在庫を廃棄するまでの手続き - 申請・承認・実施を残す
捨てたほうがいいと分かっている在庫が、何年も棚を占めている。捨てられない理由は「捨てる」と言い出す人が決まっていないことです。在庫の廃棄手続きは、判断の難しさではなく、誰がどこで決めるかの問題です。
一般には、棚卸資産の廃棄は、対象を特定し、社内の承認を得て、実際に処分し、その事実を記録に残す流れで進みます。この記事では、在庫の廃棄手続きを5段階に分けて、現場側が何を用意し、どこで詰まるかを整理します。なお会計や税務の取り扱いは自社の顧問税理士にご確認ください。廃棄の候補を出すところは不動在庫を減らす方法にまとめました。
この記事の内容(9項目)
- 在庫の廃棄手続きは5段階
- 詰まるのは3番目
- 実施まで含めて1つの手続きにする
- 候補を出す作業は月次に組み込む
- 廃棄申請に必要な情報をそろえる
- ほかの選択肢を当たった記録を入れる
- 処分費用も書いておく
- まとめて申請してよい
- 承認の基準を金額で決める
- 既存の決裁規程に乗せる
- 少額はまとめて事後報告でもよい
- 承認の期限も決める
- 実施したことを証拠として残す
- 写真は数量が分かる撮り方をする
- 産業廃棄物として出す場合は法令に従う
- 在庫から落とすところまでを1組にする
- 決算前にまとめて出さない
- 期末の作業を軽くするのは期中の運用
- 評価減と廃棄は別の話
- 会計や税務の扱いは経理と確認する
- 廃棄せずに済ませる選択肢
- 金属や機械は買い取りになることがある
- 転用は名前と期限を入れて初めて成立する
- 選択肢を当たった記録が、承認を楽にする
- 廃棄の記録を次に活かす
- 理由ごとの金額を年に1回見る
- 廃棄を責めない
- 在庫の廃棄手続きでつまずきやすい3つ
- その1:承認者が決まっていない
- その2:承認で完了にしてしまう
- その3:在庫の記録から落としていない
- よくある質問
在庫の廃棄手続きは5段階
在庫の廃棄手続きは、判断と実行を分けて考えると詰まりません。
| 段階 | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 1. 候補を出す | 動いていない在庫、使えない在庫を抽出する | 在庫の担当 |
| 2. 申請する | 品目・数量・金額・理由をそろえて出す | 在庫の担当 |
| 3. 承認する | 金額に応じた決裁者が判断する | 決裁者 |
| 4. 実施する | 実際に処分する。証拠を残す | 在庫の担当 |
| 5. 記録を残す | 在庫から落とす。書類を保管する | 在庫の担当と経理 |
詰まるのは3番目
候補を出すところまでは進むのに、承認で止まる。誰に出せばよいか分からない、という理由がほとんどです。金額の線で決裁者を先に決めておくと、この詰まりは消えます。
実施まで含めて1つの手続きにする
承認が下りた時点で完了にすると、現物が倉庫に残ります。実施日が入って初めて閉じる形にしておきます。承認から実施までの期限も決めておくと、なお確実です。
候補を出す作業は月次に組み込む
廃棄の話を年に1回だけ持ち出すと、量が多くなって承認も重くなります。月に1回、候補を10件出すくらいのペースだと、1件ずつの判断が軽くなります。
廃棄申請に必要な情報をそろえる
在庫の廃棄手続きで、申請が突き返される理由はたいてい情報不足です。最初から入れておきます。
| 項目 | 書き方 | 無いと |
|---|---|---|
| 品目・数量・単位 | 在庫の記録からそのまま | 何をいくつ捨てるか分からない |
| 在庫金額 | 単価×数量。評価減済みなら注記する | 決裁者が決められない |
| 最終出庫日 | 何か月動いていないか | 捨てる理由の裏づけが無い |
| 廃棄の理由 | 期限切れ・規格変更・破損・案件終了 など | 判断の材料にならない |
| ほかの選択肢を検討した結果 | 返品・転用・値引き販売を当たったか | 捨てる以外を試したか分からない |
| 処分の方法 | 産廃業者・自社処分・引き取り依頼 | 費用の見積りができない |
| 処分にかかる費用 | 概算でよい | 捨てるほうが高いことに気づけない |
ほかの選択肢を当たった記録を入れる
在庫の廃棄手続きで承認が下りやすくなるのは、捨てる前に返品や転用を試した記録があるときです。当たってみて断られた、という1行があるだけで話が早くなります。
処分費用も書いておく
物によっては、処分の費用が在庫金額を上回ります。費用を書いておくと、置いておくほうが安いという判断もできます。その場合は保管場所を移すという選択肢が出てきます。
まとめて申請してよい
1品目ずつ申請すると、承認する側も大変です。月に1回、対象をまとめて1枚で出すほうが、双方の手間が減ります。1件だけ判断が付かないものは分けて出します。
承認の基準を金額で決める
在庫の廃棄手続きを速く回すには、承認のルールを1つ決めるだけで足ります。
既存の決裁規程に乗せる
在庫の廃棄のためだけに新しいルールを作る必要はありません。購買や経費の決裁規程と同じ金額の線を使うと、社内で説明しやすくなります。
少額はまとめて事後報告でもよい
1件数百円の在庫を毎回承認にかけると、手続きの費用のほうが高くなります。一定額未満はまとめて月次で報告する形にしておくと、現場が動けます。
承認の期限も決める
申請してから承認までの期限が無いと、そのまま止まります。5営業日以内に判断する、と決めておくと、動かない案件が見えます。判断できない場合は、その理由を書いて延ばします。
実施したことを証拠として残す
在庫の廃棄手続きで抜けやすいのが、実際に処分したことの記録です。あとから確認を求められる場面があります。
| 残すもの | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 実施日・実施者 | 記録の欄に記入 | 案件を閉じる条件になる |
| 処分の方法 | 業者名、または自社処分の内容 | 処分の経路を説明できる |
| 業者からの受領書 | マニフェストや受領書の控え | 第三者による確認の記録になる |
| 写真 | 処分前の現物。数量が分かる撮り方で | 数量と状態の裏づけ |
| 在庫からの落とし | 入出庫の記録に廃棄として1行 | 棚卸で差異にならない |
写真は数量が分かる撮り方をする
山積みの写真では何個あるか分かりません。数えられる並べ方で1枚撮ると、あとの説明が楽になります。1件につき1〜2枚で十分です。
産業廃棄物として出す場合は法令に従う
事業活動で生じた廃棄物の処理には、法令上の手続きがあります。処理を委託する場合の手続きや必要な書類は、自治体や委託先に確認してください。この記事で扱っているのは社内の在庫管理としての手続きです。
在庫から落とすところまでを1組にする
処分したのに帳簿に残っていると、棚卸で差異になります。入出庫の記録に「廃棄」の区分を作って、出庫として1行通すと、履歴が残り数も合います。
決算前にまとめて出さない
在庫の廃棄手続きを期末にまとめて行うと、金額が大きくなり、説明も難しくなります。
期末にまとめて廃棄する
普段の手間はゼロ。1回の金額が大きくなる。
承認と説明に時間がかかる。
月次で少しずつ廃棄する
毎月10分の作業がある。1件ずつの判断が軽い。
期末にはやることが残っていない。
期末の作業を軽くするのは期中の運用
期末在庫の締めのときに、廃棄の判断まで抱えると当日が回りません。月次で候補を出して処分しておけば、期末には数えるだけになります。締め方は期末在庫の締め方で扱っています。
評価減と廃棄は別の話
評価を下げることと、実際に捨てることは別の手続きです。評価減をしたから捨ててよい、という順番ではありません。廃棄は廃棄で承認を取ります。
会計や税務の扱いは経理と確認する
廃棄したときの会計処理や、税務上どのような記録が求められるかは、状況によって変わります。現場が用意するのは事実の記録で、処理の判断は経理と顧問税理士に確認するという分担にしておきます。
廃棄せずに済ませる選択肢
在庫の廃棄手続きに入る前に、ほかの出口を当たります。捨てるのはいちばん費用がかかる方法です。
| 選択肢 | 当たる順番 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 仕入先への返品 | 最初に当たる | 入荷から3か月以内なら可能性がある |
| 社内での転用 | 2番目 | 使う部署と期限を決める |
| 値引きでの販売 | 3番目 | 下げ幅と期間を先に決める |
| 引き取り業者への売却 | 4番目 | 金属など、買い取りが成立するもの |
| 廃棄 | 最後 | 費用が発生する |
金属や機械は買い取りになることがある
廃棄費用がかかると思っていたものが、引き取り業者に売れることがあります。捨てる前に一度当たってみるだけで、費用が収入に変わる場合があります。
転用は名前と期限を入れて初めて成立する
「そのうちどこかで使える」は転用ではありません。使う部署と、いつまでに使うかが書かれて初めて転用です。名前が入らないものは、廃棄の候補に戻します。
選択肢を当たった記録が、承認を楽にする
返品を打診したが断られた、転用先を探したが見つからなかった。この記録があると、廃棄の申請が通りやすくなります。手間ではなく、承認を早くするための材料として扱います。
廃棄の記録を次に活かす
在庫の廃棄手続きが回り始めたら、なぜその在庫が生まれたかを見ます。同じことが繰り返されないようにするためです。
| 廃棄の理由 | 入口での手当て |
|---|---|
| 期限切れ | 発注量を減らして回数を増やす。受入時の残り期限を基準にする |
| 規格変更で使えなくなった | 変更が決まった時点で旧品の在庫数を確認する |
| 案件が消えて残った | 案件終了時に残材を棚卸して転用先を決める |
| まとめ買いで余った | 値引き額と捨てる金額を並べて判断する |
| 保管中に劣化した | 置き方を変える。屋外保管を見直す |
理由ごとの金額を年に1回見る
廃棄の理由を分けて金額を集計すると、どこに手を打つと効くかが分かります。いちばん金額の大きい理由を1つだけ選んで手当てすると、翌年の廃棄額が変わります。
廃棄を責めない
処分の場で買い方を問い詰めると、次から誰も処分を申請しなくなります。処分は正しい行動として扱い、買い方の見直しは別の場で行うと分けておきます。
在庫の廃棄手続きでつまずきやすい3つ
その1:承認者が決まっていない
誰に出せばよいか分からないと、申請そのものが出てきません。金額の線を1本引いて、既存の決裁規程に乗せるだけで動き始めます。
その2:承認で完了にしてしまう
承認が下りたのに現物が倉庫に残っている、というのはよくあります。実施日と実施者が入って初めて閉じる形にして、空欄の行を月に1回見ます。
その3:在庫の記録から落としていない
処分したのに帳簿に残っていると、棚卸で差異になります。入出庫の記録に廃棄として1行通すところまでを、廃棄の手続きに含めます。
在庫の廃棄手続きは、金額の線を1本引いて、実施日まで書く欄を作る。この2つで大半が回り始めます。難しいのは判断ではなく、判断を先送りしない形を作るところです。
よくある質問
- Q. 在庫を廃棄するのに、どこまで承認が必要ですか?
- 自社の決裁規程に合わせるのが分かりやすい形です。在庫の廃棄のために新しいルールを作らず、購買や経費と同じ金額の線を使ってください。一定額未満はまとめて月次で報告する形にしておくと、現場が動けます。
- Q. 廃棄したことは、どう記録に残せばいいですか?
- 実施日と実施者、処分の方法、業者からの受領書の控え、処分前の写真を残してください。写真は数が分かる並べ方で1〜2枚で十分です。あわせて、入出庫の記録に「廃棄」の区分で出庫を1行通し、在庫からも落とします。
- Q. 廃棄と評価減は、同じ手続きですか?
- 別の手続きです。評価を下げることと、実際に処分することは分けて考えます。評価減をしたから捨ててよい、という順番ではなく、廃棄は廃棄で承認を取ってください。会計上の処理は経理と顧問税理士にご確認ください。
- Q. 捨てる前に、ほかにできることはありますか?
- 仕入先への返品、社内での転用、値引きでの販売、引き取り業者への売却の順に当たってみてください。金属など買い取りが成立するものもあります。当たって断られたという記録があると、廃棄の申請も通りやすくなります。
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