補修部品の在庫の持ち方 - 供給期限まで持ちこたえる
生産が終わった製品の部品を、いつまで持っていればよいのか。動かないので不動在庫として処分の候補に挙がるが、捨てたあとに修理の依頼が来る。補修部品の在庫は、動かないことが正常な在庫です。通常の在庫と同じ物差しで見ると、判断を誤ります。
補修部品は、売れるから持つのではなく、供給する約束があるから持ちます。この記事では、補修部品の在庫の持ち方を、対象の決め方から在庫が尽きたときの手当てまで整理します。動かない在庫全般の扱いは不動在庫を減らす方法にまとめました。
この記事の内容(10項目)
- 補修部品の在庫は、不動在庫とは分けて見る
- 品目マスタに区分を1つ足す
- 供給期限を台帳に書く
- 期限が切れたら、通常の判断に戻す
- 補修部品として持つ対象を決める
- 過去の修理実績から選ぶ
- 代替の可否を調べておく
- 安全に関わる部品は例外扱いにする
- 必要数をどう見積もるか
- 正確さより桁を外さないこと
- 年ごとに減っていく前提で見る
- 1年ごとに実績と突き合わせる
- 最終発注の判断
- 廃番の連絡は在庫の確認と同時に
- 生産終了時にまとめて決める
- 判断の記録を残す
- 補修部品の保管
- 使用期限のある補修部品は期限も管理する
- 年1回の状態確認を入れる
- 保管場所は奥でよい
- 在庫が尽きたときの手当て
- 残数が一定を切ったら知らせる
- 選択肢は3つ
- 供給できない場合の伝え方を決めておく
- 棚卸と期末の扱い
- 棚卸では通常どおり数える
- 評価の扱いは経理と決めておく
- 供給期限を過ぎた分は通常の判断へ
- 補修部品の在庫を誰が見るか
- 年に1回、関係者で一覧を見る
- 判断の記録を1行残す
- 補修部品の在庫でつまずきやすい3つ
- その1:不動在庫として処分してしまう
- その2:最終発注の機会を逃す
- その3:全部品を持とうとする
- おまけ:修理の実績と在庫を同じ場所で見る
- よくある質問
補修部品の在庫は、不動在庫とは分けて見る
補修部品の在庫を通常の抽出にかけると、毎回処分の候補として出てきます。ここを分けるところから始めます。
| 通常の在庫 | 補修部品の在庫 | |
|---|---|---|
| 動かない意味 | 需要を読み違えた | 正常。故障がなければ動かない |
| 判断の物差し | 最終出庫日 | 供給期限までの残り年数 |
| 減らす方向 | 処分して棚を空ける | 期限まで維持する |
| 抽出の扱い | 3〜6か月で候補に出す | 抽出の対象から外す |
品目マスタに区分を1つ足す
補修部品の在庫を守るには、品目マスタに「補修部品」の区分を持たせて、不動在庫の抽出から外すのがいちばん簡単です。区分が無いと、毎年同じ議論が起きます。
供給期限を台帳に書く
いつまで供給する約束かが分かっていないと、判断ができません。製品ごとの供給期限を書いておくと、期限が近づいた部品から順に扱いを決められます。
期限が切れたら、通常の判断に戻す
供給期限を過ぎた補修部品は、守る理由がなくなります。そこから先は通常の不動在庫として処分の判断に回します。期限があるからこそ、終わりも決まります。
補修部品として持つ対象を決める
生産終了した製品のすべての部品を持つ必要はありません。対象を絞ります。
| 持つべき部品 | 理由 |
|---|---|
| 故障しやすい部品 | 修理の依頼が実際に来る |
| 専用設計で代替が効かない部品 | あとから手に入らない |
| 製造に時間がかかる部品 | 受注してからでは間に合わない |
| 安全に関わる部品 | 供給できないと使用を止めることになる |
逆に、市販品で代替できる部品、汎用の規格品は在庫として持たなくても、必要になってから調達できます。
過去の修理実績から選ぶ
どの部品が実際に交換されているかは、修理の記録に残っています。過去数年の交換実績の上位から選ぶと、外しません。実績が無い部品を並べても場所を取るだけです。
代替の可否を調べておく
市販品で代えられる部品は、在庫を持たずに済みます。生産終了のときに、代替の可否を一度調べておくと、持つ品目が減ります。
安全に関わる部品は例外扱いにする
交換の実績が少なくても、供給できないと製品を使えなくなる部品は持ちます。頻度ではなく影響で判断するのがこの分類です。
必要数をどう見積もるか
補修部品の在庫は、多すぎると場所と資金を食い、少なすぎると供給できません。おおよその見当を立てます。
正確さより桁を外さないこと
補修部品の需要は正確には読めません。10個でよいのか100個なのかが分かれば十分です。細かい計算に時間をかけるより、実績を見て決めます。
年ごとに減っていく前提で見る
市場にある製品は、年々使われなくなります。後半の年数は需要が落ちるので、供給期限いっぱいまで同じペースで必要とは限りません。
1年ごとに実績と突き合わせる
1年使ってみて、想定より出ていない、または足りない、が分かります。年に1回、消費した数と残数を見て調整すると、精度が上がります。
最終発注の判断
補修部品の在庫でいちばん重い判断が、最終発注です。ここを逃すと、二度と手に入りません。
| 場面 | やること | 期限 |
|---|---|---|
| メーカーから廃番の連絡が来た | 手元の在庫数と必要数を比べる | 最終発注の受付期限まで |
| 自社製品の生産を終了する | 補修部品として持つ品目を決める | 生産終了の前 |
| 仕入先が廃業する | 代替の入手先を探す。まとめて手配する | できるだけ早く |
| 金型が寿命に近い | 作り替えるか、最後に作り置くかを決める | 寿命が来る前 |
廃番の連絡は在庫の確認と同時に
メーカーから廃番の連絡が来たら、その日のうちに手元の在庫数と必要数を比べます。最終発注の受付期限は思ったより短いことがあります。
生産終了時にまとめて決める
自社製品の生産を終えるときが、補修部品の在庫を決める最大の機会です。持つ品目と数を決めて、必要なら最後の発注をかけます。あとからでは手に入らない部品が出ます。
判断の記録を残す
なぜその数にしたのかを書いておくと、数年後に足りなくなったときに検証できます。「出荷台数と過去の交換実績から○個と判断」と1行残すだけで十分です。
補修部品の保管
長く持つ在庫なので、保管のしかたが効いてきます。数年後に使えなければ意味がありません。
| 気をつけること | 対象 |
|---|---|
| 錆と劣化 | 金属部品。防錆処理をして保管する |
| ゴム・樹脂の経年変化 | パッキン、ベルト。使用期限がある場合は管理する |
| 電池の自然放電 | バッテリー。定期的に確認する |
| 湿気 | 電子部品。乾燥剤や保管場所を見直す |
使用期限のある補修部品は期限も管理する
ゴムや接着剤など、保管しているだけで劣化する部品があります。ロットと期限を管理して、期限の近いものから使う形にします。管理のしかたはロットと使用期限の管理で扱っています。
年1回の状態確認を入れる
棚卸のときに数を数えるだけでなく、状態も見るようにします。錆びていた、劣化していた、というのは数年後に発覚すると手遅れです。
保管場所は奥でよい
補修部品は頻繁には出ません。取り出しやすい場所は日常の在庫に譲って、補修部品は奥にまとめるほうが、倉庫全体としては効率的です。棚番は必ず記録します。
在庫が尽きたときの手当て
供給期限内に補修部品の在庫が尽きることがあります。そのときの選択肢を先に知っておきます。
尽きてから探す
平常時の手間はゼロ。探すのに数週間かかる。
お客様を待たせることになる。
残数が減った時点で動く
残数の確認が要る。代替や再製作を検討する時間がある。
お客様に見通しを伝えられる。
残数が一定を切ったら知らせる
補修部品にも発注点のような線を置きます。残り3個を切ったら報告する、と決めておくと、尽きる前に手が打てます。
選択肢は3つ
再製作する、市販品で代替する、修理ではなく交換を提案する。どれも時間がかかるので、尽きる前に検討を始めます。
供給できない場合の伝え方を決めておく
どうしても供給できない場合があります。いつ、誰が、どう伝えるかを先に決めておくと、その場で慌てません。代替の提案を一緒に出せると、話が前に進みます。
棚卸と期末の扱い
補修部品の在庫は金額として残り続けるので、期末に議論になりやすい在庫です。
棚卸では通常どおり数える
動かないからといって数えないと、実態が分からなくなります。年1回は必ず数えて、状態も一緒に見ます。数えるついでに劣化の確認ができます。
評価の扱いは経理と決めておく
長期にわたって保有する在庫の評価は、会計上の判断が必要です。補修部品として意図的に保有していることを経理に共有しておくと、期末の説明が楽になります。具体的な処理は顧問税理士にご確認ください。
供給期限を過ぎた分は通常の判断へ
期限を過ぎた補修部品は、守る理由がなくなります。期末の前に一覧を出して、処分の判断に回します。期限で区切っておくと、この整理が毎年自動的に進みます。
補修部品の在庫を誰が見るか
補修部品の在庫は、日常の在庫管理の担当だけでは判断できません。関わる人を決めておきます。
| 判断すること | 必要な情報 | 持っている人 |
|---|---|---|
| 持つ品目を決める | 修理の実績、部品の代替可否 | サービス部門・技術 |
| 必要数を決める | 出荷台数、供給期限 | 営業・技術 |
| 最終発注をかける | 在庫数、廃番の情報 | 購買・在庫の担当 |
| 期末の評価 | 保有の意図と残り年数 | 経理 |
年に1回、関係者で一覧を見る
補修部品の在庫は、年に1回まとめて見る形で足ります。残数、消費した数、供給期限までの残り年数の3列を並べて、続けるか終えるかを決めます。
判断の記録を1行残す
「まだ持つ」と決めたことも記録に残します。翌年の確認のときに、前回どう判断したかが分かると、議論が短く済みます。
補修部品の在庫でつまずきやすい3つ
その1:不動在庫として処分してしまう
動かないので処分の候補に上がり、捨てたあとに依頼が来る。品目マスタに補修部品の区分を持たせて、抽出の対象から外すだけで防げます。
その2:最終発注の機会を逃す
メーカーからの廃番の連絡を放置すると、二度と手に入りません。連絡を受けたその日に、在庫数と必要数を比べる手順を決めておきます。
その3:全部品を持とうとする
生産終了した製品の全部品を持つと、倉庫が埋まります。過去の交換実績の上位と、代替の効かない部品、安全に関わる部品に絞ります。市販品で代替できるものは持たなくて構いません。
おまけ:修理の実績と在庫を同じ場所で見る
どの部品が実際に交換されたかは、修理の記録に残っています。年に1回、修理の実績と補修部品の在庫を並べて見ると、持つべき品目と要らない品目がはっきりします。実績のない部品を持ち続けているケースは珍しくありません。
補修部品の在庫は、動かないことが正常です。通常の在庫と物差しを分けて、供給期限で区切る。この2つがあれば、持ちすぎも捨てすぎも避けられます。
よくある質問
- Q. 補修部品は、不動在庫として処分してよいですか?
- 通常の在庫とは分けて考えてください。補修部品は動かないことが正常で、供給する約束があるから持っている在庫です。品目マスタに補修部品の区分を持たせて、不動在庫の抽出から外しておくと、毎年同じ議論をせずに済みます。
- Q. 生産終了した製品の部品は、全部持つべきですか?
- 絞って構いません。過去数年の交換実績の上位、専用設計で代替が効かない部品、安全に関わる部品を優先してください。市販品で代替できる汎用部品は、必要になってから調達できます。
- Q. 補修部品の必要数は、どう見積もればいいですか?
- 市場にある台数、過去の交換実績から見た故障率、供給期限までの残り年数を掛け合わせた目安で足ります。正確な予測はできないので、10個でよいのか100個なのかという桁を外さないことが目的です。1年ごとに実績と突き合わせて調整してください。
- Q. メーカーから廃番の連絡が来たら、何をすればいいですか?
- その日のうちに手元の在庫数と必要数を比べてください。最終発注の受付期限は思ったより短いことがあります。この機会を逃すと二度と手に入らないので、判断の記録も一緒に残しておくと、数年後に検証できます。
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。