預り品の管理方法 - 預かってから返すまでを1行で追う
修理のために預かった機械、検査のために持ち帰った部品、次の納品まで置いておくことになった品物。預り品は自社の在庫ではないのに、倉庫の場所を使い、返す義務だけが残ります。ここが管理されていないと、忘れたころに問い合わせが来て、探すところから始まります。
一般には、お客様から預かった品物は自社の資産と区別して保管し、受領と返却の記録を残すのが基本とされています。この記事では、預り品の管理方法を受領・保管・返却の3段階に分けて、何を記録し、どこで詰まりやすいかを整理します。支給された材料の扱いは支給品と預り在庫の棚卸にまとめました。
この記事の内容(9項目)
- 預り品の管理方法は「1件1行」で足りる
- 返却予定日を必ず入れる
- 受領時の状態を書いておく
- 受領のときにやること
- 付属品を一緒に確認する
- 預り証は控えを残す
- 受け取る人を限定しない代わりに、書く場所を決める
- 保管中に気をつけること
- 「誰の物か分からない品物」を作らない
- 月に1回、返却前の一覧を見る
- 破損や紛失が起きたら、すぐ記録する
- 長期保管になったときの扱い
- 受領のときに保管期間を伝える
- 期限を過ぎたら連絡し、記録に残す
- 処分の判断は自社だけでしない
- 返却のときにやること
- 受領時の記録と並べて確認する
- 返却日を入れて一覧から落とす
- 郵送で返す場合は、送った記録を残す
- 預り品と、貸出品・支給品の違い
- 減るものと減らないもので、様式を分ける
- 自社の物を貸すときも、同じ形が使える
- 問い合わせに数分で答えられる形にする
- お客様名で引けるようにする
- 返却済みの行も消さない
- 電話を受ける人が見られる場所に置く
- 預り品の管理でつまずきやすい3つ
- その1:返却予定日を空欄にする
- その2:受領時の状態を書いていない
- その3:自社の在庫と同じ棚に置く
- よくある質問
預り品の管理方法は「1件1行」で足りる
預り品は在庫と違って数が減りません。数量を追うのではなく、案件を1件ずつ追う形にすると管理が軽くなります。
| 持たせる項目 | 書き方 | 無いと困る場面 |
|---|---|---|
| 受領日 | 日付。急ぎのものは時刻まで | 預かってからの日数が分からない |
| お客様名・担当者 | 連絡先も一緒に | 返すときに連絡できない |
| 預り品の内容 | 品名・型番・数量・付属品の有無 | 返却時に「これで全部か」が言えない |
| 受領時の状態 | 傷や汚れがあれば書く。写真があれば添える | あとから傷の責任が問われる |
| 預かる理由 | 修理・検査・保管・貸出前の準備 など | いつ返すべきかが判断できない |
| 返却予定日 | 目安でよいので必ず入れる | 期限が無いと放置される |
| 保管場所 | 棚番。倉庫以外なら場所の名前 | 探すところから始まる |
| 返却日・受取人 | 返した日と受け取った人 | 返したことを証明できない |
返却予定日を必ず入れる
預り品の管理方法でいちばん効くのが、これです。予定日が空欄の行は、必ず放置されます。正確でなくてよいので、受領のときに仮の日付を入れます。過ぎたら一覧に出る形にしておきます。
受領時の状態を書いておく
返すときに「預ける前は傷が無かった」と言われる場面があります。受け取った時点の状態を1行書いておくだけで、この話が事実の確認になります。写真を1枚撮れば十分です。
受領のときにやること
預り品の管理方法は、受け取るときの30秒で8割が決まります。あとから遡って記録することはできません。
付属品を一緒に確認する
本体だけ見て受け取ると、返却時に「ケーブルも預けた」という話になります。付属品の有無をその場で一緒に確認して書くのが確実です。無い場合も「無し」と書きます。
預り証は控えを残す
お客様に渡す預り証と同じ内容を、自社にも残します。渡した紙と手元の記録が同じ内容になっていることが大事で、様式は簡単なもので構いません。
受け取る人を限定しない代わりに、書く場所を決める
誰が受け取っても記録できるよう、記入用紙を受付や倉庫の入口に置いておきます。受け取れる人を限定すると、その人がいない日に記録が残りません。
保管中に気をつけること
預り品は自社の物ではないので、保管中の扱いも自社の在庫とは変えます。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 自社の在庫と別の場所に置く | 誤って使う、出荷することを防ぐ |
| 棚番を記録に書く | 問い合わせがあったときに数分で出せる |
| お客様名を現物に表示する | 誰の物か分からない品物を作らない |
| 棚卸で自社在庫に含めない | 数えて記録は残すが、区分を分ける |
| 月に1回、返却前の一覧と現物を照合する | 長期化している案件が見える |
「誰の物か分からない品物」を作らない
倉庫の隅に、いつからあるか分からない品物が置いてある。預り品の管理方法が無い現場では、これがよく起きます。現物に名前を貼るだけで防げます。
月に1回、返却前の一覧を見る
返却前の行だけを一覧にして、現物と照合します。件数が多くなければ10分で終わります。目的は数を合わせることではなく、長く預かったままの案件に気づくことです。
破損や紛失が起きたら、すぐ記録する
預かっている間に壊してしまった、濡らしてしまった、という場合、黙って処理することはできません。状態と経緯を記録して、お客様へ連絡します。記録の残し方は数以外の在庫異常の報告にまとめています。
長期保管になったときの扱い
預り品の管理方法でいちばん厄介なのが、返す機会を逃したまま年単位で残る案件です。
期限を決めていない
連絡しにくくなる。場所を占め続ける。
数年後に捨ててよいか誰も決められない。
受領時に期限を決めておく
受領時に一言添えるだけ。期限が来たら連絡する理由になる。
返却か延長かをその都度決められる。
受領のときに保管期間を伝える
「修理完了後○か月を過ぎた場合はご連絡します」と受領時に伝えておくと、あとの連絡がしやすくなります。後から言い出すより、最初に決めておくほうが角が立ちません。条件は自社の規程や契約に合わせてください。
期限を過ぎたら連絡し、記録に残す
連絡した日と内容を記録に書いておきます。連絡したのに引き取られていない、という状態を記録で残すことが、あとの判断の材料になります。
処分の判断は自社だけでしない
長期に残った預り品を自社の判断で処分するのは、トラブルのもとになります。連絡の履歴を残したうえで、処分してよいかを社内の責任者と確認する手順にしておきます。契約や規程に定めがある場合はそれに従います。
返却のときにやること
預り品の管理方法は、返して初めて1件が閉じます。ここを流すと、返したかどうかで揉めます。
| やること | 目的 |
|---|---|
| 内容と付属品を一緒に確認する | 受領時の記録と突き合わせる |
| 状態を確認してもらう | あとから傷の話にならないようにする |
| 受取人の名前を書いてもらう | 返却の証拠になる |
| 返却日を記録に入れる | 一覧から落ちて、残りが見やすくなる |
| 預り証の控えを閉じる | 案件として完了する |
受領時の記録と並べて確認する
返すときに、受け取ったときの記録を一緒に見ます。付属品の有無と状態を、その紙を見ながら確認するだけで、返却後の問い合わせがほぼ無くなります。
返却日を入れて一覧から落とす
返却日が入っていない行が残っていると、まだ預かっているように見えます。返した日にその場で入れるのが原則です。あとでまとめて入れると、抜けます。
郵送で返す場合は、送った記録を残す
手渡しでない場合は、発送日と伝票番号を記録に書きます。届いたかどうかまで確認して、初めて閉じます。
預り品と、貸出品・支給品の違い
似た言葉が並ぶので、社内で呼び方と扱いを揃えておくと混乱が減ります。
| 種類 | 誰の物か | 減るか | 追い方 |
|---|---|---|---|
| 預り品 | お客様 | 減らない | 受領から返却まで1件1行 |
| 支給品 | 客先・元請 | 使えば減る | 受入・使用・返却を数量で追う |
| 貸出品 | 自社 | 減らない | 持ち出しから返却まで1件1行 |
| 自社在庫 | 自社 | 減る | 入出庫と残高で追う |
減るものと減らないもので、様式を分ける
使えば減る支給品と、そのまま返す預り品では、必要な項目が違います。同じ表で管理しようとすると、どちらかに空欄が増えます。受払で追うものと1件1行で追うものは、分けたほうが軽くなります。
自社の物を貸すときも、同じ形が使える
工具やサンプルを貸し出す場合も、預り品と同じく1件1行で追えます。違うのは所有者だけです。貸出の管理は工具の貸出管理で扱っています。
問い合わせに数分で答えられる形にする
預り品の管理方法が役に立つ場面は、たいてい突然やってきます。お客様から「先月預けたあれはどうなっていますか」と電話が入るときです。
| 聞かれること | 答えるのに要る情報 | どこに書いてあるか |
|---|---|---|
| 預かっているか | 受領日と内容 | 受領時の記録 |
| いまどこにあるか | 保管場所・棚番 | 受領時に書いた棚番 |
| いつ返ってくるか | 返却予定日と進捗 | 返却予定日の欄 |
| 状態はどうか | 受領時の状態と、その後の変化 | 状態の欄 |
| もう返したはず | 返却日と受取人 | 返却時の記録 |
お客様名で引けるようにする
預り品の管理表は、受領日順に並びます。ただ、問い合わせはお客様名で来ます。お客様名で絞り込める形にしておくだけで、探す時間が数分から数十秒になります。Excelなら並べ替えと絞り込みで足ります。
返却済みの行も消さない
返したあとに問い合わせが来ることがあります。返却日を入れた行をその場で削除してしまうと、返したことを示せません。返却済みは別のシートへ移すか、非表示にするのがよい形です。
電話を受ける人が見られる場所に置く
倉庫の担当だけが記録を持っていると、受付や営業が答えられません。共有フォルダに1つ置いて、誰でも見られる状態にしておくと、折り返しの電話が減ります。
預り品の管理でつまずきやすい3つ
その1:返却予定日を空欄にする
いつ返すか決まっていない品物は、必ず放置されます。仮の日付でよいので受領時に入れると、期限が来たときに一覧に出ます。予定が変わったら書き換えれば済みます。
その2:受領時の状態を書いていない
返却時に傷の話になったとき、記録が無ければ水掛け論になります。写真を1枚撮って、傷があれば1行書くだけで、この場面が事実の確認に変わります。
その3:自社の在庫と同じ棚に置く
預り品を通常の棚に置くと、誤って使われるか、棚卸で自社在庫として数えられます。置き場所を分けて、現物にお客様名を貼る。この2つで防げます。
預り品の管理方法は、項目を増やすことではありません。受領時に8項目書いて、返却日を入れて閉じる。この往復が回っていれば、探す時間も問い合わせも減ります。
よくある質問
- Q. 預り品は自社の在庫に含めますか?
- お客様の所有物なので、自社の在庫には含めません。棚卸のときは数えて記録を残しつつ、自社在庫の集計とは区分を分けます。置き場所も自社の在庫と分けておくと、誤って使ったり出荷したりする事故を防げます。
- Q. 預り証は必ず出すべきですか?
- 出しておくほうが安全です。お客様側にも記録が残り、預かった内容と状態について後から認識のずれが起きにくくなります。様式は簡単なもので構いませんが、自社に控えを残すことが大事です。
- Q. 長期間引き取られない預り品は、処分してよいですか?
- 自社の判断だけで処分するのはトラブルのもとになります。まず連絡した日と内容を記録に残し、そのうえで社内の責任者と確認してください。契約や自社の規程に定めがある場合はそれに従います。受領時に保管期間を伝えておくと、この場面が扱いやすくなります。
- Q. 預かっている間に品物を破損してしまいました。どうすればいいですか?
- 状態と経緯を記録して、お客様へ連絡してください。黙って修理したり交換したりすると、後から発覚したときに問題が大きくなります。記録は事実だけを書き、写真があれば添えてください。
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