支給品と預り在庫の棚卸 - 自社の在庫と混ぜない数え方
客先や元請から支給された材料が、自社で買った材料と同じ棚に置かれている。棚卸のときに一緒に数えられ、自社の在庫として計上されてしまう。支給品の棚卸でいちばん多い事故は、混ぜて数えることです。
一般には、支給品は自社の所有物ではないため、自社の棚卸資産には含めないのが基本です(有償支給など契約条件によって扱いが変わるため、会計上の処理は顧問税理士にご確認ください)。この記事では、支給品の棚卸を現場の作業として整理し、置き場所の分け方から客先への報告までを見ていきます。期末の締め方は期末在庫の締め方にまとめました。
この記事の内容(9項目)
- 支給品の棚卸は、置き場所を分けるところから
- 同じ品目でも、支給と自社購入は分ける
- 支給元が複数あるなら、支給元ごとに分ける
- 支給品の棚卸は自社の棚卸と同じ日にやる
- 支給品の受払を記録する
- 不良と破損の欄を必ず作る
- 受入数は伝票の数と別に書く
- 案件が終わったら、その案件ぶんを締める
- 支給品の棚卸の当日の進め方
- 用紙の色を変える
- 現場に出ている分も数える
- 差が出たら、その日のうちに受払を見る
- 客先からの預り品と支給品を分ける
- 預り品は数ではなく件で追う
- 預り品の棚卸は月に1回でよい
- どちらも自社の棚卸資産には含めない
- 支給元へ残数を報告する
- 残数は計算値ではなく実数を出す
- 差があるときは、隠さず理由を添える
- 報告の周期を先に決めておく
- 返却と処分の判断
- 勝手に捨てない
- 返却したことの記録を残す
- 長期に残っている支給品を毎年見る
- 支給品の受け入れで先に決めておくこと
- 歩留まりの見込みを先に伝えておく
- 報告の様式を最初にもらう
- 決めた内容を1枚にして残す
- 支給品の棚卸でつまずきやすい3つ
- その1:自社在庫と同じ棚に置いている
- その2:破損した分を使用数に紛れ込ませる
- その3:残数を計算値で報告する
- よくある質問
支給品の棚卸は、置き場所を分けるところから
支給品の棚卸を正しく行うには、数える前の置き方で決まります。同じ棚にあるものを当日だけ分けるのは無理があります。
| 分けるもの | やり方 | 分けないと |
|---|---|---|
| 置き場所 | 支給品専用の棚か区画を作る | 棚卸で自社在庫として数えられる |
| 表示 | 支給元の名前を現物か棚に貼る | 誰の物か分からなくなる |
| 品目コード | 自社の品目とは別のコードにする | 在庫の集計で足し合わされる |
| 用紙 | 棚卸の用紙を分ける | 集計のときに切り分けられない |
同じ品目でも、支給と自社購入は分ける
まったく同じ規格のボルトでも、支給されたものと自社で買ったものは別に管理します。混ぜると、どちらを使ったかが分からなくなり、支給元への報告ができません。現物が同じでも、コードと置き場所を分けます。
支給元が複数あるなら、支給元ごとに分ける
A社からの支給とB社からの支給を同じ区画に置くと、返却のときに取り違えます。支給元ごとに棚を分けるのが原則です。量が少なければ、箱を分けるだけでも構いません。
支給品の棚卸は自社の棚卸と同じ日にやる
分けて管理していても、数えるのは同じ日にします。時点がずれると、使用量の突き合わせができません。用紙だけを分けて、同じ日に回ります。
支給品の受払を記録する
支給品の棚卸で数が合うかどうかは、日々の受払の記録で決まります。受け入れて、使って、返す。この3つを1行で追える形にします。
| 項目 | 書き方 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 支給元・支給日 | 客先名と受け入れた日 | 報告のときの区切り |
| 品目・数量・単位 | 支給元の呼び方に合わせる | 先方の帳簿と照合できる |
| 受入数 | 実際に届いた数。伝票の数と別に書く | 差があったときの記録 |
| 使用数 | 案件や工程で使った数 | 残数の計算 |
| 返却数 | 支給元へ返した数と日付 | 返却の証拠 |
| 不良・破損 | 使えなくなった数と理由 | 報告が要る。黙って処理しない |
| 残数 | 受入−使用−返却−不良 | 棚卸で突き合わせる数 |
不良と破損の欄を必ず作る
支給品を加工中に壊した、というのは起こります。この欄が無いと、使用数に紛れ込ませて処理されます。報告が必要なものを報告できる形にしておくことが、あとのトラブルを防ぎます。
受入数は伝票の数と別に書く
支給元の伝票の数と、実際に届いた数を両方書きます。合っていれば同じ数字を2回書くだけですが、確認したという記録になります。
案件が終わったら、その案件ぶんを締める
支給品は案件に紐づくことが多いので、案件が終わった時点で受払を締めます。残数を確定させて、返すか次の案件へ持ち越すかを決めます。ここを流すと、翌年の棚卸で誰の物か分からない在庫になります。
支給品の棚卸の当日の進め方
支給品の棚卸は、自社の棚卸と同じ日に、用紙を分けて行います。当日の手順は自社在庫とほぼ同じです。
用紙の色を変える
同じ様式の白い紙が混ざると、集計のときに気づきません。支給品の用紙だけ色を変えるか、大きく支給元名を書いておくと、混入がほぼ消えます。
現場に出ている分も数える
支給品が現場や外注先に出ている場合、倉庫だけを数えると足りません。どこにいくつ出ているかを事前に把握して、現場側にも数えてもらいます。
差が出たら、その日のうちに受払を見る
支給品の棚卸で差が出た場合、自社在庫より急ぎます。先方に報告する数字なので、原因が分からないまま出せません。受払の記録をその日のうちに見ます。
客先からの預り品と支給品を分ける
支給品と似ていますが、扱いが違うのが預り品です。混ぜると、返す義務のあるものが在庫に紛れます。
支給品
加工や組立に使う材料。使えば減る。残りは返すか持ち越す。
受払で残数を追う。
預り品
修理や検査のために預かった品物。減らない。そのまま返す。
受領から返却まで1件ずつ追う。
預り品は数ではなく件で追う
お客様から預かった品物は、数量が減るものではありません。受け取った日、預かった内容、返した日を1件1行で持ちます。棚卸では、返却前の件数と現物が一致するかを見ます。
預り品の棚卸は月に1回でよい
件数が多くなければ、預り品は月に1回、返却前の一覧と現物を突き合わせるだけで足ります。長く預かったままの案件が見えることが、この確認の目的です。扱い方は預り品の管理方法にまとめています。
どちらも自社の棚卸資産には含めない
支給品も預り品も、原則として自社の所有物ではありません。数えて記録は残しつつ、自社在庫の集計とは分けます。有償支給など契約によって扱いが変わる場合があるため、会計上の処理は経理と顧問税理士にご確認ください。
支給元へ残数を報告する
支給品の棚卸の結果は、支給元に報告することが多くあります。求められてから作るのではなく、出せる形で作っておきます。
| 報告に入れるもの | 書き方 |
|---|---|
| 期間 | 前回報告からの期間。締め日を明記する |
| 受入・使用・返却・不良 | 期間内の数量。受払の合計から出す |
| 残数 | 棚卸で数えた実数。計算値ではなく実数を出す |
| 差異 | 計算値と実数に差があれば、その数と理由 |
| 保管場所 | 倉庫・現場・外注先の内訳 |
残数は計算値ではなく実数を出す
受払の計算だけで残数を報告すると、実際には合っていないことがあります。棚卸で数えた実数を出して、計算値との差は差異として書くほうが、信頼される形になります。
差があるときは、隠さず理由を添える
差が出たときに数字だけ合わせて報告すると、あとで実物が合わなくなったときに説明できません。不良で使えなくなった、探しているが見つかっていない、と事実を書きます。
報告の周期を先に決めておく
求められたときだけ作る形にすると、毎回慌てます。月次か案件の区切りで報告すると決めておけば、受払の記録もその周期で締められます。
返却と処分の判断
支給品の棚卸で残った分をどうするかは、こちらだけでは決められません。判断の窓口を決めておきます。
| 状況 | やること |
|---|---|
| 案件が終わって残った | 返却するか次の案件で使うかを支給元に確認する |
| 使えなくなった(破損・期限切れ) | 数と状態を報告し、処分の指示を仰ぐ |
| 支給元との取引が終わった | 残数を報告して、返却の期限を決める |
| 探しても見つからない | すぐ無いことにせず、所在不明として報告する |
勝手に捨てない
支給品は自社の物ではないので、使えなくなったからといって自社の判断で処分できません。報告して指示を仰ぐのが原則です。処分の指示が出たら、その記録も残します。
返却したことの記録を残す
返したはずのものについて後から問い合わせが来ることがあります。返却日、数量、受け取った人を残しておくと、この確認が数分で終わります。
長期に残っている支給品を毎年見る
何年も残ったままの支給品は、支給元でも把握していないことがあります。年に1回、1年以上動いていない支給品を一覧にして報告すると、返却か廃棄かの判断が進みます。棚が空くという意味でも効きます。
支給品の受け入れで先に決めておくこと
支給品の棚卸で困る場面のほとんどは、受け入れるときに決めていなかったことが原因です。取引を始めるときに確認しておきます。
| 確認すること | 決めていないと起きること |
|---|---|
| 有償支給か無償支給か | 会計処理が決まらない。期末に慌てる |
| 残数の報告の周期と様式 | 求められたときに毎回作り直す |
| 不良・破損が出たときの連絡先 | 報告しにくく、使用数に紛れ込む |
| 返却の条件と期限 | 案件が終わっても残り続ける |
| 保管中の責任の範囲 | 破損したときの負担がもめる |
| 歩留まりの見込み | 加工で減る分が不足として扱われる |
歩留まりの見込みを先に伝えておく
加工する支給品は、切り代や不良で必ず減ります。受け入れる時点で、どのくらい減る見込みかを共有しておくと、あとで不足として扱われずに済みます。実績が出たら次から見込みを直します。
報告の様式を最初にもらう
支給元に決まった様式があるなら、最初にもらって、自社の受払の項目をそれに合わせます。あとから作り直すより、最初に合わせておくほうが速いです。
決めた内容を1枚にして残す
担当が替わると、決めごとは失われます。支給元ごとに、確認した内容を1枚にまとめて受払簿と一緒に保管すると、引き継ぎで消えません。
支給品の棚卸でつまずきやすい3つ
その1:自社在庫と同じ棚に置いている
置き場所が分かれていないと、当日だけ分けて数えるのは無理です。支給品専用の区画を作るところから始めます。量が少なければ棚の一段でも構いません。
その2:破損した分を使用数に紛れ込ませる
報告しにくいので使用として処理する、という形は、あとで必ず問題になります。不良と破損の欄を作って、報告できる形にするほうが結果的に楽です。責める運用にすると、この欄は埋まりません。
その3:残数を計算値で報告する
受払の計算だけで残数を出すと、実際の残りと違っていることがあります。棚卸の実数を報告して、差は差異として書きます。差を隠すと、次の棚卸でさらに大きくなります。
支給品の棚卸は、数える技術ではなく分ける仕組みの話です。置き場所とコードと用紙。この3つを分けておけば、当日は自社の棚卸と同じ手順で回せます。
よくある質問
- Q. 支給品は自社の棚卸資産に含めますか?
- 原則として自社の所有物ではないため、含めないのが基本です。ただし有償支給など契約条件によって扱いが変わる場合があります。数えて記録は残しつつ区分を分けておき、会計上の処理は経理と顧問税理士にご確認ください。
- Q. 支給品と自社購入品が同じ規格の場合、分けて管理する必要がありますか?
- 分けてください。現物が同じでも、混ぜるとどちらを使ったかが分からなくなり、支給元への報告ができなくなります。品目コードと置き場所の両方を分けるのが確実です。
- Q. 支給品を加工中に壊してしまいました。どう処理すればいいですか?
- 使用数に紛れ込ませず、不良・破損として記録し、支給元へ報告してください。自社の判断で処分することはできません。報告して指示を仰ぎ、処分の指示が出たらその記録も残します。
- Q. 支給品の残数は、受払の計算値を報告すればよいですか?
- 棚卸で数えた実数を報告し、計算値との差は差異として書くほうが安全です。計算値だけで報告すると、後日実物が合わなかったときに説明できません。差の理由が分かっていない場合も、そのまま書いてください。
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