棚卸差異の原因 - 7つの型に分けて、次に打つ手を決める
棚卸をして帳簿と数が違ったとき、いちばんよくある終わり方は「帳簿を実数に直して終わり」です。これで当月は締まりますが、次の棚卸でも同じ品目に同じくらいの差が出ます。原因が残っているからです。
一般には、棚卸差異の原因は入力ミス・伝票処理の漏れ・入出荷時のミス・現品管理のミスに分類して説明されています。この記事では、棚卸差異の原因をもう少し実務に寄せて7つの型に分け、それぞれ何を見れば見分けられるか、そして次に何をすればよいかを整理します。差異そのものを減らす進め方は棚卸差異を減らす方法にまとめました。
この記事の内容(8項目)
- 棚卸差異の原因は7つの型に分かれる
- 現物のほうが多いときは、型が絞れる
- 金額ではなく件数で見る
- 棚卸差異の原因1・2:記録漏れと二重計上
- 記録漏れは「急いでいた日」に集中する
- 二重計上は「経路が2つある」ときに起きる
- 見分け方は履歴の並べ替え
- 棚卸差異の原因3:数え間違い
- 数え漏れが起きる場所は決まっている
- 2回数えるのは、差が出た品目だけでよい
- 棚卸表に前回の数量を載せない
- 棚卸差異の原因4・5:所在不明と単位違い
- 所在不明は「無い」ではなく「見つからない」
- 単位違いは差異が大きいのですぐ分かる
- 棚卸差異の原因6・7:現物の劣化と持ち出し
- 捨てたことを記録する場所を作る
- 緊急時の持ち出しには、事後でよいので記録を残す
- 件数が減っているかだけを見る
- 棚卸差異の原因を、記録に残して次につなげる
- 書くのは差異が出た品目だけ
- 「不明」を残しておく
- 差異率は品目ではなく区画で見る
- 棚卸差異の原因調査でつまずきやすい3つ
- その1:全部の差異を調べようとする
- その2:原因を人に紐づけてしまう
- その3:対策を一度に3つ以上決める
- よくある質問
棚卸差異の原因は7つの型に分かれる
棚卸差異の原因は、どちらに振れたか(帳簿が多いか、現物が多いか)で候補が絞れます。まずこの表で当たりを付けてから、現物と記録を見に行きます。
| 型 | ずれ方 | 疑うところ |
|---|---|---|
| 1. 記録漏れ | 帳簿>現物 | 出庫を書かずに持ち出した |
| 2. 二重計上 | 帳簿>現物 | 同じ入庫を2回入れた/伝票と手書きの両方 |
| 3. 数え間違い | どちらにも振れる | 棚卸当日の数え漏れ、重複カウント |
| 4. 所在不明 | 帳簿>現物 | 別の棚・別の現場にある。無いことにした |
| 5. 単位違い | 大きく振れる | 箱と本、kgと個が混ざった |
| 6. 現物の劣化・破損 | 帳簿>現物 | 捨てたが記録していない |
| 7. 持ち出し・無断使用 | 帳簿>現物 | 緊急時に断らず使った |
現物のほうが多いときは、型が絞れる
棚卸差異の原因のうち、現物が帳簿より多くなるのは2つだけです。入庫の記録漏れ(届いたのに書いていない)と、出庫の二重計上(同じ出荷を2回引いた)です。プラスの差異が出たときは、この2つから当たると早く着きます。
金額ではなく件数で見る
棚卸差異を金額だけで見ると、高い品目の1個の差に目が行きます。原因を潰すという意味では、差異が出た品目の件数のほうが役に立ちます。同じ品目で毎回差が出ているなら、そこには決まった原因があります。
棚卸差異の原因1・2:記録漏れと二重計上
棚卸差異の原因でいちばん件数が多いのは、記録そのものが実際の動きと合っていない型です。数え方の問題ではないので、棚卸を丁寧にしても減りません。
記録漏れは「急いでいた日」に集中する
出庫を書かずに持っていった、という漏れは、平常時ではなく急な出荷や飛び込みの作業があった日に集まります。履歴を日付順に見て、差異の出た品目が動いた日の前後に何があったかを見ると当たりが付きます。伝票が回ってくる前に現物が出ていく経路があると、ここが常態化します。
二重計上は「経路が2つある」ときに起きる
納品書からの入力と、現場のメモからの入力の両方が生きていると、同じ入庫が2回入ります。棚卸差異の原因としては地味ですが、経路が2つあるかぎり毎月出ます。入力の経路を1本に決めるだけで消えます。
見分け方は履歴の並べ替え
入出庫の履歴を品目コードと日付で並べ替えて、同じ日・同じ数量・同じ相手先の行が2行ないかを見ます。二重計上ならほぼここで見つかります。見つからなければ、記録漏れ側を疑います。
棚卸差異の原因3:数え間違い
棚卸差異の原因として、当日の数え間違いは思ったより多くあります。ただ、これは翌日に数え直せば分かるので、他の型と切り分けやすい型でもあります。
数え漏れが起きる場所は決まっている
数え間違いは倉庫全体に散らばるのではなく、特定の場所に集中します。通路の突き当たり、棚の最上段、扉の裏、別置きになっているパレット。差異が出た品目の棚番を並べると、同じ場所の名前が並びます。
| 起きやすい場面 | 手当て |
|---|---|
| 同じ品目が2か所に分かれて置いてある | 棚番を1つにまとめるか、両方を棚卸表に載せる |
| 箱の中身が満数だと思い込む | 開封済みの箱には残数を書いて貼る |
| 数える人と書く人が別 | 読み上げた数を復唱してから書く |
| 棚卸中も出荷が続いている | 棚卸中に動いた分を別紙に記録して後で足す |
2回数えるのは、差が出た品目だけでよい
全品目を2回数えると時間が倍になります。1回目で差が出た品目だけを、別の人がもう一度数える形にすると、数え間違いはほぼここで消えます。残ったものが、記録側の原因です。
棚卸表に前回の数量を載せない
帳簿の数量を印刷した棚卸表を持って回ると、その数字に引っ張られます。数えるときは数量欄を空にしておくほうが、差異が正直に出ます。突き合わせは戻ってからで間に合います。
棚卸差異の原因4・5:所在不明と単位違い
棚卸差異の原因のうち、この2つは記録の問題ではなく置き方と決め方の問題です。放っておくと毎回同じ量の差が出続けます。
所在不明は「無い」ではなく「見つからない」
棚卸で見つからなかった品目は、多くの場合どこかにあります。別の現場に持ち出されたまま、別の棚に紛れている、仮置き場に埋もれている。探す前に無いことにすると、翌月に出てきて今度はプラスの差異になります。
棚番を振り、移動したら記録する運用にすると、この型はかなり減ります。付け方は在庫が合わない原因で詳しく扱っています。
単位違いは差異が大きいのですぐ分かる
箱と本、kgと個が混ざると、差異は1桁か2桁ずれます。差異率が極端に大きい品目は、まず単位を疑います。品目マスタに「1箱=50本」のような入り数を書いておくと、入力の時点で気づけます。
単位を現場任せにする
書くほうは楽。入庫は箱、出庫は本、で記録される。
棚卸で桁違いの差が出る。
単位をマスタで固定する
入り数を決める手間が最初にかかる。記録はどちらでも、集計は1つの単位に揃う。
差異は数え間違いの範囲に収まる。
棚卸差異の原因6・7:現物の劣化と持ち出し
棚卸差異の原因の最後の2つは、記録に残しにくい型です。責める話にすると出てこなくなるので、出しやすい入口を作るほうが結果的に減ります。
捨てたことを記録する場所を作る
濡れた、汚れた、期限が切れた、という理由で処分した分は、帳簿にはまだ残っています。処分そのものを止めることはできないので、処分を記録する場所を作るほうが現実的です。数以外の異常が起きたときの報告先が決まっていないと、この型は毎回残ります。
緊急時の持ち出しには、事後でよいので記録を残す
止まったラインを動かすために、断らずに部品を持っていく。この場面自体は否定しても無くなりません。持っていってよい、ただし翌日までに1行書くという形にしておくと、差異ではなく履歴として残ります。
| 型 | 出しやすくする工夫 |
|---|---|
| 劣化・破損で処分した | 数以外の異常を書く様式を1枚だけ置く。写真は任意にする |
| 緊急で持ち出した | 持ち出し可、事後記入可。理由欄は「急ぎ」で通す |
| 試作や社内使用で消えた | 区分に「社内使用」を作って、出庫として通す |
件数が減っているかだけを見る
この2つの型は、ゼロにはなりません。毎月の件数が減っているかどうかだけを見て、増えたときに理由を聞く形にしておくと、記録が続きます。
棚卸差異の原因を、記録に残して次につなげる
棚卸差異の原因を調べても、その場の口頭で終わると、翌月には誰も覚えていません。差異が出た品目だけを対象に、短くても書き残す形にします。
書くのは差異が出た品目だけ
全品目について原因を書こうとすると続きません。差異が出た品目だけ、1行ずつで十分です。品目、帳簿数、実数、差異、推定原因の型、次にやること。これだけあれば、3か月後に同じ品目が出てきたときに比べられます。
| 残す項目 | 書き方 |
|---|---|
| 品目・棚番 | コードと場所。場所が分かると型の当たりが付く |
| 帳簿数・実数・差異 | 符号を付けて。プラスかマイナスかで型が絞れる |
| 推定原因の型 | 7つの型から選ぶ。分からないときは「不明」で通す |
| 確認したこと | 履歴を見た、現場に聞いた、探した、のどれか |
| 次にやること | 入力経路を1本にする、棚番を振る、など1つだけ |
「不明」を残しておく
原因が分からないものを無理に型に当てはめると、間違った対策が積み上がります。不明のまま残しておいて、3回続いたら本気で調べるほうが、時間の使い方として無駄がありません。
差異率は品目ではなく区画で見る
差異率を全体で1つ出しても、次に何をするかが決まりません。区画ごとに差異率を出すと、手を入れる場所がはっきりします。区画で回す数え方は一斉棚卸と循環棚卸の違いで扱っています。
棚卸差異の原因調査でつまずきやすい3つ
その1:全部の差異を調べようとする
棚卸差異の原因を全件について調べると、調査だけで数日かかります。金額の大きい順に上から10件、または差異率が5%を超えたものだけと決めて、残りは調整として通すほうが回ります。全部を調べる運用は、たいてい2回目で止まります。
その2:原因を人に紐づけてしまう
誰のミスかを先に特定しようとすると、次から差異そのものが報告されなくなります。原因の型は仕組みの言葉で書く(入力経路が2本ある、棚番が古い)と決めておくと、記録が正直になります。
その3:対策を一度に3つ以上決める
原因が分かると対策をいくつも並べたくなりますが、次の棚卸までに実行できるのはせいぜい1つです。1つの差異に対して次にやることは1つと決めて、効いたかどうかを翌月に見るほうが、結果として速く減ります。
棚卸差異の原因は、7つの型のうち上位2つ(記録漏れと所在不明)でほとんどが説明できます。この2つに絞って手を打つだけでも、差異の件数は目に見えて変わります。
よくある質問
- Q. 棚卸差異の原因で、いちばん多いのは何ですか?
- 記録漏れ(出庫を書かずに持ち出した)と所在不明(あるはずの場所に無い)の2つで、件数の大半が説明できることが多くあります。どちらも棚卸当日の作業ではなく、日常の運用側に原因があるため、棚卸を丁寧にしても減りません。
- Q. 棚卸差異率はどのくらいなら許容範囲ですか?
- 法令で決まった基準はありません。実務では、金額ベースで数パーセント以内を目安にしている現場が多くあります。ただ、率そのものより同じ品目で毎回差が出ていないかを見るほうが、次の手が決まります。
- Q. 現物のほうが多い(プラスの差異)ときは何を疑いますか?
- 入庫の記録漏れ(届いたのに書いていない)か、出庫の二重計上(同じ出荷を2回引いた)のどちらかです。マイナスの差異に比べて候補が少ないので、履歴を日付順に並べれば比較的すぐ見つかります。
- Q. 差異が出たら、帳簿を実数に直してよいのですか?
- 直して構いませんが、直す前に原因の型だけは残してください。原因を書かずに数字だけ合わせると、翌月も同じ差が出ます。入出庫の履歴に「調整」として1行残しておくと、あとから調整の回数を数えられます。
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