支給金型と治具の管理 - 使用回数と返却まで追う
客先から預かった金型が、倉庫の奥に何年も眠っている。どの案件のものか、まだ生産があるのか、誰も分からない。支給金型の管理が無いと、返すことも捨てることもできない資産が積み上がります。
支給された金型や治具は、自社の物ではありません。保管する責任があり、返却を求められたらすぐ出せる状態にしておく必要があります。この記事では、支給金型の管理を受け入れから返却まで整理します。材料の支給を受けたときの扱いは支給品と預り在庫の棚卸にまとめました。
この記事の内容(10項目)
- 支給金型の管理は台帳から始まる
- 管理番号は自社で振る
- 所有者を現物に表示する
- 対象の製品を書いておく
- 受け入れるときに確認すること
- 受入時の状態を写真で残す
- メンテナンスの分担を先に決める
- 使用回数の報告が要るかを聞く
- 保管のしかた
- 自社の型と分けて置く
- 錆と劣化を防ぐ
- 重いものは出しやすい場所に置かない
- 使用回数を記録する
- 現場が書くのは日付と数だけにする
- 寿命の目安を台帳に入れておく
- 不具合はその場で1行書く
- 眠っている金型を見つける
- 最終使用日から抽出する
- 支給元に一覧を送る
- 保管を続けるなら、その旨を記録する
- 返却するときの手順
- 付属品を忘れない
- 輸送は早めに手配する
- 受領の確認まで取って閉じる
- 自社の治具と分けて管理する
- 台帳を分けるか、区分の列を持つ
- 自社の治具も貸出として追える
- 金型の寿命が近づいたときの動き
- 兆候の段階で伝える
- 作り替えの判断は支給元が行う
- 生産終了が近いなら、作り替えない選択もある
- 支給金型の管理でつまずきやすい3つ
- その1:所有者が現物から分からない
- その2:最終使用日を記録していない
- その3:受け入れの条件を確認していない
- よくある質問
支給金型の管理は台帳から始まる
支給金型の管理は、1型1行の台帳を作るところから始めます。数量ではなく、1つずつ追います。
| 項目 | 書き方 | 無いと |
|---|---|---|
| 管理番号 | 自社で振る。現物にも表示する | 同じ形の型を区別できない |
| 所有者 | 支給元の会社名 | 誰の資産か分からなくなる |
| 先方の型番 | 支給元が使っている番号 | 問い合わせのときに通じない |
| 受入日 | 預かった日 | いつから保管しているか分からない |
| 対象の製品・案件 | 何を作る型か | まだ使うのかが判断できない |
| 保管場所 | 棚番か区画 | 探すところから始まる |
| 使用回数(累計) | ショット数など | 寿命の管理ができない |
| 最終使用日 | 直近で使った日 | 眠っている型が見えない |
| 状態 | 使用可・要整備・返却済 | すぐ使えるか分からない |
管理番号は自社で振る
支給元の型番だけで管理すると、同じ番号が別の会社から来たときに混乱します。自社の管理番号を振って、現物にも表示するのが確実です。先方の型番は別の欄に持ちます。
所有者を現物に表示する
倉庫の奥にある金型は、時間が経つと誰の物か分からなくなります。所有者名を書いた札を現物に付けるだけで、この事故が防げます。
対象の製品を書いておく
何を作る型かが分かると、その製品の生産が終わったときに返却の判断ができます。ここが空欄だと、返せるかどうかを毎回調べることになります。
受け入れるときに確認すること
支給金型の管理は、受け入れの時点で条件を確認しておくと、あとが楽になります。
| 確認すること | 決めていないと |
|---|---|
| 保管の責任範囲 | 破損や劣化の負担でもめる |
| メンテナンスの分担 | 誰が整備するか決まらず放置される |
| 使用回数の報告の要否 | 求められてから数え始めることになる |
| 寿命が来たときの扱い | 作り替えの判断が遅れる |
| 返却の条件と期限 | 生産が終わっても残り続ける |
| 受入時の状態 | 元から傷があったかどうかが分からない |
受入時の状態を写真で残す
返却のときに傷の話になることがあります。受け入れた時点の状態を写真で残すと、事実の確認になります。数枚で十分です。
メンテナンスの分担を先に決める
金型は使えば摩耗します。整備の費用を誰が持つかが決まっていないと、必要な整備が先送りされます。受け入れの時点で確認しておくと、あとで揉めません。
使用回数の報告が要るかを聞く
ショット数の報告を求められる場合、あとから数え始めることはできません。受け入れの時点で聞いて、必要なら初日から記録します。
保管のしかた
支給金型の管理では、保管そのものが責任の一部です。自社の型と同じ扱いにはできません。
自社の型と分けて置く
混ざっていると、返却のときに探すことになります。支給された型は別の棚か別の区画に置くのが基本です。所有者ごとに分けられればさらに確実です。
錆と劣化を防ぐ
長く使わない金型は錆びます。防錆処理と、年に1回の状態確認を決めておくと、いざ使うときに整備が必要になる事態を減らせます。
重いものは出しやすい場所に置かない
金型は重く、動かすのに手間がかかります。よく使う型は取り出しやすい場所、眠っている型は奥へという配置にすると、日々の作業が楽になります。移動したら記録します。
使用回数を記録する
支給金型の管理で報告を求められることが多いのが、使用回数です。使ったときに記録する形にします。
| 記録すること | 書くタイミング |
|---|---|
| 使用日 | 段取り替えのとき |
| 生産数(ショット数) | 生産終了時 |
| 累計 | 台帳側で計算する |
| 不具合の有無 | 気づいたその場で |
| 整備の実施 | 整備したとき |
現場が書くのは日付と数だけにする
累計の計算を現場にさせると、書く時間が増えます。使った日と生産数だけ書いてもらい、累計は台帳側で足す形にします。
寿命の目安を台帳に入れておく
この型は何万ショットまで、という目安が分かっていれば、累計と並べて見ることができます。近づいたら支給元に相談するという動きができます。
不具合はその場で1行書く
バリが出始めた、傷が入った、といった変化は、次に使う人に伝わらないと同じ不良が出ます。台帳の備考でよいので、気づいたときに書く形にしておきます。
眠っている金型を見つける
支給金型の管理でいちばん場所を取るのが、何年も使っていない型です。定期的に洗い出します。
使うかもしれないので置いておく
判断が要らない。場所を占め続ける。
数年後に誰も経緯を知らない型が残る。
年に1回、一覧を出して確認する
確認の手間が年1回ある。返却か保管継続かが決まる。
棚が実際に空く。
最終使用日から抽出する
台帳に最終使用日が入っていれば、1年以上使っていない型を機械的に抽出できます。抽出は自動、判断は人という形にすると、毎年続けられます。
支給元に一覧を送る
「1年以上使用していない型の一覧です。今後の予定をご確認ください」と送ると、返却か保管継続かの判断がもらえます。こちらから聞かない限り、先方も把握していないことがあります。
保管を続けるなら、その旨を記録する
まだ使う予定があると回答があった場合、その回答をいつ誰から得たかを台帳に書きます。翌年の確認のときに、経緯が分かります。
返却するときの手順
支給金型の管理は、返却して初めて閉じます。返すときにも記録が要ります。
| やること | 目的 |
|---|---|
| 状態を確認して写真を撮る | 返却時の状態を残す |
| 累計の使用回数をまとめる | 報告として渡す |
| 付属品を確認する | 治具や部品の同梱漏れを防ぐ |
| 輸送の手配をする | 重量物なので手配に時間がかかる |
| 受領の確認を取る | 届いたことを記録に残す |
| 台帳を返却済にする | 一覧から落として、残りを見やすくする |
付属品を忘れない
金型本体だけを返して、治具や部品が残ることがあります。受入時の記録と突き合わせて、一緒に返すと、あとの問い合わせが減ります。
輸送は早めに手配する
金型は重量物なので、車両や吊り具の手配に時間がかかります。返却が決まったら、輸送の手配から始めると間に合います。
受領の確認まで取って閉じる
送っただけで台帳を閉じると、届いていなかったときに気づけません。先方の受領を確認してから返却済にする形にします。
自社の治具と分けて管理する
支給金型の管理と、自社の治具の管理は分けます。責任の重さが違います。
| 支給された金型・治具 | 自社の治具 | |
|---|---|---|
| 所有者 | 客先 | 自社 |
| 保管の責任 | 返せる状態を保つ | 使える状態を保つ |
| 処分の判断 | 自社ではできない | 自社で決められる |
| 報告 | 使用回数や状態を求められることがある | 社内のみ |
台帳を分けるか、区分の列を持つ
同じ表で扱う場合は、所有者の列を必ず持ちます。この列が空欄の行があると、そこが後で問題になります。
自社の治具も貸出として追える
自社の治具を協力会社へ貸し出す場合は、工具の貸出と同じ形で追えます。1件1行で、返却まで見る形です。管理は工具の貸出管理で扱っています。
金型の寿命が近づいたときの動き
支給金型の管理では、寿命への対応が最も先読みの要る場面です。作り替えには時間もお金もかかります。
| やること | いつ | 誰と |
|---|---|---|
| 累計の使用回数を報告する | 寿命の目安に近づいたとき | 支給元 |
| 不具合の兆候を伝える | 気づいた時点で | 支給元と製造 |
| 整備で延ばせるかを確認する | 報告と同時に | 金型メーカー |
| 作り替えの判断を仰ぐ | 生産の予定と合わせて | 支給元 |
兆候の段階で伝える
完全に使えなくなってから報告すると、生産が止まります。バリが出始めた、寸法が振れ始めた、という段階で伝えると、対応の時間が取れます。
作り替えの判断は支給元が行う
金型は客先の資産なので、作り替えるかどうかを決めるのは支給元です。こちらは事実と見通しを伝える役割と割り切ると、話が進みます。
生産終了が近いなら、作り替えない選択もある
残りの生産数が少なければ、整備で持たせるほうが合理的なこともあります。累計の使用回数と残りの生産予定を並べて示すと、支給元が判断できます。
支給金型の管理でつまずきやすい3つ
その1:所有者が現物から分からない
時間が経つと、誰の型か分からなくなります。所有者名と管理番号を書いた札を現物に付けるだけで防げます。台帳だけに書いても、現物を見た人には伝わりません。
その2:最終使用日を記録していない
眠っている型を抽出できないので、返却の判断が進みません。使った日を書くだけで、1年以上動いていない型が機械的に出せます。
その3:受け入れの条件を確認していない
保管の責任範囲、メンテナンスの分担、返却の条件。受け入れの時点で確認しておかないと、あとから決めることになります。決めた内容は台帳と一緒に保管しておきます。
支給金型の管理は、1型1行の台帳と現物の表示で始められます。年に1回、眠っている型の一覧を支給元に送る。この習慣があるだけで、倉庫の奥の状況が変わります。
よくある質問
- Q. 支給された金型は、自社の資産として計上しますか?
- 客先の所有物なので、自社の資産にはなりません。保管する責任があり、返却を求められたら出せる状態にしておく必要があります。会計上の扱いは契約条件によって変わるため、経理と顧問税理士にご確認ください。
- Q. 支給金型の管理番号は、先方の型番をそのまま使ってよいですか?
- 自社の管理番号を別に振るほうが安全です。複数の支給元から似た型番のものが来ると混乱します。自社の番号を現物に表示し、先方の型番は台帳の別の欄に持ってください。
- Q. 何年も使っていない支給金型は、どうすればいいですか?
- 最終使用日から1年以上使っていない型を抽出して、一覧にして支給元へ送ってください。「今後の予定をご確認ください」と伝えると、返却か保管継続かの判断がもらえます。こちらから聞かない限り、先方も把握していないことがあります。
- Q. 金型のメンテナンス費用は、どちらが負担しますか?
- 契約や取り決めによります。決めていないと必要な整備が先送りされ、いざ使うときに使えないという事態になります。受け入れの時点で分担を確認し、決めた内容を台帳と一緒に保管しておいてください。
この記事で使う無料テンプレート
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な業務の進め方を整理したものです。社内規程、契約条件、法令上の要件がある場合は、それらを優先してご確認ください。記事の内容は2026-08-30時点のものです。