| 業務を止めるか | 止める。半日から1日 | 止めない。始業前や合間に数える |
| ある時点の精度 | 高い。全部が同じ時刻の数字になる | 時点がばらつく。全体像は作りにくい |
| 差異の原因の追いやすさ | 追いにくい。前回から半年か1年ある | 追いやすい。前回から数週間しかない |
| 必要な人数 | 多い。応援を呼ぶことが多い | 少ない。1〜2人で回せる |
いちばん大きい違いは「原因まで戻れるか」
一斉棚卸と循環棚卸の違いで、実務にいちばん効くのはここです。年1回の一斉棚卸で差異が出ても、12か月ぶんの履歴を見ることは現実的にできません。循環棚卸なら、前回から数週間ぶんを見るだけで原因に届きます。差異を減らしたいなら、この差は大きく効きます。
精度の高さの意味が違う
一斉棚卸の精度が高いというのは、ある一瞬の全体像が正確に取れるという意味です。決算のように「期末時点の在庫」が必要な場面では、ここが効きます。循環棚卸は各品目の精度は上がりますが、全体が同じ時刻の数字にはなりません。
一斉棚卸が向いている場合
一斉棚卸と循環棚卸の違いを踏まえたうえで、まず一斉棚卸が向く条件を見ます。
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 決算のために期末在庫を確定させる必要がある | 同じ時点の数字が要る。監査でも説明しやすい |
| 出荷を止めても業務が破綻しない | 休日や連休に当てられる |
| 品目が少なく、半日で終わる | 分けるほうが手間になる |
| 棚卸の経験が浅い | 全員で一度にやると、やり方が揃いやすい |
決算のための実地棚卸は残る
循環棚卸に切り替えても、決算に使う在庫の数字が必要なことは変わりません。年に1回の一斉棚卸は残しつつ、その間を循環棚卸で埋めるという形が実務では多く採られています。期末の締め方は期末在庫の締め方で扱っています。
止める日を先に決めてしまう
一斉棚卸は、日程が決まらないと準備も進みません。年度の初めに日付を決めて、取引先にも早めに伝えておくほうが、当日の飛び込み出荷が減ります。
循環棚卸が向いている場合と、区画の割り方
循環棚卸は、出荷を止められない現場や、差異の原因を早く潰したい現場に向きます。ただし区画の割り方を決めないと始まりません。
区画は「場所」で割るのが基本
品目で割ると、倉庫のあちこちを回ることになります。棚番の通路単位で割ると、その一角を順に数えるだけで済みます。1回15〜30分で終わる大きさに割るのが目安です。
動きの速い品目は周回を増やす
すべての区画を同じ回数だけ回す必要はありません。よく動く品目のある区画は月1回、動かない区画は年1回という形にすると、手間の割に差異が減ります。区画ごとに周回の回数を決めて、計画表に書いておきます。
数える時間帯を固定する
循環棚卸が続かない理由のほとんどは、時間が取れないことです。始業前の15分、または出荷が落ち着く時間帯に固定しておくと、習慣になります。やる時間を決めていない循環棚卸は、2か月で止まります。
循環棚卸の1年の日程の組み方
循環棚卸を始めるときは、1年ぶんの日程を先に紙にします。ここまで作ると、当日は表を見て数えるだけになります。
| 決めること | 目安 |
|---|---|
| 区画の数 | 1回15〜30分で終わる大きさに割る。20〜50区画が扱いやすい |
| 1回に数える区画数 | 1〜2区画。増やすと続かない |
| 周回の回数 | よく動く区画は年12回、ふつうは年4回、動かない区画は年1回 |
| やる曜日と時間 | 固定する。始業前や出荷が落ち着く時間帯 |
| 差異が出たときの扱い | その場で直さず、記録して当日中に履歴を見る |
実施したかどうかを記録する
循環棚卸は日常業務のなかに埋もれるので、やったかどうかが分からなくなります。計画表に実施日と差異率を書き込む形にしておくと、回れていない区画が目で見えます。回れていない区画は、たいてい差異も多い場所です。
差異率は区画ごとに出す
循環棚卸の利点は、区画ごとの差異率が取れることです。全体で1つの数字を出しても次の手は決まりませんが、区画ごとなら手を入れる場所がはっきりします。差異率の高い区画から棚番を振り直すといった打ち手につながります。
一斉棚卸と循環棚卸を併用する
一斉棚卸と循環棚卸の違いを見てきましたが、実務ではどちらか一方に決める必要はありません。多くの現場は併用しています。
一斉棚卸だけ
年1〜2回、全部を止めて数える。決算には対応できる。
差異が出ても原因まで戻れない。
年1回の一斉 + 循環
決算用に年1回は全部を数える。そのあいだを区画ごとに回す。
差異の原因が数週間以内で追える。
切り替えるときは、いきなり全部を循環にしない
一斉棚卸から循環棚卸へ移るときは、よく動く区画だけを先に循環に載せるのが安全です。残りは従来どおり一斉で数えます。3か月ほど回してみて、時間が取れることを確かめてから範囲を広げます。
当日の割り振りは一斉棚卸のときだけ要る
循環棚卸は1〜2人で回すので、担当の割り振りはほとんど要りません。逆に一斉棚卸は人数が増えるので、区画と担当と進捗を1枚で見られる形にしておかないと、抜けと二度数えが出ます。当日の回し方は棚卸当日の進め方にまとめています。
循環棚卸に移すときの準備
一斉棚卸と循環棚卸の違いが分かっても、そのまま移行するとたいてい2か月で止まります。移す前に4つだけ準備しておくと、続き方が変わります。
| 準備すること | やらないとどうなるか |
|---|---|
| 棚番を振り、台帳と現物を一致させる | 区画で割れない。数える範囲が毎回変わる |
| 区画ごとの品目数を数えておく | 15分で終わる区画と1時間の区画が混ざる |
| やる曜日と時刻を決める | 忙しい日に飛ばされ、そのまま止まる |
| 差異が出たときの手順を決める | その場で帳簿を直して、原因が残らない |
棚番が無いまま循環棚卸は始められない
循環棚卸は「この区画を数える」という単位で回します。棚番が振られていないと、数える範囲を毎回口頭で決めることになり、抜けと重複が出ます。棚番を振るところまでが、循環棚卸の準備です。付け方は在庫が合わない原因で扱っています。
最初の1周は時間を測る
区画ごとの所要時間は、やってみないと分かりません。最初の1周は各区画に何分かかったかを書き留めておくと、2周目から日程が現実的になります。1時間かかった区画は、次から2つに割ります。
3か月続いたかどうかで判断する
循環棚卸に移すかどうかの最終判断は、3か月回してみてからで構いません。続かなかったなら、区画が大きすぎるか時刻が決まっていないかのどちらかです。方式そのものが合わなかった、という結論を先に出さないほうが、選択肢が残ります。
一斉棚卸と循環棚卸の違いを踏まえた選び方
ここまでの内容をまとめると、選び方は次のようになります。迷ったら、止められるかどうかから決めます。
| 状況 | 向いている方式 |
|---|---|
| 出荷を1日止められる。品目が少ない | 一斉棚卸だけで足りる |
| 止められないが、差異はそれほど出ていない | 年1回の一斉 + よく動く区画だけ循環 |
| 止められず、差異も多い | 循環棚卸を主にして、決算時だけ一斉 |
| 拠点が複数ある | 拠点ごとに循環。決算前に一斉で揃える |
循環棚卸に移っても、決算の在庫は必要
循環棚卸に切り替えたからといって、決算のための在庫の数字が要らなくなるわけではありません。期末時点の数字をどう作るかを先に決めてから移行します。ここを決めずに移ると、決算前に慌てて全部を数えることになります。
どちらでも、前日の締めは同じように要る
一斉棚卸と循環棚卸の違いにかかわらず、数える前に帳簿を締める作業は同じです。未入力の伝票をゼロにし、受入前と出荷待ちの荷を分ける。循環棚卸の場合は、その区画に限って同じことをします。
棚卸方式の切り替えでつまずきやすい3つ
その1:区画を大きく割りすぎる
1回に1時間かかる区画にすると、忙しい日に飛ばされ、そのまま止まります。15〜30分で終わる大きさに割り直すだけで、続き方が変わります。区画の数が増えることは問題になりません。
その2:やる時間を決めない
「手が空いたときに」で始めた循環棚卸は、まず続きません。曜日と時刻を固定し、計画表に実施日を書き込む形にします。回れていない区画が見える状態にしておくことが、続けるための仕掛けです。
その3:差異が出たらその場で帳簿を直す
循環棚卸は日常のなかでやるので、差異が出たときに手早く帳簿を合わせて終わりにしがちです。それでは原因が残ります。差異は記録して、その日のうちに履歴を見るところまでを1組にします。数週間ぶんなので、それほど時間はかかりません。原因の型分けは棚卸差異の原因で扱っています。
よくある質問
- Q. 循環棚卸に切り替えれば、一斉棚卸はしなくてよいですか?
- 決算に使う在庫の数字が必要な場合は、年1回の実地棚卸は残しておくほうが安全です。実務では、年1回の一斉棚卸と、そのあいだを埋める循環棚卸を併用する形が多く採られています。
- Q. 循環棚卸の区画は、どのくらいの大きさで割ればいいですか?
- 1回15〜30分で数え終わる大きさが目安です。棚番の通路単位で割ると、そのまま順路になります。大きく割ると忙しい日に飛ばされ、そこから止まります。
- Q. 循環棚卸のほうが精度は上がりますか?
- 各品目の精度は上がりやすくなります。前回から数週間しか経っていないので、差異が出たときに原因まで戻れるためです。ただし全品目が同じ時点の数字にはならないので、ある一瞬の全体像が必要な場面では一斉棚卸が向きます。
- Q. 一斉棚卸と循環棚卸で、使う様式は変わりますか?
- 数える用紙は同じで構いません。違うのは計画側で、循環棚卸は「どの区画をいつ数えるか」と「実施したか」を管理する表が要ります。一斉棚卸は当日の担当割りと進捗を見る表が要ります。
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