在庫が合わない原因 - 数より先に「どこにあるか」を直す
在庫が合わない、という言葉の中身は、実は2つに分かれます。数が違うのか、どこにあるか分からないのか。現場で時間を取られているのは、たいてい後者です。あるはずの物が見つからないので、いったん無いことにして発注する。翌月に出てきて今度は多すぎる。この往復が続きます。
一般には、在庫が合わない原因として入力ミス、伝票処理の漏れ、入出荷時のミス、現品管理のミスが挙げられます。この記事では、在庫が合わない原因を置き場所・記録の経路・単位・例外の4つに整理して、どこから直すと効くかを見ていきます。棚卸で差が出たあとの調べ方は棚卸差異の原因にまとめました。
この記事の内容(9項目)
- 在庫が合わない原因は4つに整理できる
- 数を数え直す前に、置き場所を見る
- 合わない品目には偏りがある
- 原因1:置き場所が人の記憶にある
- 棚番は3階層で足りる
- 同じ品目を2か所に置くなら、両方を書く
- 仮置き場を無かったことにしない
- 原因1の続き:移動を記録しないと棚番が嘘になる
- 移動の記録は3項目でよい
- 模様替えのあとが危ない
- 現場へ持ち出した分も「移動」として扱う
- 原因2:記録の経路が2本ある
- 入力する人を1人に寄せる
- 書かずに出せる経路を塞ぐ
- 調整は履歴に残す
- 原因3・4:単位の揺れと、記録されない例外
- 単位の揺れは、差が桁で出る
- 例外は、書く場所が無いから残らない
- 責める形にすると、例外は出てこなくなる
- 在庫が合わない状態を直す順番
- まず1か月、合わない品目の一覧を作る
- 全品目を対象にしない
- 探す時間を測ると、直す順番が決まる
- 2週間だけ測れば十分
- あとから出てきた件数がいちばん効く
- 測ったら、いちばん多い棚から直す
- 在庫が合わない状態でつまずきやすい3つ
- その1:見つからないものを「無い」として処理する
- その2:合わせることが目的になる
- その3:現場に報告だけを求める
- よくある質問
在庫が合わない原因は4つに整理できる
在庫が合わない原因は、直す順番があります。上から順に直すほうが、下を直すより効きます。
| 順 | 原因 | 症状 | 直す手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 置き場所が決まっていない | 探す時間が長い。無いことにして発注する | 棚番を振る。移したら記録する |
| 2 | 記録の経路が複数ある | 同じ入庫が2回入る。書かずに持ち出される | 入力の経路を1本にする |
| 3 | 単位が揃っていない | 差が1桁ずれる | 品目ごとに入り数を決める |
| 4 | 例外が記録されない | 捨てた・貸した分が帳簿に残る | 例外を書く場所を1つ作る |
数を数え直す前に、置き場所を見る
在庫が合わない原因を追うとき、多くの現場はまず数え直しから入ります。ただ、置き場所が決まっていないうちは何度数えても同じです。「どこにあるか」を先に直すと、「いくつあるか」は後からついてきます。
合わない品目には偏りがある
在庫が合わない品目は、倉庫全体に均等に散らばりません。よく動く品目、置き場所が2か所ある品目、現場が直接触る品目に集中します。合わない品目の一覧を作って、棚番と動きの速さを並べると、原因の型が見えてきます。
原因1:置き場所が人の記憶にある
在庫が合わない原因でいちばん多いのが、これです。置き場所が誰かの頭の中にあると、その人がいない日に在庫は行方不明になります。
棚番は3階層で足りる
通路・棚・段の3つで「A-03-2」のように振ります。1つの棚番に品目が5つ以内になる粒度が目安です。これより細かくすると振り直しが大変になり、粗いと結局その一角を探すことになります。
| 持たせる情報 | 使いどころ |
|---|---|
| 品目コードと棚番の対応 | 探すとき。棚卸表を順路どおりに並べるとき |
| 同じ品目の第2の置き場所 | 分けて置いている物の数え漏れを防ぐ |
| 棚番ごとの担当 | 差異が出たときに聞く相手が決まる |
| 仮置き場の棚番 | とりあえず置いた物を行方不明にしない |
同じ品目を2か所に置くなら、両方を書く
入りきらないので別の棚にも置く、というのはよくあります。問題は、片方しか台帳に載っていないことです。置き場所が2つあるなら2行書くだけで、棚卸のときの数え漏れが消えます。
仮置き場を無かったことにしない
どの倉庫にも「とりあえず置く場所」があります。ここに棚番を振らないと、そこにある物が全部帳簿から消えたことになります。仮置き場にも番号を振り、週に一度は空にすると決めておくほうが現実的です。
原因1の続き:移動を記録しないと棚番が嘘になる
棚番を振っただけでは、在庫が合わない状態は直りません。移したときに直す運用まで入れて、はじめて効きます。古い棚番は、棚番が無いときより探す時間を長くします。
移動の記録は3項目でよい
移動元、移動先、理由。この3つが分かれば十分です。日付と担当者を足しても5項目です。ここを増やすと現場が書かなくなります。詳しい事情は備考に自由記入で足ります。
模様替えのあとが危ない
在庫が合わない原因として、棚の入れ替えや季節物の移動は見落とされがちです。1日で何十品目も動くので、記録が追いつきません。模様替えの日は、移動記録を書く担当を1人決めておくと、翌月の棚卸がまったく違います。
現場へ持ち出した分も「移動」として扱う
倉庫から現場へ持っていった資材は、使い切るまで会社の在庫です。出庫として消してしまうと、余って戻ってきたときに行き場がなくなります。持出と戻しを突き合わせる形にしておくと、この分が合うようになります。
原因2:記録の経路が2本ある
在庫が合わない原因の2つ目は、記録の入り口が複数あることです。経路が2本あるかぎり、二重計上か記録漏れのどちらかが必ず起きます。
入力する人を1人に寄せる
現場もその場で入力し、事務所も納品書から入力する。この状態だと、同じ入庫が2回入ります。どちらを正にするかを決めるだけで消えます。現場は紙に書き、事務所がまとめて入力する形がいちばん揺れません。
その場で各自が入力する
反映が速い。入力の作法が人によって違う。
同じ動きが2回入ることがある。
紙に書いて1人が入力する
半日遅れる。入力の作法が揃う。
書き漏らしは紙の枚数で気づける。
書かずに出せる経路を塞ぐ
記録漏れは、急いでいる日に集中します。倉庫の出口に記入用紙を置き、書かないと出せない動線にしておくと、忙しい日ほど効きます。用紙は1枚1行の簡単なもので構いません。
調整は履歴に残す
数が合わないときに残高だけ書き換えると、そこで履歴が途切れます。入出庫の記録に「調整」という区分を作って1行残すと、あとから調整の回数を数えられます。調整が減っているかどうかが、運用が良くなっているかの目安になります。記録の作り方は入出庫管理をエクセルで始める方法にまとめています。
原因3・4:単位の揺れと、記録されない例外
在庫が合わない原因の残り2つは、件数は多くありませんが1件あたりの影響が大きい型です。
単位の揺れは、差が桁で出る
入庫は箱で、出庫は本で記録されていると、在庫は合いません。品目マスタに「1箱=50本」のような入り数を書いて、集計する単位を1つに決めます。差が極端に大きい品目は、まずここを疑います。
例外は、書く場所が無いから残らない
水に濡れて捨てた、フォークで穴を開けた、盗難にあった。こうした数以外の異常は、書く場所が決まっていないと口頭で終わります。帳簿には残ったままなので、棚卸で差異になります。
| 例外の種類 | 残す場所 | 書く量 |
|---|---|---|
| 水濡れ・汚損・破損 | 数以外の異常を書く様式 | いつ・どこで・何が・いくつ・その後どうしたか |
| 期限切れで処分 | 同上。処分の記録につなげる | ロットと数量。写真は任意 |
| 紛失・盗難の疑い | 同上。件数だけでも残す | 断定しない。事実だけ書く |
| 社内で使った | 入出庫の履歴に「社内使用」の区分で | 通常の出庫と同じ扱いにする |
責める形にすると、例外は出てこなくなる
例外の報告に理由の説明を求めると、次から報告されません。事実だけを書けばよい形にしておくと、記録が残ります。件数が増えたときに理由を聞く、という順番のほうが結果的に実態が見えます。
在庫が合わない状態を直す順番
4つの原因を全部同時に直すことはできません。効き方の大きい順に、1つずつ手を入れます。
まず1か月、合わない品目の一覧を作る
在庫が合わない原因を推測で決めずに、1か月ぶん記録します。品目、棚番、合わなかった数、そのとき何をしたか。10件も並べば、同じ棚番か同じ品目が繰り返し出てきます。そこが最初に手を入れる場所です。
全品目を対象にしない
すべての品目で在庫を合わせようとすると、途中で力尽きます。よく動く上位2割から始めて、そこが合うようになってから広げます。動かない在庫はそもそも数える価値が薄いので、処分の判断に回すほうが早く軽くなります。手順は不動在庫を減らす方法にまとめました。
探す時間を測ると、直す順番が決まる
在庫が合わない原因に手を入れるとき、社内を説得する材料になるのが探す時間です。金額ではなく時間で出すと、話が通りやすくなります。
| 測るもの | 測り方 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 1件あたりの探す時間 | 2週間、探した回数と分数を紙に書く | 棚番を振る作業の投資判断 |
| 見つからなかった件数 | 探したが出てこなかった回数 | 所在不明の実態。発注のやり直しにつながる |
| あとから出てきた件数 | 無いことにした後に出てきた回数 | 二重発注の量が見える |
2週間だけ測れば十分
正確に測る必要はありません。2週間、倉庫に紙を1枚貼って、探すたびに正の字を書くだけで実態は出ます。1日に5回、1回5分なら、月に8時間以上を探すことに使っている計算になります。
あとから出てきた件数がいちばん効く
無いことにして発注し、後日出てきた。この件数は、在庫が合わない状態が直接お金に変わっている部分です。件数と、そのときの発注金額を並べると、棚番を振る半日がどれだけ安いかが分かります。
測ったら、いちばん多い棚から直す
探す時間が長い場所は偏ります。測った紙に棚番を書いておけば、どこから手を付ければよいかがそのまま出ます。倉庫全体を一度に整理しようとせず、いちばん探している一角だけから始めると、1日で効果が出ます。
在庫が合わない状態でつまずきやすい3つ
その1:見つからないものを「無い」として処理する
探しても出てこないので在庫をゼロにして発注する。この処理をすると、翌月に現物が出てきて今度はプラスの差異になります。すぐに消さず、所在不明として残す欄を作ると、往復が止まります。1か月出てこなければ、そこで落とします。
その2:合わせることが目的になる
月末に数字だけ合わせて締めると、翌月も同じ作業が要ります。合わせた回数ではなく、合わせなくて済んだ品目の数を見ると、進んでいるかどうかが分かります。
その3:現場に報告だけを求める
記録の精度を上げようとして報告項目を増やすと、書く時間が増えて記録が雑になります。書く量を増やす前に、書かなくても済むようにできないかを見ます。棚番を振る、入り数を決める、経路を1本にする。どれも現場の書く量を増やさずに効きます。
在庫が合わない原因は、ほとんどが置き場所と記録の経路に集まります。この2つに手を入れるだけで、棚卸の差異も一緒に減ります。
よくある質問
- Q. 在庫が合わない原因を調べるには、まず何をすればいいですか?
- 1か月ぶん、合わなかった品目の一覧を作ってください。品目・棚番・合わなかった数・そのとき何をしたか、の4つだけで構いません。10件も並ぶと、同じ棚番か同じ品目が繰り返し出てきます。そこが最初に手を入れる場所です。
- Q. 棚番を振るのに、どのくらい時間がかかりますか?
- 品目300、置き場所30か所くらいの規模で、半日から1日が目安です。通路・棚・段の3階層で「A-03-2」のように振れば十分で、細かくしすぎないほうが続きます。振ったあとは、移動したときに直す運用のほうが手間としては重要です。
- Q. 探しても見つからない在庫は、帳簿から消してよいですか?
- すぐに消さず、所在不明として残す欄を作るほうが安全です。消してしまうと、翌月に現物が出てきたときにプラスの差異になり、また合わなくなります。1か月出てこなければ、そこで落とす、という線を決めておくと運用が安定します。
- Q. 在庫が合わない状態と、棚卸差異は違うものですか?
- 重なりますが、見る場面が違います。棚卸差異は数えた時点で確定した差のことで、原因調査はそこから始まります。在庫が合わない状態は、日々の在庫数がそもそも信用できない状態を指します。置き場所と記録の経路を直すと、両方が同時に減ります。
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