棚移動の記録|移動元・移動先・理由の3項目で在庫を見失わない
棚番を振って在庫の場所を管理し始めたのに、半年後には「書いてある場所に無い」が増えている。原因は、移したときに直していないことです。古い棚番は、棚番が無いときより探す時間を長くします。
棚移動の記録は、移動元・移動先・理由の3つを書くだけです。それでも書かれないのは、書く場所と書くきっかけが決まっていないからです。この記事では、棚移動の記録を続けられる形にする方法を整理します。棚番そのものの付け方は在庫が合わない原因にまとめました。
この記事の内容(13項目)
- 棚移動の記録は3項目でよい
- 品目名は書かなくてよい場合がある
- 数量は原則書かない
- 理由の欄が意外に効く
- 書くきっかけを決める
- 移動先に札を貼る
- 用紙は棚の近くに置く
- 台帳の更新はまとめてでよい
- 模様替えのときが最大の山場
- 記録係を1人決める
- 移動前に写真を撮っておく
- その日のうちに台帳を直す
- 仮置きと本置きを分ける
- 仮置き場にも棚番を振る
- 仮置きは当日中に解消する
- 数日以上動かないなら本置きにする
- 棚移動と棚卸のつながり
- 棚番順に並べた棚卸表が使えるかどうか
- 「帳簿にあるが現物が無い」の多くは移動
- 差異の出た棚番を並べてみる
- 棚番の一覧と一緒に運用する
- 対応表は現在の状態、記録は履歴
- 倉庫に地図を1枚貼る
- 年に1回は現物と突き合わせる
- 現場や別倉庫への移動
- 拠点をまたぐ移動は、双方で書く
- 現場から現場への横持ちも記録する
- 棚移動が多い倉庫は、配置そのものを見直す
- 出庫の頻度で並べ直す
- 空きの棚番を用意しておく
- 季節物は入れ替える場所を固定する
- 棚移動の記録でつまずきやすい3つ
- その1:模様替えのときに書かない
- その2:現場に台帳を直させる
- その3:仮置きまで全部記録しようとする
- おまけ:移動の記録は棚卸の日程にも効く
- 棚移動の記録にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 棚移動の記録に出てくる用語
- 棚移動の記録と一緒に押さえておきたいこと
- 棚移動の記録と在庫移動表は、直す台帳が違う
- たな卸表には保存期間があり、棚移動の記録には決まりがない
- 配置の見直しは、荷待ちの時間を短くする手当てにもなる
- よくある質問
棚移動の記録は3項目でよい
棚移動の記録は、項目を増やすと書かれなくなります。最低限で足ります。
| 項目 | 書き方 | 要る理由 |
|---|---|---|
| 移動元の棚番 | A-03-2 のように | 台帳のどの行を直すかが決まる |
| 移動先の棚番 | 同上 | 新しい場所が分かる |
| 理由 | 模様替え・季節・数量が増えた など | また戻す可能性があるか分かる |
日付と担当者を足しても5項目です。これ以上は増やさないと決めておくと、忙しい日でも書けます。
品目名は書かなくてよい場合がある
棚番と品目コードの対応表があるなら、移動の記録には棚番だけあれば足ります。台帳側で品目が引けるので、現場が書く量を減らせます。
数量は原則書かない
棚移動は場所を変えるだけで、数は変わりません。数量を書かせると、入出庫と混同されます。一部だけを移す場合だけ、数量を書く欄を使います。
理由の欄が意外に効く
「季節物を奥へ」という理由が書いてあれば、シーズンになったら戻すと分かります。理由は次の行動の予告になります。
書くきっかけを決める
棚移動の記録が続かないのは、書く動機が弱いからです。動作の中にきっかけを埋め込みます。
移動先に札を貼る
移したときに、移動元の棚番を書いた札を移動先に貼ります。これだけで、台帳が古くても現物から追えます。台帳の更新が遅れても、探せる状態が保てます。
用紙は棚の近くに置く
事務所まで書きに行く形にすると、書かれません。倉庫内に記入用紙を置いて、事務所が後で入力するのが確実です。
台帳の更新はまとめてでよい
現場に台帳を直させると、そこで止まります。現場は紙に書くだけ、更新は1日1回まとめてという分担にすると、両方が回ります。
模様替えのときが最大の山場
棚移動の記録が崩れるのは、1件ずつの移動ではありません。1日に何十品目も動く模様替えです。
| やること | タイミング |
|---|---|
| 記録係を1人決める | 作業を始める前 |
| 移動前の棚の写真を撮る | 作業を始める前 |
| 移動しながら書く | 作業中。あとでまとめて思い出さない |
| その日のうちに台帳を直す | 作業の当日 |
| 翌日に抜き取りで確認する | 翌営業日 |
記録係を1人決める
全員が動かして全員が書く形にすると、抜けます。1人を記録係にして、動かす人が声をかける形にすると、まとまって残ります。
移動前に写真を撮っておく
棚の全景を数枚撮っておくと、記録が抜けたときの手がかりになります。1分の作業で、あとの数時間が助かることがあります。
その日のうちに台帳を直す
模様替えの記録を翌週に回すと、たいてい忘れます。作業の当日に台帳まで直すところを1組にしておきます。翌日に何品目か抜き取って、台帳と現物が合うか確かめると確実です。
仮置きと本置きを分ける
棚移動の記録で扱いに困るのが、一時的に置いた場所です。すべてを記録すると手間が増えます。
すべての移動を記録する
台帳は常に正確。仮置きのたびに書くことになる。
手間が増えてそのうち書かれなくなる。
本置きの変更だけ記録する
仮置き場に置くのは自由。その日のうちに本置きへ戻す。
記録の量が現実的になる。
仮置き場にも棚番を振る
仮置き場を「無い場所」にすると、そこにある物が行方不明になります。仮置き場にも棚番を振っておくと、記録するかどうかにかかわらず探せます。
仮置きは当日中に解消する
仮置き場を週に一度は空にする、と決めておくと、そこが常設の置き場所になりません。空にする日を決めておくのが要点です。
数日以上動かないなら本置きにする
仮置き場に1週間置かれているものは、実質そこが置き場所です。棚番を振り直して、台帳を直します。実態に合わせるほうが、探す時間が減ります。
棚移動と棚卸のつながり
棚移動の記録が効いているかどうかは、棚卸で分かります。
棚番順に並べた棚卸表が使えるかどうか
台帳の棚番が正しければ、棚卸表を棚番順に並べて印刷できます。そのまま順路になるので、倉庫を往復せずに数えられます。台帳が古いと、この並べ替えが役に立ちません。
「帳簿にあるが現物が無い」の多くは移動
棚卸で見つからなかった品目を探してみると、別の棚に移っていただけ、ということがあります。移動の記録があれば、そこを見に行くだけで済みます。無ければ倉庫を探し回ることになります。
差異の出た棚番を並べてみる
棚卸で差が出た品目の棚番を並べると、同じ一角が繰り返し出てくることがあります。そこは移動が多い場所か、台帳が古い場所です。棚番を振り直す候補になります。差異の見方は棚卸差異の原因で扱っています。
棚番の一覧と一緒に運用する
棚移動の記録は、棚番の一覧があって初めて意味を持ちます。2つで1組です。
| 持つもの | 更新の頻度 | 役割 |
|---|---|---|
| 棚番と品目の対応表 | 移動のたびに更新 | 探すときに引く |
| 棚移動の記録 | 移動のたびに1行足す | いつ何を動かしたかの履歴 |
対応表は現在の状態、記録は履歴
対応表は上書きしていく現在の姿、移動の記録は足していく履歴です。対応表だけだと、いつ動かしたかが分かりません。差異を追うときに履歴が要ります。
倉庫に地図を1枚貼る
棚番の一覧に加えて、倉庫の見取り図に棚番を書いた紙を貼っておくと、新しく入った人でも探せます。一度作れば、毎日使えます。作り方は在庫が合わない原因で扱っています。
年に1回は現物と突き合わせる
移動の記録を残していても、書き漏れは出ます。棚卸のときに、棚番と現物が合っているかも一緒に見ると、年に1回はリセットできます。
現場や別倉庫への移動
棚移動の記録は、社内の別の場所へ移すときにも使えます。倉庫の中だけの話ではありません。
| 移動の種類 | 記録のしかた |
|---|---|
| 同じ倉庫の棚から棚へ | 棚移動として記録。数は変わらない |
| 倉庫から現場へ | 持出として記録。戻りまで追う |
| 倉庫から別倉庫へ | 棚移動として記録。移動先の倉庫名まで書く |
| 現場から現場へ | 移動として記録。持出の行を書き換える |
拠点をまたぐ移動は、双方で書く
別の倉庫へ送った資材は、送った側と受けた側の両方で記録しないと、どちらの在庫か分からない期間ができます。送った日と受けた日を両方書くと、輸送中の分も追えます。
現場から現場への横持ちも記録する
A現場で余った資材をB現場へ回すのは合理的ですが、記録が無いと行方が分かりません。持出の記録の現場名を書き換えて、移動した日を書くだけで追えます。
棚移動が多い倉庫は、配置そのものを見直す
棚移動の記録が毎月何十行も出るなら、記録の問題ではなく配置の問題です。
| 移動が多くなる原因 | 配置での手当て |
|---|---|
| よく使う物が奥にある | 出庫の頻度順に手前から並べ直す |
| 1つの棚番に物が入りきらない | 数量の多い品目に広い場所を割り当てる |
| 季節で使う物が入れ替わる | 季節物の区画を決めて、そこだけ入れ替える |
| 新しい品目の置き場所がない | 空きの棚番を常に数か所あけておく |
出庫の頻度で並べ直す
年に1回しか出ない品目が入口の近くにあり、毎日出る品目が奥にある。この配置だと、移動も歩行距離も増えます。年に1回、出庫の回数で並べ直すと、その後の移動が減ります。
空きの棚番を用意しておく
倉庫が満杯だと、新しい品目が来るたびに既存の在庫を動かすことになります。常に数か所を空けておくと、この連鎖が止まります。
季節物は入れ替える場所を固定する
季節で使う物は必ず動きます。入れ替える区画をあらかじめ決めておくと、移動先を毎回考えずに済み、記録も1回で書けます。
棚移動の記録でつまずきやすい3つ
その1:模様替えのときに書かない
1件ずつの移動は書けても、1日に何十品目も動く模様替えで一気に崩れます。記録係を1人決めて、作業と同時に書く形にしておきます。あとで思い出して書くことはできません。
その2:現場に台帳を直させる
現場にパソコンの台帳を直させると、そこで止まります。現場は紙に書くだけ、更新は事務所がまとめてという分担にすると、両方が回ります。
その3:仮置きまで全部記録しようとする
一時的に置いた場所まで記録すると、手間が増えて続きません。仮置き場に棚番を振っておいて、本置きの変更だけ記録する形が現実的です。仮置き場を週に一度空にすると決めておきます。
おまけ:移動の記録は棚卸の日程にも効く
移動が多い区画は、棚卸でも差異が出やすい区画です。移動の記録から、区画ごとの移動件数を数えてみると、循環棚卸で重点的に回すべき場所が見えてきます。移動の記録は、探すためだけのものではありません。棚番を振り直す判断にも、循環棚卸の周回の重みづけにも使えます。
棚移動の記録は、3項目を書くだけの作業です。それでも書かれないなら、書く場所か書くきっかけに原因があります。棚の横に用紙を置くところから始められます。まずは1週間、書けるかどうかを試してみてください。
棚移動の記録にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
棚移動の記録そのものを決めた法令はありません。ただ、倉庫の中で物を探して出すまでの時間は、2025年から始まった物流の決まりで「短くするよう努める時間」につながるようになりました。日付順に並べます。
| 時期 | 出来事 | 棚移動の記録とのかかわり |
|---|---|---|
| 2024年5月15日 | 流通業務総合効率化法と貨物自動車運送事業法の改正法(令和6年法律第23号)が公布された。法律の名前が「物資の流通の効率化に関する法律」(物流効率化法)に変わることになった | 倉庫を持つ会社も、荷主や倉庫業者として対象に入る |
| 2025年4月1日 | すべての荷主と物流事業者に、運転者の荷待ち時間と荷役等時間を短くする努力義務がかかった(第42条ほか)。倉庫業者の措置には、荷役の前に貨物の搬出を早く済ませることが挙げられている(第52条第1項第3号) | 積み込む物がどこにあるか分からないと、出庫が遅れて荷待ちが延びる。棚番が正しいことが前提になる |
| 2026年4月1日 | 一定量以上の貨物を扱う事業者が「特定事業者」に指定され、中長期計画の作成と定期報告が義務になった。特定荷主は物流統括管理者を選任する | 特定荷主の基準は、年間の取扱貨物の重量が9万トン以上とされている。対象でない会社にも努力義務は残る |
棚移動の記録で、ポイントは荷待ちを短くする話は、トラックの前ではなく棚の前から始まることです。出庫する物の棚番が正しければ、集めるのにかかる時間が読めて、受け渡しの時刻も決めやすくなります。
出典:物資の流通の効率化に関する法律(e-Gov法令検索)、改正物流効率化法について(農林水産省)、改正物流効率化法の施行について(国土交通省)
確認日は2026年10月3日です。特定事業者に当たるかどうかや届出の手続きは、事業を所管する省庁の窓口(地方運輸局・経済産業局・地方農政局など)にご確認ください。
棚移動の記録に出てくる用語
棚移動の記録の話では、同じものを人によって違う言葉で呼びます。入力候補にも「棚移動とは」が出てきますが、家具や棚そのものを動かす話と混ざりやすい言葉です。この記事で使っている意味で並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 棚移動 | 在庫の数を変えずに、置き場所(棚番)だけを変えること。棚そのものを動かす意味でも使われる | 法令上の定義はない |
| 棚番(ロケーション) | 倉庫の中の置き場所を表す番号。列・段・位置を組み合わせて振ることが多い | 法令上の定義はない |
| 固定ロケーション | 品目ごとに置き場所を決めておく方式 | 法令上の定義はない |
| フリーロケーション | 空いている場所に置き、どこに置いたかを記録で追う方式。棚移動の記録が欠かせない | 法令上の定義はない |
| 仮置き | 本来の置き場所に入れる前に、一時的に置くこと | 法令上の定義はない |
| 横持ち | 拠点や現場のあいだで在庫を移すこと | 法令上の定義はない |
| 棚卸資産 | 商品、製品、半製品、仕掛品、原材料など、棚卸しをすべき資産 | 法人税法第2条第20号 |
| たな卸表 | 事業年度の終わりに作る、棚卸資産の種類・品質・型ごとの数量・単価・金額の表 | 法人税法施行規則第56条第2項(青色申告法人) |
棚移動の記録で混ざりやすいのは、棚移動と出庫です。棚移動は数が変わらず、出庫は数が減ります。用紙を分けておくと、台帳のどこを直すかを取り違えません。
棚移動の記録と一緒に押さえておきたいこと
棚移動の記録の解説は、在庫管理システムの機能の紹介で終わることが多くあります。紙やExcelで回している現場で抜けやすいことを3つ挙げます。
棚移動の記録と在庫移動表は、直す台帳が違う
入力候補には「在庫 移動 表」も出てきます。在庫移動表は決まった様式のある言葉ではなく、会社によって中身が違いますが、拠点のあいだで在庫が動いたことを書く表として使われる場面がよくあります。拠点をまたぐ移動は、送った側の在庫が減り、受けた側の在庫が増えます。同じ倉庫の中の棚移動は、数が変わらず棚番だけが変わります。倉庫の中の移動は棚番の台帳、拠点をまたぐ移動は拠点ごとの在庫と分けておくと、棚卸のときに二重に数えたり、数え漏らしたりしません。
たな卸表には保存期間があり、棚移動の記録には決まりがない
青色申告の法人は、事業年度の終わりに棚卸をして、棚卸資産の種類・品質・型ごとに数量・単価・金額を書いたたな卸表を作ると定められています(法人税法施行規則第56条)。たな卸表は決算に関して作られた書類として、7年間保存することとされています(同第59条)。棚移動の記録は、法令で作成や保存が決められた書類ではありません。ただ、棚卸で差が出た理由を説明するときの材料になるので、少なくとも次の棚卸が終わるまでは残しておくと安心です。保存の扱いは、顧問の税理士か所轄の税務署にご確認ください。
配置の見直しは、荷待ちの時間を短くする手当てにもなる
物流効率化法では、荷主と倉庫業者に、運転者の荷待ち時間と荷役等時間を短くする努力義務がかかっています(第42条・第52条)。出庫の多い品目を手前に寄せる配置の見直しは、出庫の準備を早く終わらせることにつながります。並べ直したあとの棚移動は、理由の欄に「出庫頻度で配置替え」と書いておくと、あとで何のための移動だったかが分かります。
出典:法人税法(e-Gov法令検索)、法人税法施行規則(e-Gov法令検索)、物資の流通の効率化に関する法律(e-Gov法令検索)
よくある質問
- Q. 棚移動の記録には、何を書けばいいですか?
- 移動元の棚番、移動先の棚番、理由の3つで足ります。日付と担当者を足しても5項目です。数量は原則書きません。棚移動は場所を変えるだけで数は変わらないので、数量を書かせると入出庫と混同されます。
- Q. 仮置きした場所も記録すべきですか?
- 記録しなくて構いませんが、仮置き場にも棚番を振っておいてください。仮置き場を「無い場所」にすると、そこにある物が行方不明になります。あわせて、週に一度は仮置き場を空にすると決めておくと、そこが常設の置き場所になりません。
- Q. 模様替えのときに記録が追いつきません。
- 記録係を1人決めて、動かす人が声をかける形にしてください。全員が動かして全員が書く形は必ず抜けます。作業前に棚の写真を数枚撮っておくと、記録が抜けたときの手がかりになります。
- Q. 棚移動の記録は、棚番の一覧とは別に必要ですか?
- 役割が違うので両方持ちます。棚番の一覧は上書きしていく現在の姿、移動の記録は足していく履歴です。棚卸で差が出たときに、いつ動かしたかを追えるのは履歴のほうです。
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